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【TRPG】我流マスタリング講座ver2.0「GMって楽しい!」

■ これは何?

唐突に思いついたので書いていきます。今回は技術的なことよりも「GMするのってめちゃくちゃ楽しいよ!」と伝えることを重点して書いていきますので、良ければ是非見てやってください。

筆者(T1000G)のクローズドなDiscordサーバーより

 これは「TRPGのGMってめちゃくちゃ楽しいよ!」ということを伝えながら、「どうやってやれば良いのかわからない!」「どうせやるなら上手くやりたいんだ!」「そもそもGMってどこが楽しいの?」という声に軽くお応えしていくことを目的とした、初心者GM(あるいは中級者GM)に向けたマスタリング講座です。マスタリング講座と言いながら、シナリオの書き方とかもざっくり話したりしています。

 筆者の出身文化園が【ニンジャスレイヤーTRPG】なので、【ニンジャスレイヤーTRPG】のサンプルシナリオを取り扱ったりして解説している部分もあるので、そこはご了承ください。また、「参加者を募る」「ユドナリウムやココフォリアなどの部屋の作り方」といった部分はあまり話さないので、そこら辺もご了承ください(おそらく私より何倍も詳しい方が、既にネットで書かれていることでしょう)。

【ニンジャスレイヤーTRPG】(現在の最新は「第二版」)については上記を参照してください。なお、私はDHTLS公式とは一切関係ないただのニンジャスレイヤーTRPGプレイヤーです(皆もニンジャスレイヤーTRPGやろうぜ!)。

◇  お品書き  ◇

▼ 様々なプレイスタイル ▼

■ GMってどういうところが楽しいの? 編

・特等席からわちゃわちゃを眺められる (T)
・自分のストーリーをぶつけられる (RP)
・自分の思いついた試練を予想外の方法でクリアしてもらう (G)

■ どうすれば自分も皆も楽しめる卓ができるの? 編
・盛り上がるようなものを置く (T)
・ボールを打って、返してもらい、また打つ (RP)
・アサーラックになろう (G)

■ 実際どうやってやっていけば良いんだろう? 編

・まずは簡単なものから
・サンプルシナリオ魔改造という手
・道と壁を作る

・おまけ:何も浮かばないとき

■ あとがき

それでは是非見ていってください!

▼ 様々なプレイスタイル ▼

 まずGMについての楽しさを語っていく上で、これについて話しておかなければなりません。

 プレイスタイル!

 PLにおいても「戦士派(戦闘で活躍したい。戦術を考えたい。敵を殺したい)」「演技派(ロールプレイをしたい。シナリオ上で展開されているストーリーに沿った演技をしたい)」などと様々なプレイスタイルがあることはもう皆様もそれなりに理解しているかと思いますが、GMをやる上でもこのスタイルの違いは勿論存在します。

 まずTRPGの要素を大まかに三つの分類に切り分けていきましょう。

 一つ目は「T」。ようはテーブルトークの部分です。PL間で相談したり、わちゃわちゃしたり、卓に関する雑談をしたりといった部分。

 二つ目は「RP」。実際のPCの演技(ロールプレイ)だったり、PCの何らかに沿って行動を決めたりしていく部分。

 三つ目は「G」。これはゲームの部分です。ルールやGMの裁定に従って、数々の壁を乗り越えていく部分。

 主にこれら三つの要素によってTRPGは成り立っています。そしてどれを重視するかはPL、そしてGM次第です。全部上手くやれればそれが一番良いのですが、そうもいかないことも多いのでまずは自分が何が好きかをちょっとだけ考えるとハッピーになると思います。

 また、これは相互作用するものとも言えるので(「G」の進行によって「T」が盛り上がったり、「RP」によって「G」に意味づけがされ、そして「T」が盛り上がったり、はたまた「T」が盛り上がることによって「RP」や「G」が変わってきたり)、どれかに偏っていてもやりようはいくらでもあります。

 今回語っていく内容の掌編はそれぞれ「T」の部分、「RP」の部分、「G」の部分を一つずつピックアップしています。どれを重視するにしても、割と他の部分で補っていったりすることができるのがTRPGですから、自分の重視するものでなくても参考にできる部分はあると思います(私も「RP」を盛り上げるために「G」を充実させる、といったことを多くしています)。

 GMのスタイルに関しては「箱庭型」や「映画型」といった詳細なプレイスタイルもあったりしますが、今回はあまり深くは解説しません。まずはGMの面白さを知ってもらったうえで、それについて考えていただければと思います。エンジョイ!

