PRのKPIってどうしてる? 〜長年感じていたKPI設定のモヤモヤについて〜

※この記事は、「広報LT大会(Lightning Text) #PRLT Advent Calendar 2018」の1記事として書かせていただきました。

前職のプレスリリース配信サービス時代は、クライアントから相談されることが多く、現在は自分自身が直面している課題が「PRのKPI問題」です。
今回は、このKPIについて抱えていたモヤモヤと、その解決案についてまとめています。

PRのKPI設定が難しい理由

そもそもPRとはステークホルダーとの(様々な意味で)理想的な関係を構築することが目的です。例えば、「ユーザーから日本で最も◯◯というイメージを持たれたい」などの長期目標があり、PRの実務ではその長期目標にたどり着くためのコミュニケーションをデザインしていきます。
PRの長期目標は定性、または定量であっても計測が難しいことが多く、これがKPI設定を困難にしています。

KPI設定に感じていたモヤモヤ

前職の時から多くの企業のPR/広報担当者が設定していたKPIに対してぼんやりとしたモヤモヤを感じていました。
先日、PR/広報担当者を集めて自社のKPIについて共有し合うイベントを行い、このモヤモヤが明瞭になりました。

<KPIすっとばしすぎ問題>
KPI (Key Performance Indicator) は、KGI (Key Goal Indicator ≒ 長期目標)を達成するための過程を計測・評価する中間指標のことです。
とても簡単に言うと、長期目標達成のための鍵 (Key) になる指標です。

例えば、「メディアへのアプローチ数」や「プレスリリースの送信数」をKPIとした場合、この数字が増加することが「ユーザーから日本で最も◯◯というイメージを持たれたい」というKGIには直接的に作用することはありません。
あまりにもKGIを構成する要素からブレイクダウンしすぎて、間にあるはずの要素を無視してしまっているからです。

「メディアへのアプローチ数」を増やしても記事にならなければ (本来達成したかったかもしれない) 認知は広がりませんし、「プレスリリースの送信数」を増やしても同様です。
KPIとKGIの間が空きすぎることは、いつの間にか本来進みたかった方向性を捻じ曲げてしまうことにもなりかねません。
きちんと、間にある目標(後述します)を考慮しなければいけません。

もちろん上記のようなアクションの量を追っていくことは大事です。しかしメディアへのアプローチ以外にも、KGIに近づく方法は沢山あります。KPIがブレイクダウンされすぎると、それに固執することで他の手法を排除してしまうことにもなりかねません。

※大人数のプロジェクトなどでは、役割分担を明確にするために個別KPIをより細かく分解していくのも有効です

<レイヤーバラバラ問題>
これは複数のKPIを設定している時に起こりがちなモヤモヤです。「広告換算値」と「イベント開催数」をKPIに設定しているケースなどがこのモヤモヤにあたります。

「広告換算値」はプレスリリースやメディアアプローチなどの行動の結果指標なのに、「イベント開催数」は行動指標です。レイヤーを揃えるならば、「イベント開催数」は「イベントの参加人数」や「イベントを通して◯◯してくれた人数」などにするべきです。(が、これも少し違うと思うので後述します)

このようにしてレイヤーが異なるKPIを設定すること自体は、状況によっては悪いとは思っていません。しかし、多くのケースではレイヤーが異なる複数のKPIを設定している場合には、指標をブレイクダウンしすぎていることが多いように感じています。

<KPIって目標?>
KPIはしばしば目標と同義で使われますが、これがKPI設定をややこしくしている原因でもあります。目標とKPIには下記のような違いがあります。

これからのKPI設定は

一般的には、KPIの達成度を定期的に測定し、課題や改善策を抽出して改善していきます。端的にいえば、「メディアへのアプローチ数」などは、指標を構成する一要素でしかなくKPIにはふさわしくないと私は考えています。

こういった一要素についてはKPIという指標にするにはあまりにも粒度が細かく、日々の振り返りの中で問題を抽出して改善のアクションを行っていけばよいのではないでしょうか。

また、目標(定性)とKPI(定量)をうまく使い分けることでKGIから方向性をぶらさないようにしていくべきだと思っています。

具体的にはこうします

モヤモヤの明瞭化を経て、今後のKPI設定は以下のように設定しようと考えています。

① KGIからブレイクダウンした定性的な目標を設定
 → 例: KGI = ◯◯に、日本一のHR TECH企業というイメージを持たれる
     目標= ◯◯に、HR業界の中で最も優れた機械学習技術を扱っているというイメージを持たれる

② 目標に則したKPIを設定
 →例: 現在、目標のポジションに座している株式会社◯◯よりも高度な内容のコンテンツを◯◯人に届ける(伝えられた人数など)

③ KPIに則した要素を洗い出し、定点観測する
 →例: メディア露出数(想定UU)、オウンドメディア(想定UU)etc......

最後に

KPIはKGIに適正に進むための指標でしかありません。でも、正しく進んでいるか確認するための指針でもあります。
PRのKGIは遠くにぼんやりと存在していることが多いため、上位・下位の指標を照らし合わせて、道を逸れていないか、同じ場所をぐるぐる回っていないか確認して着実に進んでいきたいものです。

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