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#005 人々の願いが満ちる場所


2021.11.4
大窪寺の寳杖堂@香川県さぬき市


四国霊場第八十八番札所、大窪寺。
四国八十八箇所巡礼の結願の地である。

【結願(けちがん)とは?】
仏教用語で、日数を決めて行った法会や願立てなどの予定日数が満ちること。満願。また、その最終日。


徳島県の霊山寺からはじまる四国八十八箇所巡礼は、高知、愛媛の各札所を経て、香川県の大窪寺でしめくくられる。

寳杖堂には、お遍路旅を共にしてきた金剛杖がたくさん奉納されている。この杖の数だけお遍路さんが存在し、それぞれにドラマがあるのだと思うと感慨深い。



約20年前の話になるが、親戚の女性が一人で、歩いて八十八箇所をまわっていた。交通事故により、まだ18歳の若さで亡くなった息子さんの供養のためだった。

私は、札所になっているお寺のうちのいくつかしか訪れたことがないけれど、徒歩で巡礼するには、想像を絶する苦労があるのではないかと思う。

移動距離の長さはもちろんだが、さらに厳しさを感じさせるのが、その道のり。

実際に訪れると、山道、峠越え、上り坂、下り坂、整備されていない道も少なくないことに気づく。木々に囲まれ、昼間でも薄暗いところが多く、女性一人のあるき遍路はどれほど心細いことか。

「一人で歩いてまわるのって、怖くないん?」
あるとき、その女性に尋ねたことがあった。

「それがな、ケンくんが守ってくれてるから、全然怖さを感じひんねん」

八十八箇所の霊場を開いた弘法大師さまと、息子さんの魂に見守られて、大窪寺にたどり着き、結願証を手にしたときの気持ちはどのようなものだっただろう。


大窪寺は長い旅路を終えたお遍路さんの祈りや願いをやさしく包みこみ、今日も新たなはじまりの道をそっと照らしてくれている。



【あとがき】
大窪寺は八十八番目の結願の地であるからか、他のお寺以上に厳かな印象を受けます。
紅葉の名所としても知られており、秋には地元の人々が多く集います。門前には「打ち込みうどん」の名店があり、紅葉を楽しんだあとにうどんを堪能して帰るのが、モデルコースとなっています。


▼香川歴4年の「私」が見た、さまざまな風景をお届けしています。毎週末更新予定。





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