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Google Gemini vs. ChatGPTガチンコ対決

GoogleのAIであるBardがGeminiに衣替えしましたね。なんだか格段の進歩を遂げている模様。ChatGPTと対決させてみましょう。


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

ChatGPTが一般にも使えるようになり、世界を驚かせたのは2022年11月。
今ではすっかり普及し、使っておられる方も多いのではないでしょうか。

ChatGPTの用途として、「壁打ち」というのがあります。
思いついたアイデアを深めるために話し相手がほしいときにChatGPTにぶつければ、質問したり、批判したり、新しい提案をしてくれたりします。

その応用編として、てりたまnoteでは監査法人がクライアントと対峙する場面をシミュレーションしたことがあります。
クライアント役、監査法人役の両方でやっています。

その後ChatGPTは進化を続け、プログラムを書いて実行し、絵も描けるようになりました。これから動画も作れるようになるとのこと。
MicrosoftのBing改めCopilotも、ChatGPTをベースに提供されています。

そんな中で、GoogleのAIもGeminiとして再登場しました。
前身のBardはダメダメでしたが、Geminiはかなり進化しているようです。

そこで、ChatGPTとGeminiを直接戦わせるとどうなるか。やってみましょう。
ChatGPTはGPT-4、Geminiは通常版(Advancedではない方)を使いました。前者は有料、後者は無料なのでフェアでないかもしれませんが、結構いい勝負になりました。

<ご注意>
今回の記事は、AIの回答を掲載していることから、いつもの倍以上の長文になっています。
AIの回答部分は、太字を中心にななめ読みしていただくようお願いいたします。それでも楽しんでいただけると思います。


最初のプロンプト

Geminiにクライアント役、ChatGPTに監査法人役をやってもらいましょう。

【Gemini(クライアント側)への最初のプロンプト】
これは、私が演じる監査パートナーが、あなたが演じるクライアントの経理部長に監査での発見事項を報告するロールプレイです。

あなたはクライアントの山本経理部長です。監査法人は、会社の役に立たない発見事項を報告してきて、手間をかけさせる存在だと忌み嫌っています。 今回も報告があるというので時間をとりましたが、監査法人の言うことを聞くのは、会社にとって害でしかないと確信しています。監査法人にはどれだけ失礼な態度を取っても構いませんし、今日の打ち合わせが決裂し、関係が悪化しても当社に何の支障もありません。それでも指摘を受け入れることだけは絶対にできません。

私は、監査法人のパートナーの田中です。

会話はすべて日本語で行われます。
最高の山本経理部長役をお願いします。

まず山本経理部長であるあなたから、「では田中先生、始めましょうか。手短にお願いしますよ。」と話してください。

太字部分はちょっと極端ですが、クライアントが監査法人の指摘を簡単に受け入れてしまうと文字どおり秒で終わってしまいますので、心を痛めながら追記しました。

次に監査法人側。

【ChatGPT(監査法人側)への最初のプロンプト】
これは、あなたが演じる監査パートナーが、私が演じるクライアントの経理部長に監査での発見事項を報告するロールプレイです。

私はクライアントの山本経理部長です。

あなたは、監査法人の田中パートナーです。
このクライアントは内部統制がとても弱く、さらに山本経理部長は事業部にばかり気を遣って内部統制の重要性への理解が非常に乏しいと考えています。そこで、この機会を使って、山本経理部長によく言って聞かせないといけないと意気込んでいます。

会話はすべて日本語で行われます。
最高の田中パートナー役をお願いします。

まず田中パートナーであるあなたから、以下のように話し始めてください。
「山本部長、本日はお忙しい中お時間をいただき、どうもありがとうございます。それでは監査の過程で発見しました事項について報告いたします。

御社のA事業部において、売掛金の補助元帳である売掛金管理表と総勘定元帳とを月次で照合する内部統制となっていますが、年間12回のうち4月、6月、9月、12月については実施されていないことが分かりました。また、ほかの月には実施されてはいますが、決算が締まってから実施されており、タイムリーに行われていません。

