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7年間毎月続けた音楽イベントを終了します。

輝井永澄です。「空手バカ異世界」の人です。

はい、宣伝でした。

今日は作家の話ではなく、作家デビューより前から続けている音楽イベントについてお話します。

元々、僕はいわゆるDTMerでした。中学ころから打ち込み音楽をはじめ、サンプラーやシーケンサーに出会い、Cubaseを使ってずっと音楽を作り続けていました。

今でこそDTMは一般に知られる音楽制作形態となりましたが、僕が20代くらいの頃はそれほど知られたものでもありませんでした。
打ち込みをやっていると言うと「楽器ができない根暗オタクが音楽の真似事をしている」という見られ方をしたり、「カラオケが作りたいの?」と言われたりしたものです。
周囲に同好の士もなかなかおらず、作品を発表する機会も限られていました。

それでも、クラブミュージックの隆盛からトラックメイカーが注目を集めたりなどして、徐々に市民権を得ていく最中に、コツコツ音楽作品を作り続けて過ごしてきました。

その後、ニコニコ動画や初音ミクが流行したことで、DTMという趣味は一気に広がり、たくさんのクリエイターが注目を集めました。
僕もニコニコ動画にゲーム音楽アレンジや巡音ルカ楽曲を投稿しており、それをきっかけとしてDJ活動を始めるなどのきっかけにもなりました。

そうして僕の音楽活動は一気に広がり、トラックメイカーとして毎月のようにライブをやったりDJをしたり、商業の仕事を少しだけしたりなどするようになりました。
ですが、「まだインターネットもなかった時代、田舎で悶々と音楽を作り続けていたころにこんな環境が、こんな仲間が欲しかったなぁ」という想いは僕の中に残っていました。

それで始めたのが、毎月第2火曜日、下北沢で開催している「自作音源ラウンジ」です。

自分のオリジナル曲を作っている人が、その作品を発表し、同好の士と繋がれる場が欲しい。それこそ、トラックメイカーとしてのライブではなく、「フュージョン作ってます」とか「演歌を作ってみました」みたいな音源を持ってきて、「どう?」「いいね!」って言い合える場所が欲しい。

そんな思いから始めたイベントです。

・1曲からでも参加OK!
・ジャンルもクオリティも一切不問!
・飛び入り歓迎、冷やかしだけでも大歓迎!

こんなキャッチフレーズを掲げ、DJのd-goroさんと共に毎月、開催してきました。

始めの頃はあまりお客さんも集まらず、僕がひとりで、誰もいないフロアに向かって3時間くらい自作曲をかけ続ける日もありました。
それでも、「このイベントは存在し続けることに意味がある」という想いから、「頑張らず、コスト低くてもとにかく続けよう」というのをテーマに毎月、下北沢に集まりました。

当初参加してくれていたトラックメイカーのTOMC(今や世界のTOMCですが)のパフォーマンスや、共同主催のd-goroさんによる、往年の名シーケンサーQY700で作ったトラックにあわせてのフリーセッションなどは大変見ごたえのあるものでしたし、趣旨に共感した参加者が徐々にリピーターとなり、イベントは次第に活況を呈してきました。

このイベントをきっかけに音楽を始めたというKiss the Gamblerは今や、シンガーソングライターとして雑誌にも取り上げられ、大活躍中です。

あと、遊びに来た人が全員、衝撃を受けて帰っていく「一ッ滴」のパフォーマンスは恒例になってたしね。

気がつけば、会場としているカフェ・ブルーマンデーで行われるイベントでも最長のイベントとして、それなりに知られた存在になっていたようです。

このイベントを、2022年6月の回を以ていったん、終了することに決めました。

意地でも続けようと思っていたイベントを、終了することに決めたのはいくつか、理由があります。

1.コロナ禍での開催事情

平日の夜という時間帯に開催していた当イベントも、コロナの影響は免れませんでした。
カフェ・ブルーマンデーに集まってのイベントができない状況下でも、Youtube Liveでの配信でイベントは毎月、開催していました。

これは、普段なかなか参加できない方も家から、遠方から参加が可能であるというメリットもありました。配信から見に来て、その後常連になっていただいた方もいらっしゃいます。

