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「地方税法等の一部を改正する法律案」についての調査(NHKから国民を守る党浜田聡参議院議員のお手伝い)


 今回は総務省から提出された「地方税法等の一部を改正する法律案」について調査してまいります。
令和6年1月に発生した能登半島地震による災害対応への法改正もあり、地方税法に関連する法改正は2つに分かれて法案が提出されています。今回は当初出されていた改正案について見ていきたいと思います。

①2月6日に提出された主な改正案の個別説明

A.個人住民税の定額減税

 岸田首相が昨年打ち出し定額減税になります。所得税の減税と並行して個人住民税所得割額から1万円の減税を実施するものです。これは配偶者や扶養家族も含まれますので4人家族であれば4万円が減税されます。これについては非常に喜ばしい事ですが、所得制限があり、合計所得金額が1,805万円(給与収入が2,000万円)以下の納税者が対象となっています。また、地方における減収額分は国費で補填するとしています。

B.外形標準課税の見直し

 外形標準課税という言葉自体、経理に携わっていないとあまり聞き覚えのない税制かと思います。通常、法人税は企業の儲けである所得を課税標準として税金が課されますが、外形標準課税法人の場合、所得だけでなく、企業の規模も課税標準となります。

税理士法人 山田&パートナーズHPより引用

令和6年度の税制改正大綱に盛り込まれたものになっています。外形標準課税は資本金1億円超の事業者を対象としたものでしたが、資本金が1億円以下であっても資本金と資本余剰金の合計額が1億円を超えれば課税対象となるものです。
 これは課税対象の拡大となるものですが、対象法人数は、ピーク時の3分の2に減少しており、減少の要因として「減資によるもの」が多く、特に財務会計上、単に資本金から資本剰余金へ項目振替を行う事例が多いとの指摘があったためというのが改正理由になります。外形標準課税対象外である「資本金1億円以下の中小企業」の税制上の違いについては下記の記事が分かりやすくまとまっていますのでご参照ください。

 具体的な見直しについては総務省が発表している令和5年11月の「地方法人課税に関する検討会 第2次中間報告」をご覧ください。変更点が分かりやすくまとまっております。

外形標準課税の対象となる箇所
100%子会社等への対応の変更点

 大企業への「節税封じ」とも言われる、外形標準課税の変更点ですが、課税対象の拡大をすることは企業負担だけではなく、株主や従業員の給与にも影響を及ぼします。そもそも外形標準課税の性格は「法人の行う事業に対して課税する事業税は、法人が事業を行うにあたって享受する行政サービスの経費負担としての性格を有している。したがって、仮に赤字であったとしても享受したサービスに対応する税額は支払うべき」とという考え方に立脚していますが、企業活動に対し、このような考え方のものと課税することは政府による抑圧以外何ものでもありません。税収減が問題視されているとしても、日本の法人税率はG7のなかでもトップクラスです。(G7のなかでは2位)
 特に外形標準課税は地方税に係る部分でもありますので、中央政府が決めるより、各自治体規模で決めるべきではないでしょうか??

C.賃上げ促進税制

 端的に言えば中小企業が継続雇用者の給与総額を基準以上に引き上げた場合、法人税の控除措置がおこなわれます。こちらは令和9年度まで3年間の時限措置になります。時限措置とはいえ控除額の引き上げ措置については喜ばしいところです。しかし、税制の複雑性を考えるならば、一律減税でよいと個人的には考えます。

経産省HPより

D.固定資産税・不動産取得税

 固定資産税は負担調整措置を3年間延長するものになります。負担調整措置とは土地の固定資産税が急激に上昇して税負担が重くなり過ぎないように、緩やかな上昇へ税負担を調整する仕組みになります。
 例えば、急激な地価上昇があったと仮定します。土地の用途が変わらなければ、固定資産税は評価額に連動しますから、地価が上がると固定資産税も評価替え年度から上昇します。

