京アニの未来について【ハルヒ新作は十分にあり得る話】

つい最近、京アニの作品を全て視聴した。

『フルメタル・パニック? ふもっふ』からKADOKAWA作品のアニメ化が始まり、2012年の『中二病でも恋がしたい!』から自社でIPを保有する製作スタイルに転換。収益性の高いアニメ製作ビジネスを構築することに成功し、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の大ヒットで、いよいよ新境地に到達したかと思ったところで、"あの事件"が起こってしまう。

2019年7月18日に発生した放火殺人事件だ。

現在、公判が開かれており、青葉被告の罪が問われている真っ最中である。

僕はただの一般人なので、内情を知らないが、一旦冷静になって考えてみると、この放火殺人事件は京アニの未来に大打撃を与えることになる。

公判の内容を見るに、青葉被告は京都アニメーション大賞について恨みを抱いていたようで、それに加えて「女性監督と結婚」というキーワードまで飛び出した。女性監督というのは、どう考えても、おそらく日本で最も将来有望なアニメ監督の1人である山田尚子監督だと思うけど、それを考えてしまうと、ここ最近、山田尚子監督が京アニから離れていることと無関係のようには思えない。

さて、この事件による大打撃とは何かというと、まず大量の将来有望のクリエイターが亡くなってしまい、純粋に生産力が大きく落ちた。とはいえ、生産力に関しては、少しずつではあるが回復してきているように思える。というか、2020年に公開された『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を見た時点で「絶対に京アニは完全復活を遂げるのだろう」という確信に至った。放火殺人事件があり、新型コロナの感染拡大もあったのに、あれだけ素晴らしい作品を見せられてしまっては、もう何も言えない。

一方で、あの放火殺人事件によって、また別の問題が発生している。それはIPの確保だ。青葉被告が「小説をパクられた」と発言している以上、それがどれだけ信憑性に欠けていても、京アニとしては、京都アニメーション大賞を継続させるわけにはいかない。命に関わる問題だからだ。それはつまり、IPを一般公募で広く集められないことを意味しており、つまり、自社でIPを確保することが難しくなっているということである。もちろん、もう少し先になればまた再開できるかもしれないが、ここ数年ではまだ厳しい。

それで現在の京アニの制作スケジュールを考えていくと、現在、京アニが今後も制作し続けていくと思われるコンテンツは以下の3つになる。

  • 『響け!ユーフォニアム』シリーズ

  • 『ツルネ』シリーズ

  • 『二十世紀電氣目録』

ただし『響け!ユーフォニアム』は2024年4月に放送されるTVアニメ3期で、おそらく完結する。『ツルネ』シリーズは、京アニの女性向けコンテンツとして制作されていくと思うが、だとしても『ユーフォ』が終了する以上、男性向けコンテンツが無くなってしまう。
『二十世紀電氣目録』はKAエスマ文庫の作品で2018年にアニメ化が発表されたものの、現在は音沙汰がない。多分、制作すると思うけど、作風としては『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』に近いものだと思うので、これもやはり男性向けコンテンツにはならない。

現在、京アニは従業員数だけで見るとほとんど復活していて、実際、年に2本のペースでアニメ作品を公開できるようになっている。その生産力の中で、現在、以上の3つのIPしかないのはちょっと物足りない。だから、おそらく他社のIPで制作するケースが増えると考えられる。

さて、ここで、2023年11月に開催される京アニフェスである。

この京アニフェスではいくつかの目玉があるが、やはり『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズのアーティストが登場するのが大目玉となる。平野綾・茅原実里・後藤邑子だけでなく、杉田智和と小野大輔まで登場するのだ。
『涼宮ハルヒの憂鬱』は2023年で20周年に突入した。ということで、『涼宮ハルヒの憂鬱』はやたらとコンテンツを展開するようになっている。当然、新作アニメの可能性は十分にある。

これはあくまで与太話に過ぎないが、今回の京アニフェスで『涼宮ハルヒの憂鬱』の新作アニメ制作決定が発表されるのではないかと思っている。これまでの京アニだったら絶対に制作していないけど、先ほど説明した通り、現在、京アニは他社IPで制作する必要に迫られているので、京アニにとって悪い話ではない。