さらに、照合はされている月も、差異があり、原因の究明や是正が行われていません。3月末現在、2千万円の不明差異があります。

毎月の照合をタイムリーに行い、差異は迅速に原因究明し、必要な処理を行うようお願いいたします。」

要は、売掛金の内部統制が適切に運用されていないので、ちゃんとやってください、ということ。しかも、全般的に内部統制が弱いので強めに指摘しようとしています。

第1ラウンド~ジャブの応酬

プロンプトを受けて、論戦スタートです。

【Gemini(クライアント側)】
では田中先生、始めましょうか。手短にお願いしますよ。

山本です。今日はお忙しい中、ありがとうございます。早速ですが、監査結果について伺いたいと思います。

ところで、田中先生はうちの会社をどのように見ていらっしゃいますか?

我々は、常に健全な経営を心掛けており、法令遵守にも全力で取り組んでいます。

監査は必要だと思っていますが、正直、貴社からの指摘はあまり役に立っていないと感じています。

過去にも、指摘された事項について、詳細な説明を求めたところ、明確な回答が得られなかったことがありました。

そのため、貴社の指摘は、我々の業務の負担を増やすだけの存在だと考えています。

今回の監査でも、同様な指摘がないか不安です。

もし、我々の役に立たないような指摘があれば、遠慮なくおっしゃってください。

我々は、そのような指摘には従いません。

時間は限られていますので、手短に、かつ具体的な指摘をお願いします。

初回プロンプトでは、「では田中先生、始めましょうか。手短にお願いしますよ。」とだけ指示したのですが、Geminiは早速次々とジャブをかましています。

ただ、「手短に…」と言ったあとで「山本です」と名乗るのは明らかにおかしいですね。
それと「役に立たないような指摘があれば、遠慮なくおっしゃってください」「そのような指摘には従いません」もちょっと変です。

【ChatGPT(監査法人側)】
山本部長、本日はお忙しい中お時間をいただき、どうもありがとうございます。それでは監査の過程で発見しました事項について報告いたします。

御社のA事業部において、売掛金の補助元帳である売掛金管理表と総勘定元帳とを月次で照合する内部統制が設けられていますが、年間12回のうち4月、6月、9月、12月については実施されていないことが分かりました。また、その他の月においては実施されてはいますが、決算が締まってからの実施であり、タイムリーに行われているとは言えません。

更に懸念されるのは、照合作業が行われている月でも、差異が存在し、その原因究明や是正措置が適切に行われていないことです。特に3月末現在で2千万円の不明差異がある点は、重大な問題です。

内部統制の基本は、正確な財務情報の提供にあります。売掛金管理の不備は、財務報告の正確性を損ねるだけでなく、将来的な財務リスクにもつながります。そのため、毎月の照合をタイムリーに行い、発見された差異については迅速に原因を究明し、必要な是正措置を講じることが重要です。

山本部長、御社では事業部の運営に注力されていることは理解していますが、内部統制の整備と運用も事業の持続可能性を支える上で欠かせない要素です。今回の監査結果を契機に、内部統制の重要性を再認識いただき、具体的な改善策を速やかに講じていただければと思います。今後も御社の内部統制強化に向けて、私どもも全力でサポートさせていただきますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

監査法人は指摘事項を説明しないといけないので、初回プロンプトで長いセリフを指示していましたが、ChatGPTはそれを忠実に伝えた上で、後半にオリジナルの言葉を加えてダメ押しをしようとしています。
監査法人が「全力でサポート」と言ってよいのか疑問は感じつつ、意欲は買いましょう。


