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3/3 18:52 生死をループしようと思った妄想

私が死んだ日。
夢を見ていた。
夢の中で夢を見て、さらにその先でも夢を見た。
戻ろうと思っても戻り方がわからず、現実味のない世界で「ここは現実じゃない」と思いながらずっと生きている。
多分だけど、私は死んでいるのだろう。

私が死んだ日。
クチナシの花が萎み始めていた。
フチが茶色くなってみっともない花弁。
香りも何となく腐敗が始まっていた。
もう捨ててしまおうと花を摘んで、気付く。
指の骨の露出。爪が1枚ひらり。
あぁ、私が腐敗していたんだ。

私が死んだ日。
出社すると会社が喫茶店になっていた。
昔働いていた所に似ていて、従業員も見知った顔。
でも所々違う。
こんなメニューあったっけ?と眺めていたら、何かを落としてしまった。
陶器で出来た真っ白いティーセット。
「それは人骨でできてるのさ」
私に骨がないと知った瞬間だった。

私が死んだ日。
電車に乗ったはいいが、どこに行けばいいかわからない。
どこで降りればいいのかわからない。
駅名は読めるようで読めない。
オレンジの座席に黄色い車内。
手すりはグリーン。吊革は赤。
乗客はのびたり縮んだり忙しい。
私は何かひと言呟いたが、それすらわからない。
ただ。
流れる涙が愛しい人に関する言葉だったと思えた。

私が死んだ日。
アスファルトの上で白い甲虫が死んでいた。
カラカラに乾いて、いや、もともとカラカラなのかもしれない。
カビ臭い鳩が攫っていった。
なんだか切なくて空を見た。
あの鳩は私に気付いただろうか。

私が死んだ日。
何も残さなかったし、中途半端だった。
私の幸せの記録は私がいなくなれば無意味。
さもしい自分を笑った。
エゴイスティックにモラトリアム。
いい成績残せなかったから「もう1回遊べるドン!」できなかったんだね。
来世は手首のスタップ強めに生きるよ。

私が死んだ日。
それは車のよそ見運転だったそうだ。


なんてね。

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