一時的に京アニが他社IPのアニメ制作に力を入れるとなると、『ハルヒ』だけではなく、Key作品である『Summer Pockets』も気になるところだ。この作品はアニメ化が決まっているものの、アニメ制作会社がまだ発表されていない。ここで京アニが登場する可能性も十分にあり得る。

他にも根拠はある。基本的に、京アニは固定給制を採用しているため「アニメを作らない」という状態を作るのが好ましくない。だから、やはりなんとしてでも、何かしらのアニメを作る必要があるので、他社IPを中心にしてでも、アニメを作っていくと考えられる。

もし本格的に京アニがKADOKAWA作品(ハルヒ、氷菓、フルメタなど)でアニメを作るということになると、問題は資本関係になりそうだ。ただし、これに関しては、京アニが有利な形で出資できるようになるのではないかと考えている。というのもKADOKAWAとしては、2000年代に全盛期を迎えた作品である『ハルヒ』や『フルメタ』を掘り起こしてくれるだけでも十分すぎるほどのリターンが得られるし、現在のKADOKAWAは、異世界転生など、多種多様なコンテンツで十分すぎるほどの収益を得ている状態だからだ。それに、あの京アニが作るにしても『ハルヒ』の新作アニメが現代で成功する保証が全くない。だからリスク回避の観点でも、KADOKAWAがここで強引に出資する必要性がないと思う。

ということで「京アニが『ハルヒ』の新作アニメを制作するのではないか?」という噂は、全くの夢物語ではないと僕は考えている。それどころか、あともう少しアニメ化すれば完結できる『フルメタ』の新作アニメの可能性も十分考えられる。こうやって考えてみると『Summer Pockets』は、もう京アニ以外の選択肢が思い浮かばなくなってきた。

現在、ビジネス的に見た京アニの最大の問題点は自社IPの確保にある。だが、小説を公募する際は、少なくともあの事件の熱が冷めてから実施する必要があるため、今は愚直に、高品質のアニメを作り続けることにフォーカスすべきフェーズだと言える。当然、必然的に他社IPを用いることになるわけだが「それだったらいっそのことKADOKAWAで……」というのは十分に考えられるし、経営者的にも、それが正しい選択のように思えてくる。

だからここ数年は、女性向けコンテンツとして『ツルネ』を継続的に制作し、『二十世紀電気目録』もやり切り、男性向けコンテンツは『ユーフォ』が終わったタイミングで、KADOKAWA作品やKey作品に切り替えていくのではないだろうか。

現在、京アニには以下の監督級人材が在籍している。

  • 石原立也

  • 石立太一

  • 山村卓也

  • 河浪栄作

現段階では山村監督が『ツルネシリーズ』を担当しており、ここに河浪栄作が制作に加わっている。多分、ここのラインは今後も継続。
石原監督は『ユーフォ』シリーズを制作中で、『ユーフォ』が完結するとラインが空く。そして何よりも石原監督は『ハルヒ』の監督経験があるもし『ハルヒ』を新作でやるなら、まず間違いなく石原監督だ。また、石原監督はKey作品の監督も務めていたので、もしかしたら他社IPの作品は全部石原監督が担当するかも。
一方、ここ最近は石立監督の作品が公開されていないが、石立監督はKAエスマ文庫作品を手掛けることが多かったので『二十世紀電氣目録』を担当するのではないだろうか。と、予想してみる。

最後に余談だが、冒頭にもある通り、僕は京アニ作品を全て視聴した。KADOKAWA作品やKAエスマ文庫作品はもちろんのこと、京アニの原点とも言える『MUNTOシリーズ』も視聴した。僕は『MUNTOシリーズ』を視聴して、京アニが信じているものが、他のアニメ制作会社とは違うことを理解できた。

京アニは近い将来完全復活を遂げるだろう。なぜなら京アニは『MUNTOシリーズ』のユメミと同じように、人の心を信じているから。人の心さえあれば、美しい世界を作り出すことができることを知っている。

目に見えないものを形にできる京アニ(と山田尚子監督)の魔法を、これからも楽しんでいきたい。







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