がんをめぐる冒険(6)ドクター探し

PETで左側の卵管と卵巣が光っているのでがんの可能性が高い。
ところが卵巣が腫れているでもなく、出血するでもない、内診してもわからない。
一般的には、子宮が腫れて下腹部がポッコリしてきたり(中年太りだと思っていたら筋腫やがんだったケース)、不正出血があったりするけれど、それもまた良いとは言えず。子宮は〝もの言わぬ臓器〟なので症状が出た時はかなり病気が進行していることが多いという厄介なところです。

婦人科の先生は
「良かったら大きな病院で診ていただくほうがいいかと思います。ご希望あれば紹介状書きますので」
と言ってくださったけど、自分で探せるものでもなく、まずは医療記者の先輩にメールで質問しました。

私のリクエストは、
1「治してくれる」先生
2組織力のあるところ
3家から通いやすいところ
4がん専門病院でなくて総合病院
 で、おすすめのところを教えて欲しい、とお願いしました。 

 1は、取材している中で、医師にもいろんなタイプの方がいて、有名な先生=治療が上手いとも限らないことを知ったから。研究者肌のいわばオタク気質の先生やメディアに出てしゃべるのが上手な先生がいます。「オタク気質の先生」も一つの病気に限ってなら高い専門性が非常に力になりますが、私のがんは婦人科系と足の付け根の2か所。現時点で明確な診断が出ず、婦人科と足の付け根のがんが別物の可能性もある、となると他科との連携が必要になるので、他科との連携が必要になります。そういうときに平行して治療できないと時間がかかってしまう。「メディア出演が得意な先生」も、メディアに出で啓蒙活動するのは上手かもしれませんが、診察は別物。コロナ禍にメディア出演していた有名医師がいましたが、病院の内情は別物。うちの父はこの先生の勤める病院に入院し、院内感染でコロナに罹患し、1カ月間個室に隔離されました。むかし、君島一郎の服が一流だったのは、一郎さんがデザインのほかに皇室の方や富裕層を接客し、縫製を妻の由紀子さんが担当していたからだそうです。医師にも、君島一郎のようにアピール上手で啓蒙活動に向いている方もいるんです。
さらに医師をしている後輩(ウチの大門未知子)曰く「私の前の上司は麻酔のときまで患者さんの傍にいて『あとはよろしく』って丸投げしていました」と偉い先生だからといって正解とも限らないリアルも教えてくれました。なので〝本当に治してくれる先生〟を探さねばと思いました。

 2の組織力は、父が亡くなるまで病院とのやりとりで痛感したことです。病院によっては医師の個が尊重され過ぎているのか、先生同士の連携がとれてなかったり、医師と入退院のアシストする連携室で共有できていなかったりしていました。毎回説明するのはやぶさかではないけれど、とにかく関所が多くて前に進まない。もう就業時間です、祝日です、とスケジュールは延び延びで、その間に父の具合が悪くなるという最悪の事態を見てきたので組織力は必要だと思ったのです。

 3の家からの距離も重要。がんの寛解は5年、これから長いお付き合いになるので、いい病院でも通えるところでないと肉体的にもしんどいことになります。4は自分のがんががん専門の病院だと私以上に重篤ながん患者さんが多いような気がして申し訳ないし、総合病院だと産婦人科で子供を眺めるだけで癒されるしいいかなと。またがんがもとで他科の診察に行くこともあり得るし、全て同じ病院でデータを共有できるほうが今後のためにいいかなと思いました。

 4は、私の個人的なイメージですが、病院にいる人が全部がん患者というのはちょっと気が重い。全国から専門病院に来る中で、私程度のがんで相談するのは申し訳ないような気がしました。
総合病院だと、産婦人科で赤ちゃんを眺めて癒されたりするのもいいなと思います。かかりつけの先生は「産婦人科あるあるですよね」と一言。先生の明るさ、共感力もありがたいところでした。

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