■ GMってどういうところが楽しいの? 編

□ 特等席からわちゃわちゃを眺められる (T)

 まずGMをしていて楽しいこと。それはGMという特等席で、PLたち(そしてPCたち)のわちゃわちゃを眺められることです。

 「わちゃわちゃ」には卓に関する雑談、悲鳴、ツッコミといったPL的な面から、PCたちのロールプレイなどといった全てのものが含められます。GMはその特性上、常に全体を見ている必要がありますが、これは要するに全体をいつも以上により深く見ることができるということでもあります。PLの時では卓や世界に没入していて見えなかったところも、GMをやると見えるようになったりします。これが楽しいポイントの一つです!

 私は「RP」の部分が特に好きなので、特にPLやPCたちが自分の用意した舞台、NPC、戦闘に色々反応してるだけで興奮します。雑談チャンネルで「何だコイツ!」とか反応されたり、自分でも想像していなかったような意味づけがなされた時にはもう絶頂ものです。

 わちゃわちゃを特等席で眺められる、そしてそのわちゃわちゃを生み出すことができるのはGMならではでもあります。皆も特等席に座ってPLやPCのリアクションを楽しもう!

□ 自分のストーリーをぶつけられる (RP)

 自分のストーリーをぶつけられるのもGMの楽しいポイントの一つです。自分のストーリーは何も超感動的な物語ということだけに限りません。「こういうシチュエーションを体験させたいなあ」「こういうNPCがいたらどういう反応をするだろうか」といった思いをぶつけるのもそれです。

 基本的にPLやPCたちが没入する(あるいは体験する)世界を描写するのはGMの役目ですから、その役目であることを最大限活かしてシチュエーションをぶつけてやりましょう。

□ 自分の思いついた試練を予想外の方法でクリアしてもらう (G)

 TRPGはゲームでもあるので、自分の思いついた試練・壁・ゲームを体験させることができます。これもとても楽しい!

 思いついたギミックを積んだ敵キャラクターと戦闘させたり、喜んでもらえるようなダンジョンをプレイしてもらったりするのもそれです。たまにPLやPCが予想外の攻略方法を思いついたりして攻略してくれるのも、楽しさの一つです。

 そして何も予想外の方法でクリアしてもらうことだけが楽しさではありません。自分が用意した道を楽しく進んでもらうことができるのも、GMの特権と言えます。

■ どうすれば自分も皆も楽しめる卓ができるの? 編

 これに関しては共通することが言えます。

 私も最近気づいたのですが、GMにおいて真の楽しさを得られるのは「吟遊マスタリング」と呼ばれるものをして自分の物語をただ語ることではなく、相手に喜んでもらえるようなマスタリングをして、喜びの悲鳴を浴びることです。PLのリアクションがGMの楽しさに繋がるといっても過言ではないように思います。

 そのため自分も皆も楽しめる卓を作る方法は、身も蓋もない話ですがPLが面白いと思えるようなセッションを作り上げることです。PLが楽しければ、結果的にGMにも楽しさが伝わってきて、楽しくなります。セッションは皆で作り上げるものですが、取っ掛かりを作るのはGMの一つの役目とも言えます(とはいえ、セッションはPLが面白くするもの! と図太く構えることも大事です)。楽しさの連鎖を作ってやりましょう!

 そしてここからは、その楽しさを作る個人的な方法をざっくり語っていきます。

□ 盛り上がるようなものを置く (T)

 盛り上がるようなものを置く。これは一見難しそうに見えますが、大抵のTRPGの場合「G」をしているだけで盛り上がります。何故なら、TRPGのシステム側でもう既に「T」が盛り上がるようなシステムが置かれているからです。そのシステムの一例を見ていきましょう。

 【ニンジャスレイヤーTRPG】

 これには皆様ご存知の「サツバツ!」があります。「サツバツ!」が出るとやはり盛り上がります(もう皆さん慣れてしまっているかもしれませんが、やはり「サツバツ!」が出ると盛り上がるものです。初プレイ時、サンシタニンジャをやっている時に「サツバツ!」を出して命中させたあの感覚を思い出してみてください)。こういったものがRPGのシステム側で用意されている「盛り上がれるようなもの」です。

 「サツバツ!」になるともう定番のシステムになっていて盛り上がりに欠けてしまうかもしれませんが、今でも戦闘においてボス戦で「サツバツ!」や「ヒサツ・ワザ」を命中させた時の快感は凄まじいものです。

 そしてそういったシステムを、シナリオ側で作ってやるのです。これは「G」の部分にもあたる話になりますが、システム側でそういう”盛り上がるものを置く”のはとても有効です。例えばニンジャなどにおける戦闘であれば、MAP上にPCが利用できるようなもの(ギミック)を配置してやりましょう。PCが利用できるものは、リスクとリターンのバランスが釣り合っているものが良いです(ニンジャだと殴る方が早かったりする場合もあるので、その辺は調整してやる必要があります)。