しかし、緊急事態宣言が明けて再び現場での開催にした後、その影響は顕著でした。いつも来てくれる常連の皆様は変わらず、曲を作り、それを持ってきてくれました。
しかし、確実に客足は遠のき、元々のあの活況、あの独特のテンションがある空間は鳴りを潜めてしまっていました。

配信に慣れてしまうと、なかなか元の形には戻れないものです。

「これはまたイチからやり直しだな」
と、そう思っていたのですが――

2.結婚しました

去年の年末に。

まぁ、新居は実は、前よりも会場に近くなったんですけどね。
続けられるだろうと思っていたし、妻も続けていいと言ってくれています。
しかし――子供が生まれるとなればそうも言っていられません。
(実際、結婚の前後はやはり慌ただしく、イベントをお休みするなどしました)

これまで、結婚して音楽をやめたりする人間を見ると「やめなくてもいいじゃないか」って思ってたんですが、自分がその立場になるとなかなか、どうにもならないものです。(そもそも仕事しながら本格的な音楽活動をするってすごいことです)

そして、もうひとつ――

3.作家活動が第一になってしまった

エントリーの冒頭に書いた通り、僕は今、自分のことを言う時に「作家」だと言っています。

デビュー作「空手バカ異世界」はコミック版も好調で、毎月の更新を僕自身も楽しみにしています。

その他にも何冊か書いており、まだまだ書きたい作品があります。

また、現在ゲーム関係のプロジェクトに参加し、シナリオを中心に企画開発に携わっています。

そうした状況下で、僕は最近、音楽作品をほとんど作っていません。
これは、結婚したことで環境が変わり、独身のころのように飯を食いながらPCに向かって夜中まで音楽制作、みたいなことができなくなったこともありますが、主には忙しくて時間が取れなくなったことにありあす。

音楽を作る時間があるなら、小説を書きたいし、書かなくてはならない。

音楽も小説も、そして武道やスポーツも、継続してやっていないと情報も追えず、発想は錆び尽くし、楽しめないものです。

Twitterアカウントには、僕の作品を読んでフォローしてくれた方も多くいらっしゃいます。
そうした方々に向けて、無関係な音楽イベントの情報を発信することへの心苦しさもありました。

もちろん、音楽もDJも、完全にやめるわけではありません。
趣味として続ける――ってわけじゃないんですが、音楽をやるなら輝井永澄の作家活動の一環としてまたやりたいと思っています。

しかし、定常のものとして「維持し続ける」というアクションには負担が大きく、また、コロナで遠のいた客足をまた取り戻すため、イチからやり直すには「けっこう頑張らないと」いけないんですが、そのリソースがない、というのが正直なところなのです。


4.「やめない」と「やめる」と「続ける」

「選択と集中」――嫌いな言葉です。

なにか結果を求めるのなら、必要なのは「集中」ではなく、頂上を支える豊かで広い裾野です。

小説や音楽に限らず、表現活動をする上で――それに限らず、あらゆる仕事をする上で、別のなにかの経験というのは決して無駄にはなりません。
学生時代の部活動や趣味や、大学での学びなど、そういった様々な経験は、思い出作りのためにあるわけではないと思いますし、実際、そうしたものはすべて、現在の公私に多大な豊かさをもたらしてくれています。

だからこそ、音楽も武術も小説も「絶対やめない」というスタンスをこれまで貫いてきました。

しかし、年齢も40代となり、仕事やプライベートのベクトルがある程度、定まった今、ここから先に進むためには「やめない」のではなく、「続けるためにやめる」という選択が必要みたいです。

もしかすると、「terryも大人になっちまったな…」みたいに思われるのかもしれませんし、実際そういうことなのかもしれません。
まぁ、それはそれで人生の中の楽しいイベントなのだと思います。

音楽作品を作り、発表する機会もまたあるでしょう。
「自作音源ラウンジ」もしれっと復活するかもしれません。
実は空手も、また白帯から始めました。

そうやって考えていくと、長々と書いたこの文章の結論はつまり「飽きた」ということなのかもしれませんw

7年間、イベントを支えてくれた皆さまに、当エントリーを感謝と謝罪のご挨拶に替えさせていただきます。


っつーか多分またなんかやるからその時はまた遊んでね!!!

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