マガジンのカバー画像

からだ思考

18
からだについてかんがえる、あたまのなかを書いています
運営しているクリエイター

#SOMIES

身体係数と、健常と、障害と、社会と。

身体係数と、健常と、障害と、社会と。

今週、大学のバイオメカニクスの講義で重心推定のための身体係数についての話をした。重心の推定には、例えば前額面で考えるときには、各セグメントの長さと、体重に対する重さの比と、既に過去の研究で明らかにされているセグメントの重心位置の推定結果が必要になってくる。

全身の重心を推定するためにセグメントの重心が推定されている既存の結果が必要になる、という矛盾はあるが、今のところ教室で基本的なバイオメカニク

もっとみる
「子ども」と「道具」と「運動発達」

「子ども」と「道具」と「運動発達」

「この道具は使っていい道具ですかダメな道具ですか」という質問をよくもらう。例えば「食事のときにピンセット型の練習箸を使ってもいいですか」などの具体的なものから、「抱っこ紐ってどうですか」などの漠然とした疑問まで、「子ども」と「道具」をめぐる問いかけは尽きない。そういう質問を受けたときに考えていることが、意外と運動能力の本質と繋がっているような気がしたので文章にまとめてみたいと思う。

万人にとって

もっとみる
規則正しい生活と運動は心身を守る 〜2日で1000人以上集まったコミュニティへのお誘い〜

規則正しい生活と運動は心身を守る 〜2日で1000人以上集まったコミュニティへのお誘い〜

 子どもを育てて5年。心から実感していることがある。規則正しい生活と、十分な運動と、空腹を感じてからの食事と、たっぷりの睡眠、これらが満たされると子どもは心身健やかである。

 きっと本来は大人も同じなのだろうと思う。ただし大人はもっと複雑な社会環境の中に生きているので、規則正しさも、運動に割く時間も、食事のタイミングや量も、睡眠でさえも、コントロールするのが難しかったりする。

 COVID-1

もっとみる
「視覚」と「運動」の関わりは新生児期を土台としている

「視覚」と「運動」の関わりは新生児期を土台としている

少し前に『眼の誕生 ーカンブリア紀大進化の謎を解く』という本を読んだ。眼と言えば感覚器官の代表格で、わたしたちの社会の大部分は視覚を持ち合わせていることを前提に作られていると言っても過言ではない。

むかし病棟に勤務していた頃に、視覚を失った患者さんに出会った。糖尿病で50代で視力を失ったその患者さんは、世界を、文字通り「手探り」で確認していた。

その患者さんが病棟内で生活できるように工夫しよう

もっとみる
「感覚を大事にする」と「生きやすくなる」

「感覚を大事にする」と「生きやすくなる」

五感(視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚)=感覚は五つである、と定義したのはギリシャ時代の哲学者アリストテレスだ。現在ではこの5つの感覚は「古典的な五感」などと呼ばれている。

現在は、感覚系の種類は大きく以下の6つに分類されていて、それぞれの系が受け取る刺激の種類は多岐に渡ることがわかっている。(カッコ内はそれぞれが感知する刺激の種類だ。)

視覚系(光(光子))
聴覚系(音(圧力波))
前庭感覚系(

もっとみる
エビデンスと経験値の間

エビデンスと経験値の間

先日、友人がこんな質問に答えていた。真摯な答だ。

さて、小学生は筋トレすると背が伸びなくなるのだろうか。コメント欄を見ると、これではよくわからない、もっとエビデンスを出せ、調査しろ、とある。なるほど読む側はそう捉えるのだなと興味深かった。

では「小学生は筋トレすると背が伸びなくなる」の信用に足るエビデンスとは何であると考えられるだろうか。

今の科学的アプローチの条件で一番信頼性が高いと言われ

もっとみる
飽くなき夢の行き着く先は翼か義足か

飽くなき夢の行き着く先は翼か義足か

人間に機械のインターフェイスを取り付けて計測するような実験をしていると、機械に対する人間の不具合にも気づくようになる。筋の電位ひとつを計測するのにも、生きているこの身体が産生し続けている皮膚の角質が邪魔でヤスリで擦り落とす。汗をかくと接触面が不安定になるので実験室の温度は低めに設定しなければならない。生きている自分たちの身体に興味を持ってはじめた計測が、いつしか生きていることの一部を排除していかに

もっとみる