浦和vsガンバのPKになりかけた場面のあれこれ

サッカーはボールに向かってプレーするのが原則

26日の浦和レッズとガンバ大阪のゲームで、試合終了間際に1点を追う浦和にPKが与えられた場面がありました。最終的にはビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の確認で、ファウルの地点がペナルティーエリアわずか外だったということでFKに修正されましたが、あのようなファウルは選手もよく理解していないことが多くあります。

試合の状況を整理すると、ガンバが1点をリードした状態で浦和は空中戦に強いDFの犬飼智也選手を前に入れて、パワープレーを狙っています。右サイドの浅い位置からファーサイドに向かってアーリークロスが入り、犬飼選手とガンバの小野瀬康介選手が接触したプレーを飯田淳平レフェリーはファウルと判定しました。

両選手が接触した瞬間ボールはかなり上空にあり、さらにボールは接触地点からかなり遠い場所に落下したので、このような時に「その接触はプレーに影響がないじゃないか」という意見を多く聞きますが、接触に至る過程で両者がどのようなコース取りをしていたかがとても重要です。

ボールに2人の選手が絡む過程で接触があるもので、6つのパターンに分けて考えてみましょう。

1のように、両者がボールに向かって五分五分の競り合いをしているならば、どちらかが何か危険なぶつかり方をしていない限りはノーマルなコンタクトとしてノーファウルになるでしょう。

2ように、青のプレーイングディスタンス内にボールがある時に、赤が青の体に突っ込めば、赤のファウルです。

3のように、青が多少は赤の方に回り込むような動きをしたとしても、もともと青の方がボールに近い位置から、さらにボールに向けて移動しながら状況をコントロールしている場面で赤が突っ込めば、これも赤のファウルです。

4のように、逆を突かれるとか、後ろの選手に任せるなど青の選手がプレーする意思がなく立っている(かなり遅いスピードになっている)ところに、赤が勢いをつけて避けようともせずにぶつかるのはダメなので、これも赤のファウルです。

5のように、青の方がボールに近いながら双方が追いかけている時、ボールの遠くで青が急ブレーキをかけて赤が避けられずに突っ込めば、これは意図的に接触を誘発したとして青のファウルですね。

6のように、赤がボールに向かって走っている時に青がボールに向かわず赤に向かって突っ込んで接触すれば、これは青のファウルです。

整理した上で、接触があった場面について

ここまでの整理は割と納得してもらえると思うんですが、では該当するプレーの状況を見てましょう。

犬飼選手は視線を斜め上、つまりボールに向けながらかなり直線的にボールが落下してくるエリアに向かって走っています。一方で小野瀬選手は、落下点の方向ではなくほぼ止まった状態から、少し犬飼選手に向けた動きをした上で接触しています。

先ほどの整理で言うと、5と6のどちらの要素もあるようなプレーをしていますから、これは小野瀬選手のファウルになります。

これらに「ぶつかり方」は基本的に関係ありません。そもそも「肩で当たればOK」なんてことは競技規則のどこにも書かれていないので、どこから生まれたローカルルールなのかは分かりません。その「ぶつかり方」が問われるのは基本的に1の場合で、互いにボールに向かって争う中でも危険なやり方、ズルいやり方はダメですよということになります。

今回の小野瀬選手も肩に手を当てて「ぶつかり方」の主張をしていましたが、そもそもボールと関係なく相手の方向に動いてぶつかりにいく行為がダメということです。

なぜ必要のない接触をしようとするのか

このようなファーサイドに大きく抜けてしまうようなクロスに対して、守備側が不必要なアクションで攻撃側にぶつかってPKという場面は、年に何回かは見ることがあります。

今回のシーンを見ても、本当に影響がないほど遠くまでボールが飛んでいっていると判断しているなら、相手がボールを追いかけようと何しようと放っておけばいいだけの話です。わざわざ相手にぶつかりにいくということは、何かしらの意図や暴力性があるものと受け取られるのは自然でしょう。仮に本能的なものだったとしても、相手が走ることで何らかゴールに対する危険性を認識してプレーを制限しにいって接触し、「影響がなかったから良いじゃないか」は、ちょっと無理があるのではないでしょうか。

このような接触では、ボールに向かって走っている選手がカウンター方向からの接触を受けることが多いので、見た目の「ぶつかり方」よりも大きなダメージになることもあります。日本代表の試合でも、この要素に関する認識のなさでPKを与えた場面を見たことがありますから、このルールに関してはもっと広く認識された方が良いと思っています。

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