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#2 町の発展のために指揮を執る自治体のナンバー2

町の将来に対する危惧

東京からほど近い、とある自治体の副長からお呼びがかかった。

その町では約20年に渡り人口が減り続け、高齢化が進み、新しい産業も生まれていない。残念ながら、日本のあちこちで聞くような課題をご多分に漏れずこの町も抱えている。

地域活性化を目指し、自治体のトップが号令をかけて何とか新たな試みを始めても、各部署が足並み揃えて動き出すのはなかなか難しい。逆に、現場担当者の熱量が高くても、推進するためのヒト・モノ・カネが集まらずに中途半端に終わってしまうことも少なくない。

成功体験がうまく積み重ねられず、何から手を付ければいいかわからなくなり、チャレンジする意欲が削がれていってしまう。失礼かもしれないが、この町にも少なからずそういった傾向があるように見えた。

副長が町の現状をどのように見ているかはもちろん僕が聞けるようなことではないが、とにかく僕がこの町で行っている事業や今後のビジョンについて、役場職員の方々に向けて話をしてほしいとのことだった。


素晴らしい素材を世の中に伝える人

この町にはもちろん良いところもある。
漁業や農業、食品加工業が根付いていることだ。住民の方々は海産物や農産物のポテンシャルにあまり気付いてなさそうだが、素晴らしい素材がたしかにある。足りてないのは、その素晴らしさを世の中に伝える人だと思う。

素直に僕が今この町で欲していることを伝えてみた。
「一緒に旗を振ってくれる人を探してます」

僕のこの言葉を皮切りに、◯◯という組合があってそこに勢いのある方がいるとか、商工会には△△という若手の団体がいるから連携できるとか、今から□□事業をやってる方が来るから紹介するとか、とにかく色んなアイディアをくださった。僕みたいな若僧に、1時間以上もかけて。

話してるうちに気付いたことがある。
物腰はすごく柔らかい。口調も穏やかで、偉そうに話すことも一切ないし、会話の中で直接的なメッセージを強く提示することもない。しかし、様々なお話をしてくださる裏には、「自分にできることなら何だって協力する!」と言わんばかりの強い意志を感じた。下らないプライドなんか必要ないのだろう。カッコいい大人だ。


この町では、この数年で保育園や小学校がどんどん閉園している。何も対策を講じなければ、人口は減る一方で、町の税収は右肩下がり。コストのかかる住民へのサービスは削られていき、住民は他の町へと引っ越していく。

僕ですらこれぐらいの想像がつくんだから、自治体のトップの方々はより具体的に、より確信をもって、町の悲しい未来を想像してしまっているに違いない。(僕の勝手な妄想ですが、、、)

彼らの肩にどんな重圧がかかっているかは想像してもしきれないが、もし自分がそういう町を経営していく立場にいたとしたら、まず何をするだろうか。


ポジティブなチャレンジに変換する -前方斜め上に飛ばす-

「この町の素材は食のプロも認めてます!」(安易に期待を持たせてると批判されるかもしれないが、希望がないとスタートさえ切れない)

事実、この町の素材を使った商品開発の試作をしてた際、フード関係の方々がその美味しさを評価してくださって、なぜか僕まで自慢気になった記憶がある。(もちろん僕が調理したわけではないw)


「この町には素晴らしい素材があります。そして僕らもご縁あってこの町で事業をスタートさせていただくことができ、少ないながら雇用を生み出すことができました。働いてくださってる方々は、この新しい取り組みにワクワクしてくれてます。あとは、仲間を増やしていくだけじゃないですか!」

僕らみたいに町の外から来た事業者、地場産業の担い手である地元企業、一緒に働いてくださる住民の方々。それでも十分じゃない。

「事業主体が僕らだとしても、この取り組みの中心には役所がいるべきだと僕は思ってます。役所の中でも僕らの取り組みに賛同していただける仲間をどんどん増やしたいので、僕の話でよければいくらでもお話しさせてください!」

副長の顔がほころんだ。
「こうやって話してると、何だか楽しくなっちゃいますね」


この町には漁業と農業しかないとよく言われるが、逆に言うと、この町で漁業と農業だけは何百年も生き残ってきたのだ。

跡継ぎがいないとか、安い輸入品に太刀打ちできないとか不安はあるかもしれない。でも、数百年の歴史を持つこの町の自然の恵みは、僕らが考えてるよりずっと強靭な力を持っていると思う。

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