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のっぱらへでかけよう!vol.5

てるさんの野遊び子育ち日記
「northern style スロウ」vol.65 Autumn 2020 掲載

 秋は紅葉があったり、森の実りがあったり野遊びが楽しい季節ですが、最北のそれは進みが早く日に日に深まっていくため冬の到来を感じてしまいそわそわする季節でもありますね。
 秋の野遊びの中でも格別楽しめるのはやはり「たき火」でしょうか。暖がとれ、食べ物も焼け、火おこしも面白い、ゆらゆら揺らめく炎はずっと見ていても飽きることはありません。こども達もたき火が大好きで、ゆうち自然学校では真夏以外は大抵たき火で遊んでいますし、真夏でもつい点けてしまうことも。そして、こども達はこのたき火そのものを楽しんで火を学んでいるなと感じます。まず火おこし…マッチやライター、最近ではファイヤースターター(擦って火花を出す道具)で火を点けるところから盛り上がりますし、火が点くとそこに木っ端や薪をたくさん入れて火を大きくしたり、花や
葉っぱを入れてその燃え方を楽しんだり、拾ってきた棒を突っ込んで燃えた先を掲げて松明ごっこをしたり。もちろん、焼き芋や焼きマシュマロなどのたき火で焼く食べ物も大好き。焼きマシュマロはこども達にとっては上手く焼くのが難しく、火と向き合う格好のおやつ。早く食べたいけど火に近過
ぎたり炎がメラメラしていると簡単に焦げてしまいますし、焦がさないために火から遠いとなかなか焼けずもどかしくなりますし、風下で焼いていると煙をまともにかぶって大変だったり…適度な熾火を見つけてじっくり焼いておいしく食べる技術を身に着ける頃には、たき火に関することはその体験を
通してかなり学べているのではないかと思っています。
 ところで、世の中ではオール電化住宅というものが増えつつあり、そこでは生活の中でまったく火を見ることなくこども達は暮らしています。そもそも以前から「こども」と「火」がかなり離れた存在になってしまっていると感じていました。炎が落ち着いた熾火を見て「火が消えてるよ」と言ったり、風下に立ってもくもく煙を浴びながら「なんで涙が出るんだろう」と
言ったり(しかもその煙から逃げようとしない)、棒の先を燃やしてオレンジ色に光っているところを手で触ろうとしたり、火のことを知らないのだな…と思わされる場面が増えました。一方、以前うちの幼児の活動中、遊びの中で存在を忘れられて小さくなったたき火に気付いた5才児が、おもむろ
に近づいて棒で残り火を集め、そこに周囲に転がっていた木っ端を置き、息を何度か吹きかけて火を大きくして去っていたことがありました。この差は何かというと、その子の生活の中に火があるか無いかだけなのではないでしょうか。確かに火は危険です。こどもが扱って失敗したら大事になってし
まうかもしれません。しかし、直接体験することからしか学べないことも確かなこと。火だけではなく、危ないと思われていることからこども達を遠ざけ続けていてはこども達は何も学ぶことはできず、いつまで経っても危なっかしいまま。大人が手も口も出さずにただ見守っているだけで、こどもは試
行錯誤して小さなケガをしながらたくさんの危険を学んでいきます。そして、大きな危険から身を守れる様になっていくのです。
 さて、秋が深まり寒さが増すと我が家では薪ストーブが大活躍。今日もこども達が薪ストーブに火を点けてくれるでしょう…

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