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一次流通と二次流通がつながる日

新品販売サイトで買取促進の意味

リユースベンチャーのマーケットエンタープライズ(ME)は7月8日、パナソニックコンシューマーマーケティングと業務提携し、期間限定でパナソニックの電動アシスト自転車の買取サービスを開始するというニュースを見ました。期間中は買い取り料金を10%アップし、利用を促すそうです。

MEの小林泰士社長はSNSで・・・

D2C(Direct to Consumer)が広がっていく中で、今後、メーカー各社は販売戦略に2次流通を組み込まなければ、いけなくなってきた。テスラがモデルXを販売し始めた時に、大々的に買い取り価格保証を提示したのは記憶に新しい。あらゆる商材で今後、2次流通を意識した取引が増えていく。

とポストされていました。確かに一次流通(新品購入)と二次流通(買取販売)は最近、どんどんと距離を縮めており、今後は消費者にとってシームレスにサービスが提供されていくんだろうなと思いました。

MEとパナソニックの提携では、ECサイト「Panasonic Store」で電動アシスト自転車を購入した顧客が、所有している電動アシスト自転車の買取を希望する際に、買取価格を10%アップするそうです。

「Panasonic Store」で電動アシスト自転車を購入した顧客は、何年後かにまたこのサイトで電動アシスト自転車の最新モデルを購入する可能性が高く、そういったお客さんに「今お使いモデルは買い取りしますので、ぜひ新品買いましょう」という取り組みのようです。

知らなかったですが、テスラモーターズも新型車種投入時に買い取りキャンペーンを展開していたんですね。トヨタなどの日本メーカーも中古車の買取サービスは提供しており、販売店などでは新車購入を検討しているお客さんに勧めたりしているんでしょうが、大々的にキャンペーンやっているというのはあまり聞いたことはないですね。さすがイーロン・マスク。

すでに通販でも実践事例はたくさん

新品購入時に買い取り(下取り)を促す取り組みは今に始まったことではありません。すぐに思いつく取り組みは、ジャパネットたかたなどもやっている「お使いの掃除機を下取りするとさらに1万円オフ」のような販売施策ではないでしょうか?

リユースと言うより割引のためのフックという感じもしますが、家のスペースも限られた中、「新しい掃除機を買いたくても今ある掃除機どうするの?リサイクル出すのもお金がかかるし、面倒」という消費者心理を上手く突いた施策ですよね。

ニッチな取り組みだと健康茶通販のティーライフは、「健康食品やお茶、化粧品下取りします」というようなキャンペーンをやっています。これも新たな化粧品を買ってもらうきっかけ作りと既存顧客との関係強化のための取り組みで好評を得ているそうです。

フィンテックでさらにつながる

メルカリは試験的にプラットフォーム上で新品を販売する取り組みを行っていました。これはメルカリで自分のアイテムを販売した方が売上金を使う方法として、新品購入という選択肢もあった方がより利用しやすいと考えたからのようです。メルカリとしてはどんどん売上金を使ってもらって、さらにどんどんあらたん商品を売りに出してもらった方が、マーケットが活性化します。

ただ、メルカリのプラットフォームで新品を並列で販売するのは難しかったようで、新品販売は止めているようです。一方、メルペイが登場したことで、売上金を別のサービスやショッピングに利用できるようになりました。メルカリはただ単にキャッシュレス決済に参入したのではなく、メルカリユーザーに売上金の消費を促すためにメルペイを始めた側面もあります。

さらに「メルペイ」はEC決済にも対応を開始しました。第1弾はファストファッションECの「SHOPLIST」。今後、「SHOPLIST」で購入した商品をワンタップでメルカリに出品できるようにするそうです。これは「SHOPLIST」のみならず、今後「メルペイ」決済を導入していったECサイトでも実施するサービスのようです。

即時買い取りアプリ「CASH」などを提供するバンクが今年6月にリリースした「モノ払い」はまさに一次流通と二次流通をシームレスにつなげる取り組みです。ECサイトを利用する際に、自分の不要なアイテムを買取に手続するだけで、買い取り金額をそのままそのサイトの決済で使えてしまうといいます。

第1弾では航空券販売のECサイト「エアトリ」が導入し、ファッションブランド「ナノ・ユニバース」のECサイトでの導入も決まっているそうです。まったく新しい購買体験なので、ユーザーに定着するには壁があると思いますが、「リサイクルに出して、換金して、そのお金で買い物する」という一連の手間を簡素化したサービスは利用メリットがあると思います。

自社ECサイトで買取促進が広まる!?

「メルペイ」や「モノ払い」は二次流通の売上金を一次流通で消費してもらう機能としてより注目を集めるでしょう。ただ、EC事業者が新品購入のために二次流通を活用しようと考えると、冒頭のマーケットエンタープライズのような自社サイト上に買取機能を導入することが求められると思います。

「ZOZOTOWN」が提供している「買い替え割」のような、自社で買った商品を購買データを基に査定し、新品購入時の割引に充てるといったサービスは究極だと思います。「モノ払い」がさらに機能拡張し、自社ECサイトの事業者とデータ連携まですれば、「買い替え割」のようなサービスが実現できるかもしれません。

いずれにせよEC市場では今後、さらに一次流通と二次流通がつながっていくと思います。物であふれている日本において、「新品を買わせるために買い取りに出させる」という取り組みは当たり前のものになるかもしれません。

EC業界向け専門紙「日本ネット経済新聞」で記者してます。EC、通販、モノづくり、流通、マーケティングなど取材していく中で紙面には書かない自分の考えや疑問について書いていきたいと思います