日本で3Dものづくりが進まない理由

先日のこちらのネットニュース(日経ものづくり)
「金属3Dプリンターが3兆円市場創出、ドイツ、米国が量産適用で先行」

ドイツやアメリカでは、金属3Dプリンタを活用して部品の量産化が進んでいる。日本はというと3Dプリンタの開発・活用に関しては世界と比べて遅れている。3Dプリンタだけではなく、3DCADを中心とした3Dものづくりが一部では行われているが、日本全体としては進んでいない。

中小の製造現場では、2次元の図面をもとに加工をしているのが大多数である。メールの電子データ(CADデータ)で送られてくればよいが、FAXで図面が送られてきて、文字や数値がつぶれていて読めないことなどもある。電子データでも紙をスキャンしたPDFデータなどであれば同様に読みづらいものが依頼図面となっている。

大きな理由として、情報流出を防ぎたいというのがあるらしい。電子データだとノウハウが盗まれる?とかでアナログの紙媒体で仕事が流れてくる。このままで良いのだろうか?本当に情報流出なのだろうか??

CADデータであれば、自分でCADソフトでデータを開き、寸法を確認することも可能だが、文字がつぶれた紙の図面では、それも難しい。

加工の見積もり依頼の段階では、3Dデータはもちろん、2DCADデータは送られてこずに、PDFデータやFAXで届くことが多い。

最近では、ミスミが3Dデータをネット上にアップロードするだけで、見積もりから発注まで出来るシステム「meviy」をサービス提供している。
https://meviy.misumi-ec.com

他にも、以前から本社はアメリカで日本にも会社があるプロトラブズでは、射出成形品、切削加工品を3Dデータのみのアップロードで対応している。
https://www.protolabs.co.jp

2次元図面をつくらずに、3Dデータのみでのものづくりも徐々に日本でも進んできてはいる。だが圧倒的に遅れているのは事実である。アメリカ、ドイツだけではなく、韓国や中国でも3Dのものづくりは進んでいる。

誤解してほしくないのだが、別に2次元図面はダメだ、2次元図面を完全になくそう、ということではなく、日本も最先端の技術を上手く活用していきたいところだということを言いたい。

日本は2次元図面を上手く活用して良いモノをつくる素晴らしい技術を持っている。それは非常に素晴らしいことである。

ただ、昔ながらのやり方に縛られ過ぎないことも大事で、新しい3D技術にも目を向けて新しいことに挑戦していくことも大事である。

なぜ、3Dものづくりが進まないのか?

そして、なぜ、3Dものづくりが進まないかというと、私が企業をまわっていて感じるのが、3Dのメリットについては、多くの人が理解している。形状認識がしやすい、体積、質量、干渉箇所が分かる。組立検討、強度検証などの解析や3Dプリンタでの試作などの他ツールと連携して活用もできる。

メリットを理解していても、3Dを導入しない理由としては、(1)ソフトが高価で買えない。(2)人がいない。(3)時間がない(忙しい)。の3つが上げられる。人・金・時間の問題である。そして、仕事が来るか分からない→お金になるか分からない。

それと、必要性を感じていないというのもあるだろう。今現在、2次元図面で仕事をしていて苦労を感じていないわけではないと思うが、それなりに仕事ができている。3Dがないと仕事ができないという危機迫った状況ではないということ。

新しいツールを覚えるのが面倒、時間がないというのも理由としてある。
慣れた道具で仕事をしたい理由もわからないわけではない。2DCADで設計した方が早かったり、3DCAMを使わない方が早く加工できたりすることもあるだろう。これはケースバイケースであり、3D技術を使った方が良い場面も必ずある。

そして、日本の技術レベルが高いので、3Dではなく、2Dで良いモノができるというのもあるだろう。これはこれで素晴らしいことではあるが、このままで良いということでもないだろう。

また特に大きい理由が依頼元のお客さんから送られくるデータが3Dではなく、2次元の図面であること。そして、自社が3Dで設計しても3Dで仕事をやりとりする企業がいないということ。

もちろん3Dで仕事をしている企業はいるし、連携して取り組んでいるところもある。ただ、まだ3Dに取り組めていない企業も多く、このまま全く取り組まないでいることへの日本のものづくり全体の危機感を感じている。

そういったことで、現在、岩手県を中心に3Dの普及活動をしているわけだが、現状を変えるのは非常に厳しいものがあると感じている。

3Dがなくても仕事ができているし、会社としても上手く回っているところに、あえて失敗するリスクもある3Dも無理に取り組む必要がないのも納得できる理由ではある。

ただ、3Dデータを受け取れない、活用できないままだと、仕事が減っていく恐れがあり、最終的には会社が倒産してしまうことも考えられるだろう。

3Dを導入して売り上げを伸ばしいる企業も多くいるのも事実、そして、残念ながら失敗している企業も多くいる。

なので、そういう状況にならないように、岩手県を中心に3Dを活用できる人財を育てたり、導入・運用のサポートすることを継続して取り組んでいきたいところだ。

もちろん2次元図面は、これからも一部必要な大事なものであるので、そこの教育も怠らず、日本のものづくりを守り、発展させていくために、微力ながら頑張っていきたい。

noteを最後まで読んで頂き有難うございます。 東北の岩手県北上市で3DCAD/CAM/CAE、3Dプリンタ、3Dスキャナ、リバースエンジニアリング等、ものづくりエンジニアの育成、企業のサポートをしています。地方創生・地域活性化に取り組んでいます。よろしくお願い致します。