見出し画像

一級建築士を一発合格するために役立ったこと(製図編)

私が一級建築士に一発合格した経験について書いています。
前回は学科試験に挑むにあたって、生活を見直して時間確保をし、気持ちを整理するために娯楽、理解、成績を気にすることをやめたとご紹介しました。

今回は、製図試験に挑むにあたって役に立ったことについて書きたいと思います。
学科試験が7月中旬、その合格発表が9月上旬、製図試験が10月中旬というスケジュールになっていますが、実は私9月上旬のタイミングで交通事故にあってしまいました。
自転車で走っている所、軽自動車に左折巻き込みでひかれて、低速だったおかげで骨折は免れましたが、頚椎捻挫で3週間まともに図面を描くことができませんでした。
それでも合格できたのには、理由があります。

1.資格学校へ行った

まず一つ目は一番手っ取り早い資格学校です。
学科はなんとかなっても、製図は学校に通わないと難しいとよく言われています。
理由は言わずもがなですが、学生時代からパソコンを使ってCADで図面を描いている人たちが、試験だけ手描きで描くなんて無理に決まっています。
時代錯誤の試験と言われ続けていて、今後改正されるだろうと常々言われていますが、どのソフトにする?パソコンは持ち込み?持ち込みの場合のカンニング防止策は?など導入に向けての課題は山積みです。
実務にあっていないツールを使うことから、製図試験こそ試験のための勉強になってしまいます。
学校に行けば試験のための勉強方法を手っ取り早く教えてくれます。
例えば、蛍光ペンを持ち込んで課題文章を色分けして読む方法、試験中の工程毎の目安時間、記述部分の一般的な回答例など試験対策には最適な方法です。
また自分以外の試験を受ける人の使っている道具を知ることができるのは、大きなメリットだと思いました。
シャープペンシル1本とっても、何ミリのものが効率が良いのか自分一人で分析していても時間が勿体無いだけです。
その点、資格学校には何名も人がいますし、2年目以降の経験者もいます。
良いと思うことは真似してみたり、本人に尋ねることができます。

2.コンペ担当をしていたこと

一昔前の製図試験はただ図面を描くだけだったんですが、10年程前から設計意図を書く記述問題が出題されるようになりました。
ゾーニングや構造計画、空調設備の採用理由など、意匠、構造、設備の設計意図を各2〜3問ずつ、200〜400字書くことが求められます。
それを6時間30分の試験時間の中で、1時間で書き上げることが推奨されていたように覚えています。
建築の仕事は多岐に渡りますが、設計図を描いていても、現場監理していても、確認申請を出すにしても、文章を書くことってそう多くありません。
恐らく唯一まとまって文章を書く業務が、コンペを担当することです。
コンペではイメージパース、計画図の他に文章で設計意図を書くことが求められます。
なぜそんな配置にしたか、その構造を採用した合理性、省エネになる設備の採用理由など、提案書にびっしりと考えたことを書きます。
学生時代の課題やコンペの提案書は適度な余白できれいに見せるイメージでしたが、企業が挑むコンペの提案書には余白は全くありません。
それほど埋めなければいけないのです、文章を書くトレーニングになりました。
またエスキスの考え方にも役に立ちました。
日常業務において、一級建築士試験の課題に出るような建築のエスキスに携わるようなことはそう多くありません。
また日常業務では明確にまとめられた要望書が出てきて、その通りまとめることが評価される場面はありません。
なぜならヒアリングし、提案し、要望を明確化し、また提案しの繰り返しで、お客さんの要望を明確化するのも設計業務の一連の活動だからです。
その点コンペでは明確な要望書があり、その要望をいかに叶えたかが評価されるため、要望整理やその達成度をセルフチェックできる状況にあり、一級建築士の試験とリンクする部分があります。
企業規模にもよりますが、私が勤めていたような地方都市の組織事務所の場合、日常業務をしながらコンペが出たら若手が夜な夜な頑張って対応する苦行になりがちですが、一級建築士試験の練習にもなると思って取り組んで見ると少し気が楽になるかもしれません。

