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永劫回帰|ニーチェ 【君のための哲学#14】

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☆ちょっと長い前書き
将来的に『君のための哲学(仮題)』という本を書く予定です。
数ある哲学の中から「生きるためのヒントになるような要素」だけを思い切って抜き出し、万人にわかるような形で情報をまとめたような内容を想定しています。本シリーズではその本の草稿的な内容を公開します。これによって、継続的な執筆モチベーションが生まれるのと、皆様からの生のご意見をいただけることを期待しています。見切り発車なので、穏やかな目で見守りつつ、何かご意見があればコメントなどでご遠慮なく連絡ください!
*選定する哲学者の時代は順不同です。
*普段の発信よりも意識していろんな部分を端折ります。あらかじめご了承ください。



永劫回帰


フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(1844年-1900年)はドイツ(プロイセン王国)出身の哲学者だ。実存主義の代表者として知られる彼は、その後の哲学者たちに多様で多大な影響を与えた。同時代の哲学者としては一番影響力を持つ人物ではなかろうか。
ニーチェは絶対的な真理を否定する。世界には解釈があるのみであり、一義的な真理は存在しない。世界はどのようにも解釈される可能性を持っており、その意味で、世界には無数の意味がある。
人々は力への意志を持っている。力への意志は、自己を維持するために世界の解釈を行う。強者は自分自身を善とし弱者を悪とする。これに対して弱者は世界を逆転して解釈し、強者を悪として自己を正当化する。これが宗教におけるルサンチマンである。
彼は「神は死んだ」と言う。キリスト教は直線型の世界観を提示する。創世記から始まる一直線の世界において、あるいは人生という誕生から死への一直線の道において、彼らはその最後に救いを求めようとする。そしてその裏には「(神における)世界の真実」「(真実を前提にした)世界の目的」が存在するのだ。しかし、ニーチェはこれを否定する。世界には真実目的もない。これまで信じられてきた最高価値は紛い物である。信じられてきた最高価値が消失した世界は虚無である。その世界には「人間が生きるべき決められた目的」はない。ニーチェはこれを「神は死んだ」と表現したのだ。それは、宗教的信条や哲学的理性の権威が失墜したことの宣言でもあった。


君のための「永劫回帰」


私たちは虚無の世界をどう生きれば良いのか。
ニーチェに言わせれば、自身の外に大きな目的を想定し、その目的に救いを求めるのは虚構的な解釈でしかない。特に宗教の力が弱まった近代〜現代に関しては、このような生き方を選択するのが難しくなってしまった。
私たちはなんの目的もなくこの世界に生まれた虚無の存在である。何をしても良いが、何をしても本質的に無意味である。
しかし彼は「だからこそ世界のみを考えるべきだ」と言う。
虚無の世界を生き抜くためには強靭なが必要である。その力とは何か。ニーチェはそれを説明するために永劫回帰という形式を採用する。
あなたには今何らかの環境が用意されている。周りにはどんな人がいて、どんな仕事をしていて、これまでにどんな経験をして、たった今どんな悩みを持っていて・・・こうした人生における経験が、仮に無限に繰り返されると考える(永劫回帰)。そうしたとき、あなたはその世界に対してどう思うだろうか。それが繰り返されると確定しているなら「何をやっても無駄」だと感じないだろうか。今この瞬間を精一杯生きようと思えないのではないだろうか。まさに虚無である。
しかしニーチェは「永劫回帰を受け入れるのが超人である」と言う。永遠に繰り返される世界においては、到達すべき究極的な目標が存在しない。わたしたちは、そのような無目的な世界を生きているのかもしれない。それでも世界を肯定し受け入れる。それこそが最高の力への意志であるとニーチェは考えた。
世界には結局なんの意味がないとしても。自分の経験は無限の繰り返しの一部でしかないとしても。それでもその事実を知った上で「よし。やったるか」と全部を肯定して立ち上がる強さ。ニーチェが求めた強さは、そんな内的な自己の超克である。
彼の主張は、弁証法的な進歩を否定するという意味で私たちの直感から少し外れている。それに「無限に繰り返される人生を、それでも肯定して生きていく」という姿勢は、そう簡単に得られるものではない。
とはいえ、人生には辛いことがたくさんあり、何の意味も見出せなくなってしまうことも少なくない。そんなとき、ニーチェにおける永劫回帰の思想は、私たちの背中を押してくれるのではないか。
そこに「意味」を見出すよりも「もうなんか知らんが生きたれ!」と、環境を全肯定して前に進んでしまう方がしっくりくることもあるだろう。そのように、人生の無意味さすら肯定して前に進む姿は、ニーチェにおける超人そのものである。

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