 また、マップギミックなどを配置するのも良いでしょう。ターン終了時にランダムな場所に振ってくる衛星レーザー、敵スナイパーの狙撃、崩れ落ちていく床、などです。これもリスクとリターンのバランスを整えてやると更に引き締まります。

 例えば、「衛星レーザーはランダムなPC”のみ”を狙うが、範囲が3x3なので最後に敵と隣接していると敵も巻き込める」だとか、「スナイパーは隣接カラテ応酬中でも躊躇わず撃つ冷酷なヤツなので、敵を巻き込める」だとか、「落ちるとダメージを受けるが、一定のターン敵からの射線が遮られる(あるいは奇襲攻撃ができるようになる)」だとか、そういった「一見不利だが、これをするとPCにリターンがあるよ!」というギミックにしてやるとなおグッドです。これがそのシナリオだけの特別な「体験」を生み出し、楽しさや盛り上がり(つまり「T」)にも繋がります。

 そしてこういった「盛り上がるものを置く」というのは「RP」にも流用できます。ようはギャグ(リラックス)や最高にクール(シリアス)なシーン、奇抜なNPCなどです。これPLのリアクションを誘える他、シナリオを引き締めるのにも役立ちます。この辺は突き詰めると脚本術などの難しい話になってくるので、是非他の方のマスタリング講座を参考にしてみてください。

□ ボールを打って、返してもらい、また打つ (RP)

 ようはキャッチボールです。そしてGMは、ボールを打ちまくっても大丈夫という特権があります。何故なら、GMが世界を提示しなければそもそもPLやPCは反応できないからです。反応できないとロールプレイもできませんし、「T」(雑談など)もできません。古い考えではあるかもしれませんが、GMあってこそのシナリオ、セッションです。

 折角GMになったのですから、多少強引であってもボールを打ってみましょう。RPに限らずコミュニケーションはまず誰かがボールを打たないと始まらないのですから(ここで筆者が死体になる)。

 というわけで、打ちやすいボールや打ちたいボール(RPのボール、シーンのボール、その他様々)をたくさん用意しておきましょう。勿論、それを全て使う必要はありません。状況に応じて使わないボールもあるでしょうし、急遽必要になるボールもあるかもしれません。そこは”アドリブ”と呼ばれるもので対処しなければなりませんが、準備したものを使わないよりは即興で準備する方が難しかったりするので、最初のうちはたくさん用意しておくと良いと思います(そこでどういったものを実際の卓で使うのか、といった技術的な面も磨かれてくるかもしれません)。

 打ちやすいボールについては人によって様々ですが、とりあえず【ニンジャスレイヤーTRPG】の「ヤクザの事務所」を例に見てみましょう。

 「ヤクザの事務所」では大まかに四つのシーケンスがあります。「ソニックブームに任務を言い渡される」「ヤクザを殺してトレジャーを手に入れながら進んでいく」「キヨシやブラックマンバと戦う」「報告する」です。この全ての「RP」できるポイントがあります。そしてシーケンスを解体していくと更にRPできるポイントがいっぱいあることに気付くかもしれません。ここでボールが打てます。NPCとの会話であれ、部屋の描写であれ、ソニックブームとの戯れであれ、RPの機会があります。時間を見つつ(あるいは時間を無視しつつ)、ボールを打っていきましょう。ボールを打つのはPLの時と要領は同じです。GMをやる時に大事なのは「進行すること」です。ソニックブームとの会話だけではRPは進みません(ソニックブームとの戯れだけで一本のシナリオが作れる気はしますが、ヤクザの事務所はそういうシナリオではないので)。行って帰ってきましょう。行って帰ってくる過程を経て、更にソニックブームと会話することに「ヤクザの事務所」の価値があると個人的には思います。

 少し難しい話になりましたが、「ボールを打つ」ことと「進行する」ことをやっていき、ある程度場を操作してやることができるのも、GMの特権であり楽しさの一つです。アクションをしてリアクションしてもらい、その結果を経て「進行」して更にアクションする。これで基本のシナリオは出来上がると思います(もっとすごいシナリオを作る場合は脚本術とかを見ましょう!)。そしてそこに、楽しさが生まれます。

□ アサーラックになろう (G)

 アサーラックになろう。ようは「プロレスできるものを作ろう」ということです。「リスクとリターンを作り、そこで駆け引きさせよう」とも言えます。

 まず度々私のクローズドなDiscordサーバーで話題になる「アサーラック」、通称「アサーラックおじさん」について軽く触れておきます。アサーラックおじさんはかのD&D(著作権とかの関係で単に「第五版」とか呼ばれてることで有名かもしれないファンタジーTRPG)のダンジョンマスターであり、デミリッチです。彼のダンジョンは理不尽さこそありますが、「冒険者との知恵比べで死闘しねえと面白くねえ!」という理念のもと開発されているようです。彼は無慈悲さよりも駆け引きの末に生まれる楽しさを愛している……のかもしれません。邪悪ですが。

