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のっぱらへでかけよう!vol.1

てるさんの野遊び子育ち日記
「northern style スロウ」vol.61 Autumn 2019 掲載

「お~い、キリギリスいたよ~」「忍者みたいに直ぐに隠れちゃうから逃げられるなよ~」「かまれるとめっちゃ痛いから気を付けて」「やった、捕まえた~」「おぉ、これは大っきいなぁ~、しっぽ(産卵管)があるからメスだ」・・・日本最北端の街・稚内市上勇知地区にある「ゆうち自然学校」のフィールドでは、このところこども達からこんな会話が聞こえてきます。

都会でも田舎でも大分前からこども達は野外で遊ばなくなり、また大人からは「今のこども達は自然の中で遊べない」と言われて久しく、今やデジタルメディアによるバーチャルな室内遊びが全盛な時代。実際にこども達は、虫をはじめ生き物に直接触れなくなり、木登りができずデコボコの地面をうまく走れず、たき火を知らず、服や手が汚れること自体を嫌う等々・・・野遊びからどんどん遠ざかってしまい、その影響が危惧されているのが現状です。

しかし、本当にこども達は野遊びができなくなってしまったのでしょうか?

ゆうち自然学校で開催している「森のようちえん のっぱら」では、未就学児を持つ親子が集まって野遊びを楽しんでいます。冒頭のキリギリスの話題はこの一場面。野原に潜む体の大きいキリギリスは、こども達にとって捕まえてみたい憧れの昆虫のひとつ。しかし肉食であるため鋭いあごを持ち、噛まれると大人でも相当痛いので、幼いこども達の恐怖心は並大抵のものではないはず。それでも、捕まえたい一心で挑みます。そして、何度も躊躇し、何回か触れられ、そのうちの何回かは噛まれたり噛まれそうになりながら、3,4才児であってもいつの間にか上手に捕まえられるようになるのです。噛まれないように慎重な子もいれば、噛まれても構わないと大胆な子も・・・。

こんな実体験を引っ張り出すまでもなく、今のこども達は「遊べなくなった」のではなく「遊べる機会・環境がなくなった」、つまりただ「やったことがない」だけ。野外に連れ出すと初めは戸惑うことはありますが、大人が意図的に仕組まなくてもいつの間にか自らの好奇心で何かを見つけて遊び始めますし、そこからどんどん遊びを発展させて、気がつけばやれること・できることが増えています。

そもそも野遊びの衰退はこども達に原因があるのでしょうか?

こども達の状況は、大人や社会が原因であると考えます。こども達はただ不幸なだけ。ですので、私はこども達の自ら育つ力を信じて、その力をなるべく邪魔しないように伸ばしたいと考え、野遊びの機会をたくさん提供しています。モットーはとにかく「自由に野遊びを楽しもう!」ということ。こども時代は、遊びの中から人生に必要なことを学ぶ時期・・・学んでいるというより、自分がやりたいことを楽しんでいるうちに勝手にいろいろなことが身についている・・・という感じでしょうか。そして、それらがいつしか自分自身を形作り、人生を生きる上での土台になると信じています。

こども達との野遊びは和やかでありながらエネルギッシュで笑顔溢れる場です。次回からもこども達との様々なエピソードを交えながら、野遊び子育ちをご紹介していきます。どうぞ、よろしくお願いします。

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