社会人n年目の4つの手引き

★追記あり(2018年3月3日更新)

 「社会人」ということばが嫌いである。

 4月ごろのテレビのニュースでは「都内では一斉に入社式がはじまり、この春から新社会人となる~」という風な言回しがしばしば用いられるが、違和感がある。働かなければ社会の一員ではないのだろうか。「社会人」という文字列とその意図するところには、会社勤めをする人間であってこそようやく一等市民として承認されるかのような排他的なニュアンスを覚えるからだ。

 企業が包括する「社会」の領域は、社会全体でみれば一部を担っているにすぎないが、われわれの多くは、いわゆるこの「企業社会(またはその近縁部)」のなかで社会活動を営まなければならず、またその期間もきわめて長期間にわたることは事実だろう。実家が莫大な資産家で、生涯にわたって生活に困らない不労所得の見込みがあるわけでもないかぎり、企業社会とかかわりあいにならずに人生を送ることは至難の業である。

 「社会人」というのはきわめて特異的な文化やルールのもとで動いており、高校生や大学生から社会人へと移行した直後は、ほとんどの人がその異文化とのギャップや戸惑い、軋轢を感じてしまうものである。

 他者との円滑なコミュニケーションが得意でなかったり、要領よく課題を遂行することが苦手な人にとっては、「社会人の文化圏」に生きることの苦労や苦痛は一入(ひとしお)である。「大人の発達障害」というキーワードが人口に膾炙して久しいが、高度かつハイコンテクストな文化圏に適応することに、著しい困難を覚える人びとも決して少なくはない。

 はれて社会人となった人びとのための指南書は、すでに世に多く出回っている。そこで、今回は、社会人1年目だろうが10年目だろうが、何年であろうが変わずに相対する「社会人文化」を抽出し、「社会人」として生きることに苦慮してやまないすべての人のための手引きを4つの項目にまとめた。

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