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国宝とグルメとフットボールの日々〜山雅だけではない松本の魅力を愉しむ

 帯広取材に向かう途中で、この原稿を書いている。北海道には、主に日本代表取材で何度も訪れているが、行く先は決まって試合会場の札幌。帯広を訪れるのは2007年以来だから、実に12年ぶりとなる。これくらい間隔が開くと、さまざまなものが感慨深く感じられるのは間違いない。今回の旅の出来事については、あらためてこのOWL Magazineにて掲載することにしたい。

 旅の目的地は大きく3つに大別できる。まず、初めて訪れる土地。次に、久しぶりに訪れる土地。そして、何度も訪れる土地。私の場合で当てはめると、1つ目は今年の鈴鹿取材で(何しろ三重県は47都道府県で唯一の未踏の地であった)、2つ目は今回の帯広取材であり、そして3つ目は年に5回以上は訪れている今治だ。今回紹介する松本は、国内では今治に次いで2番目に訪れる機会が多い土地である。
 
 私が初めて松本を訪れたのは、07年か08年だったと記憶する。天皇杯の取材で駅前に宿を取り、駅前で簡単に夕食を摂っただけ。翌日にアルウィンで取材して、そのまま次の取材地に移動してしまった。その後、松本山雅FCとのご縁がなければ、私にとっての松本は、単に「取材で行ったことのある街」くらいのイメージしかなかっただろう。

 松本という場所に愛着を抱くきっかけとなったのは、JFL2年目の11年にシーズンを通して山雅を取材したことが大きい。この年は都合10回以上、特急あずさに乗って東京と松本を往復した。この時の取材は、翌年に上梓した『松本山雅劇場 松田直樹がいたシーズン』に結実。そして山雅が晴れてJクラブとなって以降は、取材ではなく「お客さん」として時々松本を訪れるようになった。

 いささか前置きが長くなってしまった。今回の松本への旅は、カミさんが応援する名古屋グランパスが、8月18日にアルウィンで山雅と対戦することが発表されてから決まったものだ。J1の試合観戦はメインイベントであるものの、どちらかというと観光が「主」でサッカーが「従」。私にとっては珍しい旅の形だが、通い慣れた松本の新たな魅力を体感する旅となった。さっそく、写真と共に振り返ってみたい。

 松本駅に到着して、改札を出ようとして目に飛び込んできたのが、こちらの横断幕。「J1」の2文字が実に誇らしげに感じられる。松本市のキャラクター、アルプちゃんも山雅のユニフォームを着てお出迎え。ここから松本への旅が始まる。

 松本で一番の観光スポットといえば、モノトーンのなまこ壁で統一された建物が並ぶ中町通り。なまこ壁とは瓦を並べて貼り、目地に漆喰をかまぼこ型に盛り付けて塗る技法で、土蔵などでよく用いられる。この風景を見ると、松本に戻ってきたことを実感する。

 まずはカミさんのお気に入りのお店を探索する。山屋御飴所は、創業が寛文12年(1672年)という日本でも指折りの老舗飴屋。ここのお勧めは落花生入りの板飴で、薄いせんべいのような食感と落花生と風味、そして飴の甘みを同時に味わうことができる。

 もうひとつ、カミさんの行きつけのお店がLABORATORIO(ラボラトリオ)というカフェ兼民芸品ギャラリーのお店。昭和8年(1933年)に立てられた薬局を改装して作られた店内は、ただひやかすだけでも訪れる価値あり。ここで買ったグラスや食器は、飽きることなくわが家で重宝している。

 松本での最初のランチは、当地で最もメジャーなB級グルメである山賊焼き。鶏の一枚肉をニンニクの効いたタレに漬け込み、片栗粉をまぶして揚げる。鶏のもも肉を使ったものが一般的だが、こちらは胸肉を使用。やたらボリュームがあるので、少食の人は注意が必要だ。

 午後はサッカー仲間の細川ひとみさん(左)が昨年オープンしたMATSUMOTO PAN(マツモトパン)へ。信州大学松本キャンパス近くにあり、客の多くは学生だという。ひとみさんは、朝の3時から欧州サッカーを見ながらパンを作り始めて7時に開店、売り切れたら店じまいとのこと。天然酵母にこだわりがあるそうで、どれも美味しい(参照)

 そして夕方には、山雅サポなら誰もが知っている、やきとりはうすまるちゃんへ。ちょうど映画『クラシコ』撮影から今年で10周年ということで、この日はまるちゃんをはじめ、当時のゴール裏の面々にも集まっていただき、インタビュー動画を撮影させていただいた。こちらは後日、宇都宮徹壱WMにて公開予定。

 まるちゃんのお店は、名目上は焼き鳥屋だが、実質的には「山雅系スポーツバー」と言ってよいだろう。この日は名古屋サポの3人組も来店して、土曜日の中継映像を見ながら明日の試合の展望について語り合うことができた。アウェイのサポでも気軽に入れるお店は、もっと全国的に増えてほしいものだ。

 そして迎えた試合当日。キックオフは18時ということで、それまではひたすら観光に充てることにする。同じようなことを考える名古屋サポも多かったようで、あちこちの観光スポットで赤いユニの人々を目にした。まずは松本の象徴といえる、国宝の松本城へ。

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