 なので邪悪になるかはさておき、そうした精神を大事に「G」の部分を作っていきましょう。無慈悲なだけのシステムはアサーラックも感じているように面白くないのです(その代わり彼のダンジョンは駆け引きに乗らないとぶち殺されるという不気味な代物ですが)。リスクとリターンを作ってやりましょう。そしてそれに挑むPLやPCを歓迎し、楽しむのです。気分はデスゲームを観戦する闇カネモチです。

 そうした駆け引きが面白さを生み出します。ですがアサーラックと冒険者の関係とは違って、GMとPLは敵ではないということを留意してください。楽しく駆け引きできるゲーム部分を作って愉悦しましょう!

■ 実際どうやっていけば良いんだろう? 編

 ここから先は結構実戦的な内容になってしまうので、まず軽くどうやってやっていけば良いか、「T」「RP」「G」の部分に分けて語っていきたいと思います。

前述した通り、割と「T」「RP」「G」は相互に関係しあっています。これは難しい点でもありますが、同時に優しい点でもあります。何故なら、どれか一つが楽しければ結果的に他の部分も良くなっていき、「楽しい卓だった!」と思わせることができるのです(ですがやはり全てが良かった時の快感は凄まじいものです。脳内麻薬ドバドバです)。

〇「T」
 T。テーブルトークをやる方法は主に一つ。卓に関する雑談をすることです。雑談チャンネルで適時ツッコミを入れたり、「ここ良いなあ」と思ったりしたことを発信することです。これだけで雰囲気が良くなり、楽しくなります。簡単そうに見えて割と難しい面だったりします。そしてGMはボールを投げ続けることが多いので、割と雑談にまで手を回せなかったりすることが多いでしょう。

 ここを磨く方法はただ一つ。面白い卓を届けることです。ただし面白い卓を届けると皆セッションに集中し始め雑談しないこともあります。なのでこれに関しては本当にその卓次第です。
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〇「RP」
 RP。ロールプレイはボールを投げて進行すれば上手くいきます。後の伏線や「使えそうな情報」を交えてロールプレイをすると、シナリオが引き締まり面白さが増します。また、雰囲気をシリアス・リラックス(ギャグ)に交互に訪れさせたり、静と動のシーンを交互に行き来させたりすることで、更に引き締まることが多いです。かの「Cyberpunk2077」や「サイバーパンク:エッジランナーズ」の系譜である【CyberpunkRED】のルールブックには「クリフハンガー(崖っぷち。つまり戦闘やピンチなどの激しいシーン)」と「進展(情報を集めたり整理する、ゆっくりとしたシーン)」を交互にやることでシナリオは面白くなると書いてありました。

 ただしこれは結構難しい技術だったりします。初めは「依頼がある」「敵がいる」「倒す」「報告する」、といった基本的な流れに沿って、実際の卓ではどのように動けば良いかを掴んでいくと良いです。とはいえ初めからそうした技術を取り入れていくのも非常に効果的です。質を重視するとどんどん面白くなるでしょう。

〇「G」
 G。ゲームの部分を簡単にこなす方法は一つ。戦闘です。戦闘があれば盛り上がります。あとはレスポンスの速度といったPLの時でも使える(あるいは意識しているかもしれない)技術が大事になってきたりするでしょう。

 ゲーム部分でシナリオを引き締めたい場合、「リスクとリターン」「駆け引き」が重要になってきます。ゲーム性については個人的にまだ試行錯誤の段階なので一概には言えないのですが、「リスクとリターン」はすごく大事なものになってきます。何故なら「リスクとリターン」がしっかりしていないと、探索のあるシナリオにおいて、PLは固まってしまうのです(特に自由な探索型であればあるほどそうです。世界のルールをきっちり整備して上手く伝える必要があります)。リスクとリターンをしっかり明確に、そして確認できるようにしてくと、そうしたシナリオやはたまたギミックでも積極的に動いてもらえたり利用してもらえたりすることでしょう。

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 ここから先は実戦的なものになってきます。とはいえ心配ご無用。GMは上手くやろうと思うと考えることはたくさんあるかもしれませんが、実際はもっと簡単にやって良いものなのです。そしてGMを成し遂げた時の快感は凄まじいものです。「疲れた~」と思う時もあるかもしれません(私もたくさんそう思いました)。けれどGMでしか得られない栄養素もたくさんあります。そして何より、貴方は「ゲームマスターをやった」という実績と、道徳的優位(?)を得ます。俺がGMだ! 道を開けろ! (というのは冗談にしても、割とGM技術はPL技術にも応用できたりできなかったりするのでやってみてください。あと皆がしあわせになります)。

