ぼくと街金 【番外〜金主編〜】

「ぼく、街金やってます」、皆さまから多数の応援・絶賛の声をいただき、販売数10万部が見えてきました(ウソ)。
街金で働くぼくが、noteでしょうもない投稿をしたことがきっかけで、猫組長の本とまとめて購入していただけていること、名誉以外のなにものでもありません。皆さま、愛してます。
そして、続編も宜しくお願いいたします(やらない)。
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ツイッターでも、街金本でも、何度も言っていますが、ぼくは金主から10パーで借りて、債務者に15パーで貸しています。

微々たる利益を死守すべく、日々、おいこらやってるわけです。
お酒飲んでてても、おいこらするために離席するんです。

微々たる利益を守るためだけにおいこらしてるわけじゃありません。
債務者が利息を払ってくれなきゃ、ぼくが金主に払う利息、債務者の分をぼくが立替えなきゃならなくなるからです。

ぼくが金主に払う10パーは、債務者がぼくに払った15パーから払う。
債務者がぼくに15パー払わなくても、ぼくは金主に10パー払う。

ぼくにも払える限界ってものがあるんです。


ぼくにお金を貸してくれる金主、いまは数名(数社)います。個人の資産家の方だったり、資産運用目的の会社だったり、同業者だったり。

いまは実績を積んで、融資するお金の調達にはそれほど苦労しなくなりました。
でも、独立を考え始めたころ、一体どうやって調達したらいいのか、見当もつきませんでした。

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ぼくが上野の街金で働いていたある日、上司(街金本P.39参照)から飲みに誘われました。誘われたのは、ぼくだけです。

「テツクル 、オレ独立しようと思うんだ。金主も見つかったし。」
「まぢすか!おおおー!」

この流れ、連れていってもらえると思うじゃないですか。
ゴミみたいな同僚に囲まれて苦痛の日々を過ごしてましたが、唯一の救いだった上司が独立する、課内で1番の成績だったぼくだけを飲みに誘い、誰よりも先に打ち明けてくれる。

この上司のためならしねる。身代わり出頭できる。

そう思ってました。

「お前を連れていきたいんだけど、いきなり従業員を抱えるのは重い。だから安定してきたら声かけるから、それまで頑張れ。」
「はい!だいじょうぶです!待ってます!」

かならず迎えに来るから。遠距離恋愛で彼の迎えを待つ娘のような気分です。

上司の退社後、主任という中途半端な役職に就き、部下もでき、今まで以上に数字を追いかけました。
貸して、貸して、貸して、おいこらして、おいこらして、回収して。

すべては元上司がぼくを迎え入れてくれるとき、今より成長してる姿を見せたい。
たくさんの手土産(優良債務者)を持って行きたい。
元上司の会社をデカくするんだ!ぼくの力で!
それまでは、全力で数字を作るんだ!貸し倒れ?なんやそれ、意地でもぜんぶ回収や!

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半年くらい経ったころです。
従業員の噂話で、

「独立したAさん(元上司)、絶好調らしくて、もう社員10人くらいいるらしいで。」

あれ…? ぼくは…?

地方で彼の迎えを健気に待つも、東京でそっこう新しい彼女ができたと人づてに聞かされた娘のような気分です。

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「もうやめてやるけんのー。おまえら全員敵じゃ。元上司?しらんわ。ぜってーあいつよりのし上がってやるけんのー。」

はじめて独立を意識しました。
いま、自分に足りないもの。集客のノウハウは掴んだ。事務所借りて開業するくらいは貯金がある。

お金。貸すためのお金がない…。

街金が独立するとき最初にぶつかる、ぶ厚くて高い壁。

まず、資本金5000万円を積まなければなりません。
これがないと、貸金業の申請もできません。

とりあえず、福岡のおじさん(街金本P.15参照)に相談しました。
ぼくがおじさんから借りた100万、結局900万くらい払って完済になりました。

「ご無沙汰してます!ちょっと相談がありまして。」
「おう、元気してると?金なら無いけんね。」

そっこう断られました。

でも、金持ちなら紹介してやると、在日韓国人の朴さんを紹介してもらいました。
朴さんは70代の元街金で、いまは街金相手に貸金業を営んでいるとのことでした。お金を卸す、とぼくらは言います。

おじさんの紹介ということだけで、ハードルは殆どなし。
「ぼくが朴さんに借りたお金、ぼくが体を張って一生かけてぜったいお返しします。」
という誓約書に実印、指印、掌印を押しただけで、融資するお金を貸してくれることになりました…。

ぼくと朴と街金…。

朴さんは毎日電話してきます。
「○○の集金、どうなってる?」
「あ、利払日は来週末です。」

次の日

「○○の集金、どうなってる?」
「あ、利払日は来週末です…昨日も言ったかと…。」
「あぁ!?ワシはおまえがちゃんと覚えてるか確認で訊いてるのになんだその言い方はっ!もう金、引き揚げるからなっ!」

すぐキレます。

街金で働いていると、同業者との接点って殆どないんです。
どちらかが肩がわりするときに、回収と抹消登記をするために同席するくらいで、
「一緒に呑んで情報交換しましょうよ!」
なんて機会は皆無です。

いや、ぼくだけなのでしょうか…。
みんな、ほんとは集まったりしてるんですか?

ぼくに案件(債務者)を定期的に納めてくれるブローカーに言われました。
「テツクルちゃん、ほかの街金で噂になってるよ。朴が金主でよく続いてるよねって。みんなメンタルやられて他の金主探すのにって。」

勝てる…。 最悪でも生き残れる…。

この程度で音をあげてるのか。街金ってその程度か。
朴さんは、ぼくが査定してイケると言えば、物件も見ずにお金を振り込んでくれました。幾ら貸したいと電話したら、その場で振り込んでくれました。
街金にとって、お金の調達速度ってとても重要なんです。
お金を借りにきてる人は、1日もはやく借りたい多重債務者。
明日借りられる15パーは、2週間後に借りられる10パーより価値があるんです。

連日の朴さんからの入電、多い日には1日30回程度の入電なんて、屁でもないわけです。

朴さんは、ぼくに色々な人脈を提供してくれました。
半島系金融機関のお偉いさん、半島系街金の経営者の方々。

「おぉ、君がテツクルくんか。活躍は知ってるよ。あちこちの謄本で見るからね。」
「あ、ありがとうございます!」
「どの辺の客層狙って貸付してるの?結構ギリギリの物件にも出してるよね?」
「はい!ギリギリの物件にハナクソくらいの債権ねじ込んで、それを足場にして甲区に登るんです!」
「あはははははは! まぁ、がんばって。」

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ぼくを育ててくれた朴さんはお星様になり、いまは多くの投資家、同業者の方々から融資するお金を調達し、小規模だけど安定した経営ができています。
これもすべて、福岡のおじさん、朴さん、投資家の皆さんのおかげです。
そしてぼくから借りてくれる債務者の皆さんのおかげです。いつもお利息、ありがとう。

街金の多くは、自己資金ではなく、調達して融資しています。
自己資金で自由に融資できている会社には勝てません。雲の上の存在です。

ぼくもいつかはそのステージに立ちたい。
そう誓って、きょうも街金本を売るのです。(違

元上司の会社には、まだ追いつけていません。
目標がある限り、街金業界で頑張る次第です。押忍。


#ツイッターインベストメント の皆様に捧げます。






ほんとにぼくでいいんですか?