親との死別の「負の遺産」

「負の遺産」なんていうとなんだか、ちょっと仰々しいが、今読んでいる元の論文のタイトルは

"The effects of negative legacies on the adjustment of parentally bereaved children and adolescents"

「親と死別した子どもや思春期の子どもたちの適応に関して、負の遺産の影響」

となっている。ハーバード・メディカルスクールのシルバーマン博士らの論文。

子どもの行動チェックリストをもとにして、母親か父親いずれかと死別をした子どもたちの調査を行い、心理的、行動的なリスクを確認している。

比較的良い意味での「継続する絆」(Continuing Bonds)の話しが多いけれど、ここでは、生前の関係性が難しかった場合、継続する絆が、リスクの方に働いていることに着目している。難しかったというのは、子どもたちが心配になったり、負担を感じたり、恐怖をかんじたりしていた場合である。それは故人の人生、病気、死、また彼/彼女らとの関係性に関わる。

12の家族、6歳から16歳までの子どもたち28名に、4ヶ月後、13ヶ月後、24ヶ月後にインタビューを行った。研究結果では、5つの「負の遺産」が確認されたと報告している。

1つは、「健康」に関する負の遺産。自分も親と同じ病気になるのではないかという不安だ。

「わたしのお父さんを殺した病気はうつるの?」という質問をしている子もいたという。

2つめの負の遺産は、「役割」。親が担っていた役割を自分も担わなくてはいけないのではないかと思うこと。お父さんを亡くした子が、お母さんや、他のきょうだいたちの面倒をみなければと思う状態などだ。

3つめは「個人的資質」。遺された子どもが、なくなった人に自分を似せようとしたりするケースがあったという。もしくはまったく逆に、そうあらないようにしようとしていたことも。父親が博士をもっていたことを誇りに思っていたが、病気で学術的な成果をあげられなくなった父親に自らを重ねていったのか、彼女は学校をドロップアウトしたという。

4つめは「責めること」の遺産。なくなった親の死に対して十分なことができなかったという感覚をもつことで、亡き親とのつながりを感じている場合だ。

そして最後5つめは「感情的な遺産」。このつながりについては、他の遺産とも重なっていると書かれている。

わたしが、今確認しなければいけないのは、死別後何ヶ月や何年経過した人を対象にした研究があるのかなのだが、その年数を決めた理由はやはりここには書かれていない。しかし、この論文はわたしのテーマとする「社会的影響」に大きく関わりそうだと感じるのでまとめてみた。特に、ドロップアウトした女の子の話や、親の世話をしなければということは、とりわけ、研究に関係することである。

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