□ まずは簡単なものから

 何事も初めは上手くいかなかったりするものです。TRPGのGMだってそうですが、TRPGは遊びなので、上手くいかなくて右往左往したりするのは避けたいところです(私もこんなことを書きながら日々の精進を怠っているナマケモノです)。ここからは実戦的な内容ですが、できるだけハードルを下げつつ語っていきます(そして徐々に上げていきます)。

 まずは簡単なものからやっていきましょう。これは「T」でも「RP」でも「G」でも、そして全てを合わせたセッション本編でも同様の事が言えます。本当に初心者のGMの方は、まずはそのTRPGのルールブックなどについているサンプルシナリオ(【ニンジャスレイヤーTRPG第二版】で言えば「ヤクザの事務所」)でセッションを開催するのがオススメです。サンプルシナリオは基本そのTRPGの面白さを感じる工夫がある程度詰まっていますし、かといって入門のためにそこまで要素を付け足したり洗練させたりしていないのでマスタリングも比較的容易です。そして一度そういった「洗練させる余地がある」シナリオを回すことで後述する「魔改造」を行うことも可能です。

 そして本当に初心者の方はここに書かれていたことは無視して、一度ぱーっとやってみてください。できるだけ楽しく! メンバーもある程度知り合った方とやるのが個人的にはオススメです。

 既にそういう経験がある場合、あるいはこれを読んでぱーっと楽しくセッションができた場合、まずは自分を褒めてやってください。よくやった! 貴方はGMを行い、実績と道徳的優位(?)を得た! その思い出を大切にしてください。そしてそのセッションに参加してくれた仲間達に感謝を!

 というわけで、ここから更に楽しくやれるような工夫をしていきましょう。サンプルシナリオを回した時、貴方は楽しさと達成感を感じているでしょう。そしてもしかすると、こう思ったかもしれません。

 「ここはこういう風にした方が面白いんじゃない?」と。

 貴方がもしそう思った時、貴方はもう立派なGMです。もしそう思わなくても全く心配は不要です。まず一番の財産は「GMを楽しんでやったこと」です。それがあればGMを続けられます。もしGMが上手くいかなかった、あるいは楽しめなかった時は、もしかすると貴方がサンプルシナリオや既存のシナリオを回すだけでは満足しないタイプのつよつよGMだった可能性があります。その場合は、自らの思い浮かべるシナリオを書いてみましょう(後述のセクションで語っていきます)。

 そしてもし「失敗した!」と思っても大丈夫です。前述した通り初めは上手くいかなかったりするものです。そして【ニンジャスレイヤーTRPG】などの比較的データがしっかりあるオールドスクール寄りなTRPGのGMは、人によってはマスタリング自体が結構難しかったりするものです。何回かやればきっと慣れてきます。とにかく皆で楽しむことを第一目標としましょう!(そして第一目標なんて言っておいてなんですが、そもそもTRPGは義務でやるものではないので初めはなんとなくでやるのが良いと思います)

 貴方がもし質の良い楽しさを最初から届けたいという凄まじい志を持ったGM志望の方の場合、次のセクション「サンプルシナリオ魔改造という手」や「道と壁を作る」を参考にしてみてください。今回のマスタリング講座はあまりシナリオの深い作り方を語らないので、ネットなどで検索したりもしてみるのも良いでしょう。

□ サンプルシナリオ魔改造という手

 一回や二回、あるいは数回サンプルシナリオや既存のシナリオをマスタリングしてきた方は、そろそろ「自分のシナリオを回してみたい」と思う頃合いかもしれません。あるいは初めからサンプルシナリオよりも自分で作ったシナリオを回したいんだ、という強い意志を持っている方も少なくはないでしょう。

 そんな時は、サンプルシナリオを魔改造してみましょう。ここからはマスタリングだけでなく、少しシナリオの作り方も解説していきます。シナリオの深い作り方は他の方に任せるとして、ここではシナリオを作り、どうやってそれを上手く使っていくことができるのかを語って良ければと思います。

 まずサンプルシナリオを魔改造することのメリットは何か。それはTRPGシナリオの「構造」が学べるという点です。既に小説や漫画を描いたことがある経験がある方は、多少はストーリーの作り方やシナリオの作り方をご存知かもしれませんが、TRPGが初めての創作的な活動だという方も少なくはないと私は思っています(私は中学生の頃に真似事のような小説を何回か書いたきりで、その後は特にそういった活動をしていませんでした)。創作的活動をしたことがないからといって必ずしもシナリオが作れないとは限りません。ですが既存のシナリオを解剖して、再構成するというのはこれからシナリオを作っていく上でも役立ちます。

