がんをめぐる冒険(1)え?まさか私が!

10年前、有名人の大病された体験を聞く連載を4年ほど担当していました。
元外務大臣の与謝野馨先生に取材した時、
数々のがんを経験したがんサバイバーの先生にどう質問しようかと考え
死を覚悟された方につらいことを思い出してもらいたくもないし、
ポジティブなインタビューにしたいと思って
「がんのギフトは何ですか?」
と聞きました。
すると先生は
「時間です」
と答えられました。
突然、脳梗塞や心臓発作で命を失うと、伝えるべきことの準備ができない。ある意味、目途が立つから逆算して準備ができるということなのだそう。
それを聞いて、なるほどがんは案外悪くないなと思って、「おばあちゃんが、がんで……」と深刻そうな人にがいると与謝野先生のお返事を伝えていました。

そんな感じで、がんについてはかなりお話を聞いているし、知っているほうだと思っていた。
ところがいざ「転移がんがある」と言われたら大慌て。
どこも痛くないし、出血とか目に見える症状もない。
春に受診した会社健康診断は問題なし、視力2.0とサバンナで生活できるレベル。
元気だけが取り柄だったのに「え? まさか私が!」

どこの病院に行ったらいいのか、
小市民が有名病院や医師に足掛かりはあるのか、
父が死んだばかりで母には内緒にしておきたいし、
仕事はどうしよう、
お金の準備をしなきゃ、

一気にタスクが積み上がり、優先順位がわからない。
落ち着け……自分
日々の原稿、取材と並行して冒険が始まりました。

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