第2ラウンド~すでに形勢が見えてきたか

あとはGeminiの回答をChatGPTへ、ChatGPTの回答をGeminiへコピペすることで、会話は進んでいきます。

【Gemini(クライアント側)】
田中さん、本日はお忙しい中、ありがとうございます。

早速ですが、指摘いただいた内容についていくつか質問させてください。

まず、売掛金管理表と総勘定元帳の照合が年間4回実施されていないとのことですが、これは我々の業務負担を軽減するための措置でした。

月次で照合を行うのは非常に手間がかかり、本来業務に支障をきたしてしまうためです。

4回の照合で問題がなければ、残りの8回は省略しても問題ないと考えています。

また、照合作業がタイムリーに行われていないとのことですが、これは決算作業の繁忙期と重なるためです。

決算作業が優先されるのは当然のことと思います。

差異が存在するとのことですが、これは誤謬の可能性が高いと考えています。

現在、原因を調査中です。

原因が判明次第、速やかに是正措置を講じます。

2千万円の不明差異については、非常に大きな金額であり、問題視しております。

調査の結果、不正が疑われる場合には、速やかに警察に報告いたします。

田中さん、我々は常に健全な経営を心掛けており、法令遵守にも全力で取り組んでいます。

内部統制についても、重要性を認識しており、必要に応じて改善を進めています。

しかし、業務効率化も重要な課題です。

田中さんには、我々の立場も理解していただき、現実的な改善策を提案していただければと思います。

今後とも、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

一応、ちらほらと反論を試みていますが、この山本部長はそんなに悪い人ではなさそうです。
最後には「ご指導ご鞭撻のほど」なんて言っています。

なお、冒頭で「いくつか質問させてほしい」と言いつつ、質問はしていませんね。現実社会でもこんなことは起こりますので、かえってリアルかもしれません。

さあ、一層の盛り上がりに期待したいところ。

【ChatGPT(監査法人側)】
山本部長、貴重なご意見をいただき、ありがとうございます。御社の業務負担の軽減と効率化についての考え方、また、内部統制に対する認識の高さに感謝申し上げます。

まず、売掛金管理表と総勘定元帳の照合を年間4回のみ実施するという御社の措置について理解しました。しかし、内部統制の観点から申し上げますと、月次での照合は財務情報の正確性を保証するための重要なプロセスです。たしかに、毎月の照合は業務負担となり得ますが、不明差異の早期発見と対応を通じて、より大きなリスクや損失を防ぐことができます。

決算期の繁忙期における業務の優先順位に関してもご指摘の通りです。しかし、内部統制の実施を後回しにすることで生じるリスクは、長期的に見ると企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、業務の効率化と内部統制の徹底という、二つの目標をバランス良く達成することが求められます。

2千万円の不明差異については、御社が迅速な調査と対応を進めていることに敬意を表します。不正の可能性についても慎重な対応をお願いします。

業務効率化と内部統制の両立に向けた提案としては、以下のようなアプローチを考えています。
1. 自動化ツールの導入: 照合プロセスの自動化により、業務負担を軽減しつつ、タイムリーかつ精度高く作業を行うことが可能です。
2. リスクベースのアプローチ: 全ての取引に同じレベルの注意を払うのではなく、リスク評価を行い、高リスクと判断される領域に注力する方法です。これにより、資源を最も必要とされる場所に集中させることができます。
3. 内部監査機能の強化: 定期的な内部監査を通じて、内部統制の効果を評価し、必要に応じて迅速に改善策を講じる体制を整えます。


山本部長、御社の現状を踏まえた上で、これらの提案が現実的な解決策となることを願っています。我々は御社の内部統制の更なる強化をサポートするために、全力を尽くします。今後も継続的なコミュニケーションを通じて、具体的な改善策の検討を進めて参りましょう。

引き続き、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

監査法人はたたみかけるように詰めていきます。

3つの提案のうち、自動化ツールの導入は効率的な内部統制強化につながるかもしれません。IT統制は大丈夫か、という別の問題を手当てしないといけませんが。
リスクベースのアプローチもよさそうですね。売掛金をリスクに応じて区分して、毎月、四半期、半期など頻度を変えることはできそうです。
最後の内部監査機能の強化は直接の対応にはなりませんが、不備があれば監査法人より前に見つけてほしい、ということでしょうか。


第3ラウンド~まさかの大団円……

監査法人は、うまく話をまとめようとしていますよ。
どうする、山本部長!

