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特殊慰安施設協会(RAA)と赤線青線【備忘録】


調べたきっかけ:『絡新婦の理|京極夏彦』の内容から


◻︎江戸時代の公娼(遊郭)

江戸の吉原、京の島原、大阪の新地などには、公娼(公に営業を許された娼婦)を塀などの中に集めて作った遊郭があった。遊郭以外にも公娼が集まる場所があった。
※一方で市中にひそむ私娼を厳しく取り締まった。
※性病が蔓延し、一時は公娼の3割が梅毒であったらしい。


◻︎明治時代

明治時代になり、遊郭の需要はさらに増した。
しかし、近代化する社会において、遊郭で行われる人身売買は問題であった。
1872年。芸妓・娼妓の解放令(人身売買ヲ禁シ諸奉公人年限ヲ定メ芸娼妓ヲ開放シ之ニ付テノ貸借訴訟ハ取上ケスノ件)が発布。公式には遊郭は解体されたことになる。しかし、売春を斡旋していた店は「貸座敷」などと名前を変え、遊郭廃止に伴って路頭に迷った遊女を吸収し、売春業を継続する。


◻︎特殊慰安施設協会(RAA)

第二次世界大戦後「もしかしたら多発するかもしれない連合軍による婦女暴行事件」を防ぐために、日本政府の援助のもと民間の慰安所が作られた。
これが特殊慰安施設協会(RAA)である。

※管轄は警視庁であった。
※戦時中の慰安所と違うのは「一般女性に対して求人をした」ということである。人員の確保が相当大変だったようで、戦中戦前に違法売春で捕まった女性を慰安婦としてスカウトしていたりもしていたらしい。

「国家的事業ニ挺身セントスル大和撫子ノ奮起ヲ確ム」のような新聞広告が毎日のように出稿され、最大で5万5000人の売春婦が集まったという。

*RAAは東京を管轄とする組織である。東京以外の地域では、その地域を管轄する警察機関の管理のもと、慰安所が運営されていた。
※慰安所指定第一号は1945年8月27日に認可。大森海岸の料亭「小町園」であった。
※当時の娼婦の料金は約8セントだった。

しかし、1946年3月26日にオフリミッツ令(進駐軍ノ淫売窟立入禁止ニ関スル件)が発令し、RAA施設は閉鎖されることになる。

※この命令はGHQによるものだとされているが、真偽は微妙である。そもそもRAAは民間企業であり、民間企業に対してGHQが直接命令をしたとは考えづらい。一説にはGHQ(といっても米太平洋陸軍の方)は管理下の部隊へRAAに通うことを禁止し、その影響でRAAは自主的に廃業したとされる。こっちの方がしっくりくる。
※ちなみにRAAが存在していた時期の強姦事件と婦女暴行の数は1日平均数40件で、RAA廃止直後の強姦事件と婦女暴行の数は1日平均数で330件であった。

同年(というか少し前の1月)、GHQにより「公娼廃止の指令」が出される。これを受けて1947年1月14日に「婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令」が出され、公娼制度は名目的には廃止された。



◻︎赤線・青線

赤線
→GHQによる公娼廃止指令(1946年)から1958年に売春防止法が発布されるまでの間、半ば公認で売春が行われていた地域の呼称。
警察は、売春を目的とする特殊飲食店の集まっていた地域を赤い線で囲んでいたらしく、それが転じて「赤線」という呼び名が生まれたとされている。
※つまり、事実上の認可である。

青線
→GHQによる公娼廃止指令(1946年)から1958年に売春防止法が発布されるまでの間、非合法で売春が行われていた地域の呼称。
赤線と同様、警察が非合法に売春を行う店舗がある地域を青線で囲ったことが、名称の由来になっている。
特殊飲食店としての届出はなく、多くの場合は飲み屋として営業をしていた。(一階がBARで二階が売春の場所のような)
赤線に比べて、性病の率が圧倒的に高かったという。

その後
→1958年の売春防止法施行後も、非合法な団体が隠れて売春を行うケースは後を絶えなかったが、絶対量は確実に減ったものと思われる。
しかし「赤線」「青線」という言葉だけは名残として残り、私の地元にも「赤線」と呼ばれる地域が今も残っている。


◻︎赤線・青線とRAAの関係

一般に「RAAは赤線の前身である」と言われることが多いが、この説は正直微妙である。
確かに赤線と青線が明確に現れるようになったのは1946年の公娼廃止指令発布以降であり、これはRAAが解体された時期と被る。そして、RAAの解体によって職を失った女性たちが赤線や青線に流れたということもあるだろう。
しかし、公娼廃止指令発布以前から各地で売春行為が行われていた地域があったのは確かであり、それらはRAAと並行して運営されていた。また前述の通り、RAAは基本的に東京においての慰安所であり、他の地域ではまた別の慰安所が警察管理のもと運用されていた。
よって、RAAの存在が赤線青線の成立に影響しているのは確かだが、それは部分的な影響であって「RAAは赤線の前身である」とまでは言えないように思う。

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