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ヤフーの新モール「PayPayモール」の狙いとは?

世間的にはフリマが話題ですが

ヤフーが新たなECサービスを発表しました。ECモールの「PayPayモール」とフリマアプリの「PayPayフリマ」です。世間的には「PayPayフリマ」の方が話題になっているようです。「ヤフオク!」でCtoCの王者だったヤフーが、新興勢力の「メルカリ」に対抗してフリマアプリを立ち上げたという構図は確かに面白いですよね。

しかし、私はBtoCを中心としたEC業界を追いかけているので、「PayPayモール」の方が気になります。EC業界の専門紙「日本ネット経済新聞」でも「PayPayモール」について詳しく取り上げています。
https://www.bci.co.jp/netkeizai/article/5591

PayPayモール開設の狙いは?

名称からもスマホ決済「PayPay」を活性化するためのサービスだと分かります。リリースにも

「PayPay」と連携したお得な特典やキャンペーンを実施するだけでなく、使いやすさも追求し、新しいeコマース体験の創出を目指します。

と新サービスについて紹介しています。しかし、PayPayの活性化だけが新サービスの狙いではなさそうだと取材から見えてきました。

他の狙い①「優良店の囲い込み」

ヤフーの担当者はリリース前、周辺企業に対して新モールのことを「プレミアムモール」と説明していたそうです。正式名称を明かせなかったのか、まだ決まっていなかったのかは知りませんが、大手企業や有力企業しか出店できない「プレミアム」な売り場にしようという意図が読み取れます。

実際、ヤフーの広報も・・・

プレミアムな商品提供の場を新たに作り、お客さまの満足度を高めていく。『PayPay』を使用するユーザーにとって、より便利な売り場になる

と新モールを説明してます。プレミアムとは何かというとまずは出店企業のラインアップです。どこが出店するかはわかりませんが、出店基準から大手企業、有力企業に出店者を絞ろうとしていることが分かります。

楽天、アマゾンへの対抗策

大手を囲いこむことで楽天やアマゾンなどに対抗する狙いも見て取れます。あるEC関係者はこう話していました。

「Yahooショッピング!」は店舗数が75万店以上あるが、流通総額の大半は上位数パーセントが作っている。上位店や現在ヤフーに入っていない有力店を誘致し、プレミアムモールを立ち上げれば、さらに流通総額を伸ばすことができると考えたのだろう

フリマもメルカリへの対抗策ですが、当然、新モールも競合を意識した一手であると考えるのは、自然な推測だと思います。

「Yahooショッピング!」は13年に「eコマース革命」と銘打ち、出店手数料を無料化し、店舗数や掲載商品数を一気に拡大しましたが、流通総額も拡大していった反面、開店休業状態の店舗が増えたり、不正を働こうとする店舗が入ってきたりするといった話も聞こえてきます。

ユーザービリティーにこだわり

ユーザーにとっても取扱商品点数は多いものの、目当ての商品が探しにくかったり、店舗の品質にバラつきがあるため、満足のいくサービスを受けられないというケースもあったようです。「PayPayモール」ではファッションや家電など、商品ジャンル別に表示形式を変えて、見やすく、検索や価格比較をしやすいデザインにするそうです。 

厳しい出店基準をクリアした有力企業は、見やすいモールで自社の商品をしっかりと訴求できるようです。さらに「PayPayモール」の出店商品は「Yahooショッピング!」の検索結果にも表示されるそうです。詳細は明かしていないですが、「ソフトバンク」や「PayPay」のユーザーを積極的に送客する取り組みも行うでしょう。

他の狙い②「ショッピング事業の収益向上」

「PayPayモール」は「Yahooショッピング!」でも徴収しているポイント原子負担に加えて、掲載料として販売価格の3%を徴収するそうです。「Yahooショッピング!」の流通総額は伸びていますが、利益も同様に伸びているかは分かりません。店舗数ばかり増えても、管理コストがかさみ、収益貢献しているのは一握りというのが実情かもしれません。

有力店を優遇するとともに、手数料もしっかり徴収することで、ショッピング事業の収益をしっかり確保したいというのは本音でしょう。

名前は「PayPayモール」で大丈夫?

 今秋、立ち上げる「PayPayモール」は「プレミアムモール」を志向しているということですが、名前からはプレミアムな雰囲気を感じられません。「PayPay」が「100億円あげちゃうキャンペーン」などを展開したことで、「お得」「安い」イメージが付いてしまったからかもしれません。

この名称でユーザーにプレミアムなサービスだと認知してもらえるか、部外者ながら心配です。

EC業界向け専門紙「日本ネット経済新聞」で記者してます。EC、通販、モノづくり、流通、マーケティングなど取材していく中で紙面には書かない自分の考えや疑問について書いていきたいと思います