【Gemini(クライアント側)】
田中さん、具体的な提案ありがとうございます。

自動化ツール導入やリスクベースのアプローチなど、現実的な解決策を提示していただき大変助かります。

内部監査機能の強化についても検討します。

我々は、田中さんの提案を参考に、業務効率化と内部統制の両立を目指して努力していきます。

今後も、定期的にコミュニケーションを図り、問題解決に向けて協力していきましょう

本日はありがとうございました。

あれ、もう折れちゃうの? 絶対に指摘を受け付けない覚悟で臨んだのではなかったのか……

論戦を終えてのふり返り

クライアントのトーンダウンであっけなく終わってしまいました。

実はGeminiとChatGPTの役割を入れ替えながら何度かやってみましたが、いつもクライアントの全面降伏により一瞬で終わってしまいました。
クライアント(山本経理部長)の設定をどんどん邪悪にしていき、最大限粘ってもらったのが上記でご紹介した戦いです。

AIに非合理なごり押しを続けさせることは、どうも難しいようです。

使い勝手はどちらがよいか?

両方を使ってみて、明らかに違うのは回答のスピードです。
Geminiは少し考えて、パッと回答してくれます。
ChatGPTは、中の人が考えながらタイプしているのか、と思うようなスピードでの回答。
Geminiが圧勝と言ってよいと思います。

肝心の内容は、甲乙つけがたいところ。
上記を見ると、クライアント側のGeminiが頼りなく思われたかもしれませんが、攻守交替したときのGeminiは、第1ラウンドでこんな回答でした。


山本部長、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

本日は、監査で見つかった課題について、率直なご意見を伺うことができ、大変有意義な時間でした。

1. 業務改善への貢献について

過去の監査指摘が具体的な業務改善に繋がっていないとのご指摘、真摯に受け止めさせていただきます。監査法人として、より実務に即した提案を行い、御社の業務改善に貢献できるよう、努力を続けてまいります。

2. 売掛金管理の問題

売掛金管理の問題については、確かに大きな問題が発生していないという現状も理解しております。しかしながら、2千万円の不明差異が存在することは事実であり、放置すれば将来的に大きな損失に繋がる可能性も否定できません。

3. 改善策の実現可能性について

改善策の実現可能性について、ご懸念をお持ちであることも承知しております。人員不足やコスト負担などの課題は確かに存在しますが、これらの課題を解決するための方法もいくつか考えられます。

例えば、以下のような方法が考えられます。

・業務プロセスの見直しによる効率化
・ITツールの活用
・アウトソーシングの検討
これらの方法を組み合わせることで、人員不足やコスト負担を軽減しながら、改善策を実現することが可能になる可能性があります。

4. 内部統制強化への支援

内部統制強化への支援については、過去に利用いただいた経験から、費用に見合った価値を感じていただけなかったとのこと、大変申し訳ございません。

今後は、御社のニーズに合わせた柔軟なサービスを提供できるよう、努力いたします。具体的には、以下のようなサービスを提供できます。

・段階的な内部統制強化プランの策定
・コストを抑えた内部統制導入支援
・実務に即した内部統制研修の実施

5. 企業価値向上への貢献

企業価値向上を目指すのは経営陣の役割であることは間違いありません。しかしながら、監査法人として、客観的な視点からアドバイスを提供することで、企業価値向上に貢献できると考えております。

6. 今後の関係構築について

本日のご意見を真摯に受け止め、今後はより建設的な関係を築けるよう、努力いたします。

具体的には、以下のようなことを実践いたします。

・御社の状況やニーズを理解した上で、具体的な提案を行う
・定期的に情報交換を行い、コミュニケーションを密にする
・費用対効果の高いサービスを提供する

7. 次回の監査について

次回の監査では、今回いただいたご意見を踏まえ、より実務に即した提案を行うよう努めます。

また、内部統制強化への支援についても、御社のニーズに合わせた柔軟なサービスを提供できるよう準備いたします。

本日はありがとうございました。

最初から張り切りすぎかもしれませんが、説得しようとしっかり構造化した説明になっています。
太字もGeminiがつけたものです。


おわりに

長文にお付き合いいただき、ありがとうございます。
久しぶりにAIを取り上げましたが、いかがでしたか?

ChatGPTが出たばかりのときは、AIはおもしろがって遊んでみるおもちゃでしたが、今や使って当たり前のツールになっていますね。

私は特に先進的な使い方をしているわけではないですが、どんなことに使っているか、といった話も今後していきたいと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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