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妄想SF

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記事一覧

妄想SF5 『ナイトメア』

「夢治療」という言葉が普及して間もない頃。自分のみたい「夢」を観せられる技術。「夢」に介入し、ポジティブな「夢」を観せることで鬱などの精神疾患の治療法として開発された技術である。

「夢治療」は精神に与える影響の大きさから、専門医のみに許された技術だ。「夢」は論理的に飛躍していようが、観ている者は疑問を感じない。また、起きたらだいたいのことは忘れてしまう。治療にはただリアルな「夢」をみせればいいわ

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【妄想SF4 ネオ・メタボリズム】

2043年。自動運転が現実化してからというもの、都市のインフラはそれに応じて進化し、自走可能で最小限度なインフラを搭載した「Capsule」と常設されて水道下水電気など提供する「Bunch」、ぶどうの「実」と「房」のような形のストラクチャーに集約されていた。これを提供するのはいままで「石油メジャー」や「電力会社」、「ガス会社」、「自動車会社」を中心として統合・合併を繰り返した「エネルギー・メジャー

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【妄想SF3】デッドメディアの可能性

令和24年、ゲノム編集の技術により予防医学が発達。人は老衰・殺人・自殺以外でほとんど死ななくなった。ただし金持ち以外は。

そんな中、老衰で死んだ一人の男性。孤独死を果たした。高度高齢化社会にとって、孤独死は珍しくはない。昔と違って個人情報は電子化され、身元確認も家族との連絡もオンラインですぐにできるようになった。
ところが、この男性は個人情報がオンラインに登録されていない。「身元不明」この時代に

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【妄想SF2】迷わない人

2040年、人は高度なナビゲーションシステムとAI技術により迷わなくなった。拡張現実により、行きたい場所が瞬時に検索され、ナビゲートされる。

自動運転技術も発達した。ドローン自動航行による貨物輸送がはじめに許可されたのは、人的被害の極めて低い河川上の空間であった。長距離輸送は車全盛であった近代から、徐々に河川沿いに機能・人口が移動し、特に船輸送が盛んであった古い時代の港町が活気を取り戻す。

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【妄想SF】アイデンティティ

2032年。問題になっている独自経済圏マネー顧客評価の対策にあたる主人公の財務省官僚の渡。この国では経済政策に失敗し、リアルマネーがハイパーインフレを起こして機能しなくなった。メガバンク、地方銀行、大手ITメガベンチャー、SNS運営会社による電子マネーが群雄割拠している中、ある電子マネーが世界を席巻しつつあった。開発者は不明。だがその他の追随を許さないアイデンティティ情報の分析・活用AIとセキュリ

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