しかし、負担調整によって、いきなり固定資産税が急上昇するのではなく、何年もかけて徐々に本来の税額へ近づいていきます。

このように急激な負担増に対応する措置にはなりますが、そもそも固定資産税には根本的な問題があります。令和2(2020)年4月6日の決算行政監視委員会第二分科会において衆議院議員の落合貴弘議員がこの点を指摘しております。

一点、そもそも固定資産税についてなんですが、これは調べれば調べるほど奥が深いなというか、問題が結構あるんじゃないかなというふうに思います。固定資産税は、自治体が計算をして、これだけ払ってくださいというふうに所有者に金額を提示するわけですけれども、これは調べてみると、二〇〇九年から一一年の三年間が特にあれでして、課税ミスが三年間で三十九万件、その七割が取り過ぎてしまったということで、これは恐らく、まだ間違えているんだけれども、気づいていないというのもたくさんあると思うんですね。
 高市大臣もちょうど二〇一四年の九月に、就任の後、ガイドラインで指示をしていまして、しかし、それでも間違いがその後も連発している。
 これは調べてみますと、去年でも例えば、市の名前を言うのもあれですけれども、新聞に載っていたので、米沢市が去年、課税ミスが千七百八十九件、同じ山形県の上山市も千三百八十五件、これはすごい数、まだ課税ミスを連発しているわけでございます。
 これは、大臣も何年か前にミスしないようにと通達を出したわけですけれども、通達を出してもこれだけ間違いが連発しているわけですから、やはりこれは税自体にも、特に計算の方法にも問題があるんじゃないかなというふうに思います。

国会会議議事録より抜粋

このように複雑な計算方法であるが故に、課税ミスが発生している点は見過ごせないところですが、その後総務省はこの点について法改正をおこなってはおりません。簡素な算出方法にまずは変更していくことが求められるのではないでしょうか。

F.森林環境譲与税

 政治に関心がある方であれば、既に承知かと思いますが、森林環境税というものが既に自治体から始まり、全国に広まっていきました。大まかな枠組みが以下の図になっております。

総務省・林野庁発表資料より抜粋

 私有林人工林面積の割合を増やし、人口割合を下げる措置になりますが、私有林人工林面積の割合で増やすという事は利権への財源移譲といってもよいでしょう。林野庁の発表している都道府県別の人工林率をみると森林の多い地方部だけに偏っているわけではありません。

 また、都道府県別の人工林率の推移をみると大きく人工林率が変化した都道府県は見当たりません。

 お手間かと思いますが二つの資料をご覧いただき、今回の法改正による変更点をご確認ください。

 私有林人工林面積に比重を変更する理由としては活用実績を挙げています。林野庁の発表資料では活用実績を6例挙げていますが、神奈川県小田原市の活用実績については違和感を持ちます。

森林環境譲与税の目的に「パリ協定の枠組みの下における我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点」とありますが、学校施設の木質化が趣旨に沿ったものでしょうか??むしろ火事などの災害で校舎が燃えてしまった時のリスクはどのように考えているのか、自治体に回答を求めたいと思いました。このような施策は各自治体の住民による判断に委ねられるべきではありますが、森林環境譲与税は他の自治体住民も支払っている税金が使われています。趣旨・目的をお題目に無駄な税金が使われていきます。森林環境譲与税は年々拡大しています。歯止めをかける事が今後の課題でしょう。

 森林環境税には多くの問題点が指摘されています。令和6年4月から徴収が始まりますが、現状のような税金の使い方であるならば必要のない税金です。この点は強く指摘しておきたいと思います。

G.航空機燃料譲与税の譲与基準見直し

 昨年の法改正で譲与割合に係る軽減措置の見直しと譲与割合の変更が見直されましたが、今回は譲与基準の見直しになります。

 変更の譲与割合についても着陸料と騒音世帯数の按分で算出されていましたが、今回はさらに複雑化します。詳細については省令で定めることとなっているため、どのような措置か分かっておりません。
 そもそも航空機燃料譲与税には疑問点があります。一つは財源として本当に必要な財源なのかという問題です。総務省の決算カードの各都道府県の項目を確認していただけると分かるかと思います。例えば令和3年度の決算カードを確認したところ、東京都の地方譲与税率は1.2%です。その1.2%のうち航空機燃料譲与税の構成比は0.2%です。最も割合の高い沖縄県でも地方譲与税全体の0.1%しかありません。仮に財源が必要というのであれば、各自治体で予算の組み換えをおこなうべきであり、肥大化する行政予算の拡大止めるためにもこのような小さな税から廃止していくべきです。

