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「一生に一度」のラグビーワールドカップをめぐる旅〜大分、東大阪、豊田、熊谷、横浜篇〜

 前回に続いて、現在日本で開催中のラグビーワールドカップの旅の模様を、写真と共に振り返ることにしたい。大会は今日から決勝トーナメント。試合会場も、東京、大分、横浜に絞られることとなった。トーナメントでの会場選定は、2002年のFIFAワールドカップと比べると興味深い。というのも17年前のトーナメント8試合は、いずれも異なる会場でまんべんなく行われているからだ。

 今大会は12会場で48試合が開催されるが、試合数にかなりのばらつきがある。東京では8試合、横浜では7試合行われる一方で、2試合しか行われなかったのが札幌と釜石と熊本。そのうち釜石は、台風19号の影響で結局1試合のみの開催となった。現地で準備されていた関係者には、お気の毒としか言いようがないが、それだけに9月25日に開催されたフィジー対ウルグアイの試合は、本当に現地取材できてよかったと思っている。

 サッカーであれラグビーであれ、ワールドカップの楽しみに旅は欠かせない。ゆえに今回の取材では、日本の試合以外のプール予選は「会場優先」でチョイス。結果として札幌から大分までを縦断しながら、それぞれの土地での大会の熱を感じとることができた。そしてスタジアムや移動の途中で出会う、世界中のラグビーファンたちもまた、私にとって常に魅力的な被写体であり続けた。それではさっそく、後半キックオフ!

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 神戸から新幹線と特急を乗り継いで大分に到着。大分駅周辺はすっかり「ワールドカップモード」となっていた。大分でのワールドカップといえば、やはり2002年のことを思い出す。あの時は大挙してやってきた外国人に「おっかなびっくり」という感じだったが、今では商店街を挙げて国旗を飾り、BGMに国歌を流している。

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 九州では最も試合数が多い大分。その最初のカードで世界最強のオールブラックスの試合を引き当てたのは、開催に積極的だった広瀬勝貞知事の情熱のたまものだったのかもしれない。こちらは、ニュージーランドからやって来たファン。サッカーの世界でのカナリヤ色がそうであるように、ラグビーの世界での黒はまさに強さの象徴そのものである。

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 こちらは対戦相手のカナダのサポーター。実はカナダは北中米を代表する実力国で、今大会も含めてすべての本大会に出場し、そのほとんどは予選からの勝ち上がりである。結果としてニュージランドには63−0と力負け。その後カナダ代表は、試合が中止となった釜石にてボランティア活動に参加し、世界中から称賛を浴びながら帰国していった。

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 大分から5時間かけて東大阪へ移動。ジョージア対フィジーという興味深い顔合わせを取材する。こちらはジョージアから来たサポーター。かつてはグルジアと呼ばれ、ソビエト連邦に組み込まれていた時代からラグビーは盛ん。現在の国旗は少しイングランドに似ているが、以前のものはワインレッドがベースで、ジャージの色にも反映されている。

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 こちらは原色系の衣装が印象的なフィジーのサポーター。スクラムを得意とするトンガやサモアとは異なり、流麗なパスワークが持ち味である。その独特のスタイルから、付いたニックネームが「フライング・フィジアン(空飛ぶフィジー人)」。この日も、ジョージアの相手の背後を面白いように突いてトライを重ねていった。

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 この試合で最も感動したのが、会場となった東大阪市花園ラグビー場。「高校ラグビーの聖地」としてつとに有名だが、ここを訪れるのは今回が初めてであった。このピッチの近さを見よ! オープンが1929年という歴史ある施設だが、大規模な改修工事を終えて、ワールドカップの会場に相応しいスタジアムに生まれ変わった。

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 東大阪から日本対サモアが行われる豊田に移動。完全アウェイ状態の中、サモアから応援に駆けつけたサポーターを撮影する。大会前、いわきでの事前合宿を取材していたので、マヌ・サモアには愛着があった。しかし今大会は、ロシア戦には勝利したものの、続くスコットランド戦には大敗。いずれの試合も退場者を出す、精神面での脆弱さを露呈した。

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 代表戦で何度も訪れている豊田スタジアムだが、やはりラグビーのワールドカップとなると雰囲気はがらりと変わる。あちこち撮影しているうちに目に入ったのが、ボランティアスタッフの休憩所。これから試合終了までの長い勤務を控えて、それぞれ食事をしたり休息をとったりしている。私もそろそろ記者席に向かうことにしよう。

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 試合は、終了間際のトライとコンバージョンを決めた日本が38−19で勝利。ボーナスポイントも獲得して、初のベスト8進出に向けて大いに前進した。この日は豊橋に宿をとっていたため、終電に間に合うようにヒヤヒヤしながら豊田市駅を目指す。ようやく勝利を実感できたのは、ホテル近くの飲み屋で出会ったラグビーファンと祝杯を挙げた時だった。

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