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元日本赤軍メンバー、安倍元首相の銃撃事件を映画化:それもまた「表現の自由」

いつものように「ゆっくりしていってね!」から書き始めよう――と思ったが、今回扱う話題は安倍元首相の銃撃事件に関連するものだ。さすがにゆっくり文体は相応しくないだろう。(私は普段、ゲーム実況動画などで皆さんにお馴染みの「ゆっくり」を模した文体を使っている)

まずは、凶弾に倒れた安倍元首相のご冥福をお祈り申し上げる。彼の遺族、支持者の心痛は察するにあまりあり、同情を禁じ得ない。

私が安倍元首相に対して抱く個人的な評価はさておき、彼は民主主義のプロセスによって選出された代表者であり、「殺害する」という方法によってその言論が封じられて良いはずがない。

この銃撃事件は、奈良県で起きた。容疑者は山上徹也氏である。もちろん、あくまでも「容疑」であるため、まだ彼だと決まった訳ではない。

しかしながら、銃撃事件の際には複数の私服警察官も配置されており、演説中とあって目撃者も多数いる中での現行犯逮捕だった。背景事情に何があったにせよ、彼が実行犯であることはおそらく変わらないだろう。

銃撃事件の「映画化」

この銃撃事件を、元日本赤軍メンバーの足立正生氏が監督となって映画化するという報道があった。

「山上容疑者の半生を描いた映画です。生い立ちから銃撃に至るまでを追ったもので、なんと国葬がおこなわれる予定の9月27日に公開をぶつけようとしているようです。統一教会から撮影を妨害されることを恐れ、撮影現場などはいっさい秘密です」

監督は足立正生氏だ。1974年に重信房子氏が率いる日本赤軍に合流して国際手配された経歴を持ち、これまでにもドキュメンタリー『赤軍 PFLP・世界戦争宣言』(1971年)を監督した経験を持つ“過激派”だ。

「自身も“テロリスト”として国際手配されたこともある足立さんですから、山上容疑者を非難するどころか、彼の人生や主張に徹底的に寄り添ったものになるでしょう。本人は『山上を礼賛するのではなく、作品が山上そのものになるんだ』と意気込んでいるようです」(同前)
(中略)
 制作期間はわずか2週間ほど。山上容疑者を演じる“主演俳優”の名前は、いまだに公開されていない。足立氏は「国家に対するリベンジだ」と語っているという。

山上徹也容疑者 安倍氏銃撃事件がスピード映画化! 監督は元・日本赤軍メンバー、なんと国葬当日に公開へ


Twitterでも述べたが、こうした映画を制作・上映することは完全に「表現の自由」に含まれる。

ネット上では制作の中止を求める声や、「これは表現の自由に含まれない」とする意見もあるが、私がそれらに賛同することはないし、明確に反対する。

また、映画制作への妨害、上映中止にも断固として反対する。それは不当な言論弾圧である。

【2022年9月17日追記】
本記事に関して、映画制作・上映が表現の自由とした上で、「ボロクソに叩かれることもある」「否定的な論評もまた表現の自由だ」「内容が法的に問題のあるなら、訴訟される可能性もある」など、足立氏の覚悟を問いかけるツイートが多く寄せられた。いずれも確かに正しい。しかし、世間体やネット炎上を気にするナイーブな一般人が相手ならばともかく、足立氏はかつてテロリストとして国際指名手配を受け、レバノンの刑務所で3年間の禁錮刑を受けた人物である。「たかがその程度」の覚悟を問うのは今更だろう。(むろん、足立氏を称賛している訳では全くない)

ツイート一つしただけでは、「一応、建前でそう言っただけ」と後々難癖もつけらそうなので、noteにストックして立場を明確にしておく。

「表現の自由」に含まれないとする論への反論

1.2万フォロワーを抱える漫画家・さちりみほ氏は、本件について以下の意見を表明した。

「国家への叛逆は表現の自由では無い」「タイを見習って上映禁止すべき」とは、これこそずいぶん"過激な"意見である。

なお、「タイを見習って……」というのは、タイには王室に対する不敬罪が定められており、王室関連の映画はしばしば上映禁止命令を受けるからだ。

しかし、氏の意見は間違っている。なぜか?

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