 TRPGは「T」「RP」「G」の主な三つの要素に分かれたものですから、小説を書くのとはまた違った脳が要求されることもあるので(小説は一人で全てを作り上げなければいけませんが、TRPGはむしろ一人で作り上げてしまうと「吟遊マスタリング」と呼ばれるものになってしまうのです)、TRPGの基本的なシナリオの構造を学べるという点でサンプルシナリオ魔改造という手は優れていると思っています。

 では魔改造をする前に、サンプルシナリオを解体して、再構成してみましょう。【ニンジャスレイヤーTRPG】であれば「ヤクザの事務所」が該当するでしょう。今回はこのシナリオを解体していきます。

 ヤクザの事務所は至ってシンプルなシナリオです。ソウカイヤの上司である「ソニックブーム」にPC達サンシタニンジャは命じられ、「ブラッドカタナ・ヤクザクラン」と呼ばれる敵対的な組織のオヤブン「キヨシ」の首を取ってこい、というものです。行って、やって、戻ってくるというスタンダードかつシンプルなシナリオ構成となっています。ですがそれを行う上で、様々なイベントやシーン(【ニンジャスレイヤーTRPG】はシーン制のTRPGではないですが、オールドスクール的なTRPGにおいても「シーン」の概念は非常に使えます)が発生します。

 主なイベントやシーンを見ていきましょう。

【ニンジャスレイヤーTRPG第二版】「ヤクザの事務所」

・PC達は上司”ソニックブーム”から任務を渡される。任務の内容は「ブラッドカタナ・ヤクザクランのオヤブンであるキヨシの首を取ってこい」というもの。その他にも色々言われますが、大目標は「キヨシを殺すこと」

・PC達はブラッドカタナ・ヤクザクランに向かう。ブラッドカタナ・ヤクザクランに向かうと、まず「見張りのヤクザ」が事務所の前を警備している。PC達はここでどうすれば良いか、選択を迫られる(静かに殺すか、派手に殺すか)。

・見張りに対処して部屋に入ると、クローンヤクザやショットガン・ヤクザが出迎えてくる(初めての大きな戦闘)

・見張りの部屋の奥の部屋に向かうと、スモトリヤクザが待ち構えている。ここでは報酬が増えるトレジャーが置いてある

・クローンヤクザいっぱいの部屋とスモトリヤクザの部屋の間には、トイレがある。トイレにはヤクザが立てこもっている。

・右側の方に行くとそこには二つの部屋があり、一つはオイランアサシン「ミコチ」がいる電算室(ハッキングで万札を入手可能)、もう一つは「ブラッドカタナ・ヤクザクラン」の宝である「ブラッドカタナ(高値で売れる)」が置いてある。

・左側のボスが待ち構えている方に行くと、一つ目に「オイランの檻」、二つ目に「ヤクザの仮眠室」、三つ目に「ヤクザキッチン」がある。

・最後にキヨシやブラックマンバが待っている部屋がある。PC達はキヨシを殺し、ブラックマンバをも殺す(あるいは逃がしてしまう)。

・最後にソニックブームに報告する。

大体こんな感じなのではないでしょうか。もう少し短くまとめるとこんな感じになると思います。

・任務を受ける。
・見張りに対処し、戦闘を繰り広げる
・オイランの処遇を決めたり、トイレにいるヤクザを殺したりする
・ボスであるキヨシとブラックマンバと対峙し、戦う。そして倒す。
・成果を報告する。

 ここで勘の良い方は、「戦闘」と「その他のイベント」で分かれていること、そしてこれらは交互に来るようになっていることに気付くかもしれません(「ヤクザの事務所」はダンジョン攻略のようなシナリオなので、PLやPCの進み具合では「戦闘」が連続で発生したり、「その他のイベント」が連続で発生することもあるかもしれませんが、基本的にこのような形となっています)。

 これがシナリオの面白さの大きな土台です。もう少しイベントを深く見ていきましょう。

・ソニックブームとのダンゴウ(任務を下されるシーン)
▷ PC達は基本的にサンシタであり、反抗的であろうと従順であろうと、ソニックブームは「イキがってんじゃねえぞ?」と圧を掛け、PC達が矮小なニンジャであることを自覚させられる(-)。だが同時に、「事務所のものは自由にして良い」と言われ、金儲けのチャンスが訪れる(+)

・見張り
▷ PCは見張りにどう対処するかを迫られる。だが基本的に、モータルとニンジャの差は絶対的であり、無双できる。ここで殺し方によっては個性すら発揮できる(+)(静)

・クローンヤクザとの戦闘
▷ クローンヤクザがたくさんいる。だがジツによって一気にお掃除したりできる(++)(動)。

おかわりのショットガンヤクザが現れるが、これもPCたちはあっさりと撃破でき、スッキリする。(+++)(動)

