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3/15 18:52 南京玉すだれの前髪

前髪がスダレみたいになっている。
束感といい、ツヤ感といい……
いや。クセ毛だから南京玉、をつけたほうがいいかもしれない。
朝のスキンケア後に対策しなかったからこうなりました。
パウダーはたいたりカーラーで髪を留めておけば、こんなことにはならなかった。
平安時代なら艶やかな髪で一世を風靡してたであろう私の髪。
アブラマシマシ。コイブミアブラカタブラ。
でも今は令和なので前髪ペッタリなダセー女やってます。

今日、ハンカチをもらった。
フラッシュバックのように飲み会でハンカチをあげたことを思い出した。

仲良くなり始めたお姉さん。
オールで行ったカラオケでスキマスイッチの奏を歌って泣きはじめた。
好きな人が既婚者でうまくいかない。
手を離すべきなのは私なのに、と。
しゃくりあげて涙を零していた。
私は、いつも強気な彼女が小さくなっているだけで心が痛かった。

面倒臭いだ とか
不倫してる女はヤバイ とか
泣き上戸勘弁して とか

そういうのは後から考えたかった。
お気に入りのハンカチを差し出すのに、躊躇はなかった。
薄い素材で水色。白い水玉模様。縁どりのレース。
その時の私には少し高いハンカチ。
「返さなくていいから。泣いていいよ」
私は泣いている人にはいい人ぶりたい性分なんだ。
泣いても世界は変わらない。
泣いたという事実が過去に添えられるだけ。
でも、本人は泣くほど辛いんだ。
気が済むまでどうぞ。
落ち着くまでどうぞ。
「優しいね。ありがとう」
優しくはないはずだ。
厳しい一言さえ言ってあげられない。
「そんなに好きでいて偉いよね。すごいよ」
「みんなはやめろって言うんだよね」
「そっかぁ」
そのあとは、お互い言葉を飲み込んでいたように思う。
気づけば、朝が来ていた。
空はハンカチと同じ水色。
彼女は空の欠片を握りしめて、駅の雑踏に消えていった。

それから彼女は件の相手と別れ、別の人と結婚した。

今日もらったハンカチも、水色。
タオル地でストライプ。
全然違うものなのなのに、空の欠片が帰ってきた気がした。
「おかえり」
私は、これ幸いと前髪の油分をぬぐう。

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