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続・サクラダイの産卵(まとめ)

すでにガイド会「世界の海ブログ」で、この件については触れましたので、ここでは焼き直しになりますが、まだ賞味期限内の話なので、お付き合いください(画像も使い回しです)。

見渡す限りサクラダイのペア

三保真崎におけるサクラダイの産卵場所が変化した点については、ガイド会のブログだけでなく、その他のSNSでも発信している通りです。観察を始めて30年ほど経過しましたが、場所の移動は初めての経験であったため、その変化に気付くのが遅くなってしまいました。

アプローチを開始する初動

例年産卵が行われている場所に、全くサクラダイが居なければ、もっと早く気が付いたのですが、それらしい素振りをするペアもいるし、これから開始するのではという期待値しかそこにはありませんでした。しかしながら、水温が高いとは言え、1ヶ月半も遅いことは考えにくく、メスのお腹の張り具合やオスの婚姻色の雰囲気を見ても産卵が行われていることは間違いがないのです。

耳石に「ふぅっ」オスのOMGな表情

基本的に引き潮のタイミングで行われることの多い産卵ですが、ピーク時には潮が上げてようが下げてようが、訳が分からないタイミングで始まることもあります。私はそのタイミングを「天使との山分け」と呼んで、挑戦を継続するものに自然が与えてくれるご褒美だと思っています。

ペアリングするとオスはメスを上方へ押し上げます

ペアリングするとオスはメスの斜め下に位置して、左右ジグザグに動きながら上昇を促します。

上昇が始まればOK!の証拠

右へ左への動きは、上昇とともに間隔が短くなり、折り返しのタイミングが早くなります。

ペアリングから約2mほど上昇した状態

放卵・放精は予め決めていたかのようにジグザグの終着点で行われます。

放卵・放精の瞬間

メスの産卵口が開き、オスは放精の瞬間に口を開きます。
そして、その後に驚くことが起きます。
オスはこの体勢から振り向き状に、あろうことか浮遊している卵を食べるのです。もちろん、全部ではなく2口ほど「パク、パク」って感じで。
初めてこの事実に気がついた時は、はぁ〜何しちゃってくれてんのさぁ〜って思いました。思ってすぐに「そう言えば、鮎も産卵した卵をオスが食べていたなぁ〜」と回想しました。
オスもメスも一度に放精や放卵を終わらせる訳ではありません。数回に分けて、より強いオスとより子孫を残せそうなメスとペアリングを繰り返すのです。その際、オスはアタックが失敗に終わるケースも多いので、より体力を必要とします。

メスが嫌がったパターン

ペアリングして産卵に至るケースは、時期や時間帯、その時のコンディションによって変化が大きいのですが、多く見積もっても30%程度だと思います。産卵される卵は、これも状況によりますが、少ないと50個、多くても100には達していないと思います。
他の魚類もいろいろな産卵戦略がありますが、サクラダイの繁殖行動は観察がし易く、行動生態が理解できれば、ここに記述してあるようなことは全て見ることが可能です。
また、雌性先熟からの性転換と群れ行動の社会性、雌だけの少グループでは完全な性転換ができないことなど、面白い観察もしています。
これまでで一番驚いたのは、一斉産卵はだいたい10〜15分程続き、一頻りすると終わるものだと思っていましたが、実はメスはその周辺に数グループがいて、入れ替え行動が行われ、そのグループ数だけ一斉産卵が行われていることが分かった時です。
あぁ産卵も終わりかぁ〜じゃぁ〜僕も帰ろうかぁなぁ〜と思って背を向ける瞬間に目の端の方でメスの妙な動きを感じました。振り返るとそれまでそこにいたメスは姿を消し、新たなメスの集団が加入して来て、再び狂ったような集団産卵が始まったのでした。さすがに、その時はその事実だけを確認して、エキジットしました(空気も無限圧潜水時間も僅かであったため)が、後日その記憶をもとに、備えて観察していると一斉産卵は複数回繰り返されることが分かりました。
なぜ、今回このようにまとめようかと思ったのは、今シーズンのサクラダイの観察に失敗があったからに他なりません。これまでも多くのトライ&エラーを繰り返して来ましたが、それは前向きに失敗を重ね成功に近づくための愚直な唯一の方法だと思っていたからです。
今回の失敗はそうではなかった。
それが、天使がいつまでたっても山分けを施さなかった理由だと思います。

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