・戦闘が終わると、PLやPCは選択を迫られる。右側に行くとハッキングを要求される(特定のPCの活躍チャンス)。なおこれは右側の部屋で探索をするとパスワードなどが入手できる。

右側に行くと、今度はオイランなどが待っている。(静)

・ミコチとの戦闘(「動」のシーン)、あるいはブラッドカタナの入手(特定のPCの活躍チャンス)、そしてオイランの檻(RPチャンス、個性発揮チャンス)、寝ているヤクザ(「進行」に必要な情報の入手)、ヤクザキッチン(回復アイテムの入手)、スモトリヤクザとの戦闘(「動」のシーン)

・様々なものを切り抜け、オヤブンのキヨシとニンジャであるブラックマンバと対峙する。ここでPC達は初めてのニンジャ戦闘などで苦労しながらも、倒す(クライマックス)(++++)(動)

・ソニックブームに報告する。少しだけ認められたりする(変化)(静)

 今度は少し複雑になってしまいましたね。ですが、何となく言いたいことを掴めて頂けたのではないでしょうか。

 シナリオには「静」と「動」(激しくないシーンと激しいシーン)、テンションが「マイナス」になるか「プラス」になるか、そしてその他「特定のPCが活躍できる余地」「RPができるシーン」などが存在しています。これについては深く語り過ぎるとキリがないので別の方に任せますが、ようはシナリオはこういった複数の様々なパーツによって構成されたプラモデルだとか、パソコンだとか、そういうものだと思って頂ければ大丈夫です。

 話を戻すと、こういったシナリオの「構造」を探っていくのはとても勉強になります。そして端的に言うと、大体の場合が「同じようなシーン」が続かないようになっていることに気付くでしょう。例えば「ソニックブームとのダンゴウ」の次に「ダイダロスからのヤクザクランのMAPについての説明」などは起きないわけです(それはそれで原作ニンジャがいっぱい出てきて楽しそうですが、おはなし聞くだけおはなし聞くだけになっちゃって、あまり盛り上がれないでしょう)。

 今回は難しいパーツの話は置いておいて、シナリオは基本的に「クリフハンガー」と「進展」、そして「起承転結」で構成されていることが多い(そしてそうすると面白くなる)ということを覚えていってください。「■ 実際どうやっていけば良いんだろう? 編」の冒頭でもお話したように、シナリオは様々な方向にPLやPCを振ることで引き締まります。最初のうちはなかなか難しいかもしれませんが、これがやれれば貴方はもう相当カラテを積んだGMということになります。なんてこった!

 そして更に更に、「サンプルシナリオ魔改造」という話に戻していきます。難しい話が続きましたが、ようはシナリオはこうした様々な繊細なパーツの集合体なので、その構造を理解してやるとシナリオを改造する上で(そしてシナリオを自作してしまう上でも!)とても役に立つのです。

 さて、シナリオが「クリフハンガー」と「進展」、そして「起承転結」によって作られていることを確認した貴方は、もうほとんどの「言われて行ってやって帰ってくる」ようなスタンダードなタイプのシナリオは作れてしまうかもしれません。そうなったら、実際ガワを変えてみるなり、ちょっとシーンを削ったり増やしてみるなり、試行錯誤してみてください。するとあら不思議! 貴方だけのオリジナルシナリオがそこにできています。では早速マスタリングしに行きましょう! 私とかを誘ってね!

 冗談はさておき、ここからは「ヤクザの事務所」を解剖する上で少し役立つかもしれない情報を教えちゃいます。

 解剖していく段階で、もしかすると一部の方は「ヤクザの事務所」は「起承転結」における「転」の部分が弱い(または存在しない)と思うかもしれません。これに関してはPLであれGMであれ初心者向けのシナリオであることが関係しているのではないか、と昔このシナリオについて様々な方と話し合った時に出てきました。つまり、もうここで「魔改造」してやる余地があるというわけです。

 また、「ヤクザの事務所」に関しては「部屋(シーン)が多い」と言われることもよくあります。無駄な部分を切り落としてシナリオをソリッドに、そしてよりコンセプトを明確にするのも楽しさに繋がります。特にスモトリとの戦闘は冗長になりがちなので、カットしようと思う方が多いのではないでしょうか(冗長な戦闘はPLもGMも盛り上がりにくいですからね)。

 そして最後に、強制的に「転」を作る方法をお教えます。「転」はようはどんでん返し、状況がひっくり返ったり何かイレギュラーが発生したりすることでもあるので(そんなに単純な話でもないですが、大体はそういうものです)、ここを利用します。結論から言ってしまうと、「ブラックマンバ(ニンジャ。強力なボス)の存在を隠す」ことです。そして、オイランなど情報を与えてくれるキャラクターに「ブラックマンバの存在を仄めかさせる」のです。これでちょっと「転」らしくなります。多分。

 そんな感じで、皆さんもサンプルシナリオの魔改造をやってみてください。解剖を行い「構造」を理解し、その上で必要なシーンを付け足したり不要なシーンを削ることで、そのサンプルシナリオはいつの間にか「オリジナルシナリオ」になっています。レッツ魔改造!