②総括と質問

 今改正案を総括的に見てまいりましたが、多岐に渡るため全体の賛否は困難です。個別事案を考査する必要がありますが、特に着目すべき点は税制の複雑さと際限なく拡大する予算です。今回の調査でいえば固定資産税や航空機燃料譲与税は複雑性がありますし、森林環境税は使途が各地方自治体に委ねられており、総務省は恐らく「自治体に判断を委ねているため」と答弁し、この問題を有耶無耶にするのではないでしょうか。そのため、強く訴えたいのは税制の簡素化譲与税の削減です。国民に広く薄く負担させ、各自治体に譲与し、有効な税金の使い方をしていないのが現状です。このような税制を変えていく事がいま求められていると感じる次第です。

今改正案関連の質問

○航空機燃料譲与税の譲与基準に関しては現行着陸料と騒音世帯数で算出されているが、そもそもなぜこの2点が譲与基準となったのかその経緯の説明をお願いしたい。また、新基準には延べ重量と旅客数を新たな基準として採用しているがその経緯と根拠を説明していただきたい。

○航空機燃料譲与税は地方譲与税のなかでも非常に微小な税額であることは総務省の決算カードがお示ししている通りです。特に利用頻度の多い空港を所有している自治体の歳入構成比をみると1%にも満たないものであり、そのような歳入は予算の組換えで十分可能であるし、そもそも航空機燃料税の譲与の必要自体が疑問である。航空機燃料譲与税の目的は騒音や空港整備に使われるものとして徴収されているが、所管する官庁が騒音対策としてこの税目がどの程度寄与したか、検証したのかお聞きしたい。また、検証したのであればその結果をお聞きしたい。
 
○森林環境譲与税は年々予算規模が拡大しているが、譲与税を交付する所管官庁としてその政策効果を検証しているのかお聞きしたい。検証しているのであればその結果、検証していないのであればなぜ検証しないのかその理由をお聞きしたい。
 
○森林環境譲与税の活用実績を踏まえた上での今改正案がおこなわれたものとの理解ですが、例えば神奈川県小田原市のような実績は森林環境税の趣旨に適合しているのか見解が分かれる事案であると思われます。ここで指摘した小田原市の事案はむしろ校舎の火事などの災害発生を高める事案であるとも考えられるためである。所管官庁として、どのような活用実績を判断材料として今回の譲与基準の変更に至ったのか、根拠をお示しいただきたい。
 
○外形標準課税の適用対象法人について、今改正案は適用対象法人の拡大になると認識しています。日本の法人税はG7各国のなかでも高い税率であるが故、各企業が様々な節税対策を講じた結果、外形標準課税の対象法人が減少したものを思われます。現在、日本の物価は上昇傾向にあり、長いデフレ不況からの脱却の兆しを見せています。このような状況のなか、課税対象法人を拡大する事は民間企業の経済活動にとってマイナスであり、事務コストの拡大にもつながります。岸田首相は国民の所得向上を実現させることを掲げ、物価上昇に連動するよう策を講じると明言されています。しかし外形標準課税の対象法人の拡大は、その逆に向かいような方策でありますが、今回の法改正による景気変動への影響をどのように考えているか見解をお聞きしたい。また、外形標準課税の対象法人拡大が国民の所得向上にどのように資するものと考えているか見解をお聞きしたい。

○住民税の定額減税による各自治体の税収減は国費より補填するという決定であるが、他の税目による税負担増または国債発行により賄うことはないのか。大臣または総理より答弁を求めたい。

ご拝読ありがとうございました。

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