グローバルビジネスでは必須なScalabilityという感覚

スタートアップ業界のみならず、一般的なネット界隈でも、今ではどんな業界であっても「それスケールするの?」と質問することがよくある。

以前であれば「成長軌道に乗せられるの?」とか「急成長可能なマーケットなのか?」とか言っていたのが今は全て「スケールするかどうか?」で済んでいると思うので便利な言葉だ。

ネット業界では当然、幾何級数的なユーザー成長を狙えないとマネタイズもままならないため、必須の概念である。マネタイズした後も売上成長し投資余力を高めることが何よりも優先だ。

しかし単純に成長率が高い低いという話ではない。

具体的には「そのビジネスの仕組みはユーザーがユーザーを呼ぶ仕組みか?」「規模が拡大するほど顧客データ蓄積や固定費比率削減、ネットワーク効果等によって競争力がさらに高まる構造なのか?」、「オペレーションが自動化されているのか?売上増やすのに社員数などコストや手間も連動して増えていかないようになっているか」「従業員一人当たり売上が年々増える仕組みになっているか。成長のためには従業員を増やすしかない循環に陥らないか」という概念である。

ここまで読んでくれた方は、そりゃ当然だろうと思うだろう。当たり前じゃん、というFeedbackが聞こえてきそう。

実際には意外と難しいのである。

世の中には顧客重視の姿勢をとる営業の強い会社が多いこともあり、それによって出世してきた(=成功体験積んできた)ミドル層も多い。当然ながら顧客の要望に120%応えようとするのだ。

ところが、その要望がイレギュラー的なオペレーションを伴うとき、例えば通常のレポート以外にその顧客企業の業務に応じたカスタマイズレポートを作ってくれるなら発注するよ、と言われた場合。

大概の営業マネジャーはこれに応えることを目指す。今期の売上目標があるのだから当然だ。

だが、本社のシニア層からはNGが出たりする。例えその特殊レポートを作成することが大した時間がかからないといくら主張しても、である。

このNGが1回であればいいが、何回も積もり積もってくると、「本社は何もわかっていない」、「所詮彼らにとって日本のお客さんなんてどうでもいいのだ」、「日本のお客さんは常に細かい要望が多い、アメリカのクライアントとは違う」といって反発してしまうのだ。これによってモチベーションを落としたり、ネガティブな発言をすることによって社内評価を下げるケースも多く見てきた。

ただ実態はそうではないことも多い。

グローバル全体で社員一人当たりの生産性を上げ、また将来起こりうる業務変更やシステム変更の際に柔軟性を作りスピーディに変化に対応するためには、スケーラブルにしておくのが全体としては最適なのだ。だからグローバルのシニアリーダーシップは慎重に全体感を踏まえた上で判断している。彼らが顧客軽視なんてことは全然ない。(まあでも実際には彼らを日本のお客さんのところに連れて行くとその要望に応えようと返事してしまう輩もたまにいるのでこれは普遍的ではないのだけど。。)

つまりScalabilityを構築し、さらにその成長力を高める際には細かい要望に対応できない、細かいイレギュラーを認めては将来の企業競争力を落とすことになることも多いので正しい判断であることも多いのだ。

この概念、さすがに高校生や大学生にはわかりづらいだろうが、社会人1年目から理解しておくことに越したことはない概念だ。その上で、自分が日本市場だけではなく全世界に影響できる方法に全力を注ぐのだ。

それによって外資系企業に入社して、意味のない「所詮は日本は植民地扱い」という私がいつも聞きたくないコメントを聞くことなく、逆にグローバルに影響力をこちらから与えられる人間になり、グローバルキャリアを築く一歩になると思う。

教育の現場でもビジネスコンテストに近いPBLを行うのであれば、こういったフィードバックを是非与えて欲しい。Scalableじゃないけど素晴らしい解決策というのは実は世の中たくさんあるのだ。手間をかけて顧客の要望を深く深く聞けばよのだから。だがそれに固執すると規模が拡大できない”良い”ローカル企業は生まれるが、GAFAにはなれないのである。




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