3.事故で書けなかった時期があったこと

これは真似すべきことではありません(笑)
前述の通り、試験1ヶ月半前に交通事故に遭い、頚椎捻挫で3週間図面を描くことができなかったんですが、そのおかげで「落ちても加害者のせい!」というメンタルで挑めたことが大きかったです。
この逆境を悲観するのではなく、起きてしまったことは仕方ないと受け入れ、少しでも目標に対するモチベーションに切り替える気持ちの作り方が大切です。
また6時間30分という試験時間の中で描き切れるようになるのは、試験の1ヶ月前ぐらいです。
描き切れるようになった後、質をあげようとしちゃってスランプに陥る人が一定数います。
描けない頃は時間内に終わらせることが目標になるんですが、きれいな図面の方が評価が高いらしいとか、より精度の高いエスキスをしようとかを意識してしまい、時間内に描けないようになってしまうんです。
そのスランプ期を脱して、試験に挑めた人が合格するんですが、私にはスランプ期がありませんでした。
描き切れるようになった頃にもう試験だったので、描き終えればそれでいっかという気軽な気持ちで試験に挑めたことがよかったです。
私は試験のエスキスでトイレを設け忘れて、製図し始めてからそれに気付いて、面積が指定されている要望室の大きさを半分にしてトイレを設けましたが、それでも合格です。
きっと無いと不合格だったと思います。
必要な部屋がなければ0点、要望通りなら100点、あるけど規模が小さい場合は減点という扱いです。
0点より減点の方がまだ点数がもらえるし、逆に一部減点になるところがあったとしても他の部分が要望通りの100点であれば合格なんです。
当然、完璧に描けたほうがいいですが、もしもの時に減点でやり過ごしても合格した人がいたってことを思い出すことで、試験中の動揺を緩和できると思います。
資格試験の敵は自分自身です。
自分に打ち勝つには、不安を払拭してポジティブな気持ちで挑むことが一番です。

4.一級建築士の呪縛を逃れられない

建築士にとって「足の裏のご飯粒」と言われているのが一級建築士です。
取っても食えないが、取らないと気持ち悪いものです。
正直、企業に雇用されていれば建築士の資格が無くても設計業務に従事できます。
そう、建築士の資格が無くても仕事できちゃうんです。
それでも取った方が良い理由は、独立を視野に入れている場合の他に、資格手当で給料が上がったり、お客さんの信頼度が変わったり、転職時に有利になったりとメリットは沢山あります。
私の場合は、前職で合格祝い金をもらい、お客さんからただの若手と舐められることがなくなり、有資格者であることが評価されてスムーズに転職することができ、資格の恩恵をしっかりと受けました。
また設計の仕事をしていると「一級建築士いつ取るの?」という質問から逃れることはできません。
設計の仕事をするにあたってのメジャーな資格が一級建築士だから、仕事の話になったら必ずその話題になります。
場合によっては合コンで職業を聞かれて建築士と答えた場合、「一級建築士とかなんですか?」なんてことを言われたりします。
そこで違いますなんて格好悪くて言いたく無いですよね。
やっぱり設計の仕事に従事している限り、一級建築士の呪縛からは逃れることができません。
であれば、いち早く取るのが最善策です。
この一年我慢すれば、呪縛から逃れられ、給料も上がって、遊ぶ時間も確保できると思えば、何としてもこの一年で取るという気持ちになるはずです。
私がその強い気持ちこそ合格への最善策だと思っています。
ちなみにいち早く独立したい方は、二級建築士から取りましょう。
設計事務所を開設する条件に、管理建築士の講習を受けることが必要です。
これは建築士の資格取得後、3年の実務経験を積んだ方に講習資格が与えられます。
そのため受験資格のハードルが低い二級建築士を取って、3年勤めてから管理建築士講習を受けて、その間に一級建築士を取るのが最も効率良く一級建築士事務所を開設できる方法です。
これも数年前の法改正で変わったことで、昔は建築士の資格取得後すぐに管理建築士講習を受けて独立できました。
逆に現在それほど建築士資格にまつわる法律が変わっている時期と言えます。
今後は大学在学中に受験できて、その後実務経験後に免許交付といった流れに変わるといった話もあります。
個人的には、学生時代に建築学といった思想的なことを学び、設計構想を練る基礎を築いて、実務に繋がる試験は従来通りの社会人になってからを推奨したい派ですが、団塊の世代の有資格者がどっといなくなることを考えると有資格者を増やさなければいけない時期なんでしょう。
とにかく受験資格の要件も今後変更の可能性が高いため、毎年の確認が必要です。

<追記>
現在、私はこうして苦労して取得した一級建築士の資格を活かして、webマーケティング会社に転職しました。
転職先は、住宅情報サイトを運営しており、その内容監修やサービス拡充のために在籍しています。
webマーケティングという異業種を理解するために、自身のリノベーション経験を記したブログ運営に挑戦しています。
是非、一度ご覧ください。


建築と写真で素敵な生活のサポートをしたい