関節運動のバイオメカニクスの理解を深める本3冊

先日、バイオメカニクスの基礎を学ぶための本を紹介しましたが、今回は、関節運動の理解を深めるための本を3冊紹介したいと思います。

前回の紹介は、力とは何か、移動や動作の力をどう見るか、という視点でわかりやすさを追求した選書だったのですが、治療家やセラピストはもっと細かい視点で生体力学を考える必要があると思っています。関節の構造と、その仕組みの力学を学ぶには以下の3冊がオススメです。

上から順に、学びを深めていけると思います。

「筋骨格系のキネシオロジー」 Donald A.Neumann (著), P.D.Andrew (翻訳), 有馬慶美 (翻訳), 日髙正巳 (翻訳)

「カパンジー 生体力学の世界」 A.I. Kapandji (著), 塩田 悦仁 (翻訳)

「二関節筋」 奈良 勲 (監修), 熊本 水頼 (編集), 畠 直輝 (編集), 内山 靖 (編集)


1冊目の筋骨格系のキネシオロジーは、第3版が出ています。各関節に働く筋や関節間の力の作用など、関節を扱う職業として考えるべき力学が網羅されています。もし1冊だけ選ぶとしたらこちらをオススメします。

2冊目は、知る人ぞ知るカパンジーの機能解剖から一歩進んだカパンジーによる生体力学の理解です。関節をそれぞれ、彼独特のタッチの絵とともに解説しています。力とは何かの理解を進めてから読むといいと思います。

3冊目は、関節運動をテコの原理ではなく、モーターと接続部の原理で考えたときに、無視することができない二関節筋の作用について追求した本です。この二関節筋の原理の理解はロボット工学にも応用されており、人間の運動の本質について力学的に理解するために役立つ本です。


運動を理解する、という時に、外から見た運動の様子を記述することはもちろん大切なのですが、身体の中で、あるいは外から、どのような力が作用してその運動が起きているのかを考えることができると、「結局どこが原因なのか」を発見する手助けになります。

関節運動ひとつひとつが、力のバランスの上で成り立っています。例えば大腿四頭筋やローテーターカフ、股関節の外旋六筋を想像してみると、それぞれの筋が違う方向へ骨をコントロールしているわけですが、その全体のバランスが崩れるということが何を意味するのか、理解している必要があると思います。

また、複数の筋が協働することで生まれる関節間の圧力も、どこかの筋が不調をきたした場合に、その接触面が変化してしまう、というのも大きな気づきになるのではないでしょうか。

いずれの本も、関節運動に関してだけでなく、歩行などの全身運動も取り扱っています。是非お手にとってみてください。