□ 道と壁を作る

 ここまで読んで頂いた皆さんは、シナリオやマスタリングにある程度の指針があることをある程度理解したことでしょう。ここからは更にハードルが上がってきます。私自身のハードルも上がっています。なにせここから先は私もあまり理解が進んでいない領域だからです。ですが「どうせならもっと上手いGMをやって楽しませたいんだ!」という方向けに語っていこうと思います。

 まず「道」と「壁」とは何か。

 「道」はいわば世界であり、その世界の中でも「PLやPCたちが進むべき場所」であると言えます。そして「道」を作るというのはあらかじめ道を舗装しておくことではなく、PLやPCの提案などその時々に応じてあたかもその方々が新たな道を開拓したように見せかけ(あるいは本当にそうして)、開拓された道を舗装していくことだと私は考えています。身も蓋もない(そしてだいぶ悪趣味な)ことを言ってしまうと、GMは吟遊詩人ではなく詐欺師になるべきなのです。ですがあらかじめ開拓される大陸がなければPLやPCは動けません。そこで貴方は世界を作るのです。そこが楽しみの一つでもあります。

 そして「壁」は、前述した通り「試練」です。開拓には様々な危険や難関を伴います。ですがその壁は一見完璧そうで越えられる余地がなさそうでも、様々な方法で解決できるものであるべきです。縄を引っかけて登ることもできるかもしれませんし、もしかしたら一見抜け穴がなさそうに見えてあるかもしれません。あるいは一部の場所が脆くて、スコップで掘ると道が開けるかも……ようするに、その壁に応じて様々な解決方法があるべきです。全ての壁にあらゆる対処方法があるべきだとは言いません(そうするとゲーム的に有利なPCだけが壁を攻略していくことになってしまいますからね)。いろんな壁を、バリエーションをつけて配置しようということなのです。そして、前述した通りそれをあまり悟られないようにしましょう。なのでGMは詐欺師になるべきなのです。

 すごく抽象的で例えが多すぎて分かりにくいかもしれませんが、「壁」に関しては先の「サンプルシナリオ魔改造という手」でも話した「個性を発揮できる場所を作る」「特定のPCが活躍できるチャンス」といったものを、ごく自然に配置してやる、ということです。

 そして「道」はそれらを乗り越えたことに対する報酬であり、自分達によって道が切り拓かれ、話が進んだと自覚させるものなのです。

 これに関しては具体例は言えません。ですが先の「ヤクザの事務所」でも実はこういったものが採用されています。

 まず、右側の「ミコチの部屋(電算室)」に行くためのハッキングが必要な扉。これは、一見ハッキングが得意なPCにしか攻略できないようなものです。しかし、道を進んでいくと寝室にいるヤクザがパスワードを教えてくれるのです。あるいは、GMのアドリブによっては「オイラン」に話させるのも手です。もしかすると、入口の方の見張りヤクザを活かしていた場合、彼が教えてくれたりするかもしれません。そうすることで、PLやPCは「自分の手で進行を掴み取った」「自分達で話を、状況を動かすことに成功した」と思います。アドリブが必要になってしまいますが、これが本当に楽しいのです。

 GMはこれらのことを、PLやPCにごく自然にやらせる必要があります。特に探索型のシナリオであれば、更なる工夫が必要になってきます。そのためには、前述した「G」……「リスクとリターン」を上手く調整してやる必要があります。この世界において何がリスクで、このリスクを冒すと何が得られるのか? そういったものを明確にしておくことで、PLやPCは固まらず積極的に行動してくれます。

 また、これを行わせる前にある程度の準備運動として簡単なシナリオ(例えば「ヤクザの事務所」のような、進んでいくだけで楽しいシナリオ)を大枠のシナリオに組み込むという手もあります(サブプロットとも呼ばれているやつです。多分)。そうしてPLやPCを世界に”慣らせ”、いざ問題が起きたぞ、どうする? と問いかけるとあら不思議。どうすれば良いかがある程度わかっているPLやPCたちは、自主的に問題を解決しようとしてくれることでしょう。これが「誘導」とも呼ばれるものです。もっと露骨でも全然構わないのですが、オールドスクールにおいて「T」も「RP」も「G」も最高の水準で達成する場合はこうした工夫が必要になってきます。

 「道」と「壁」。そしてこれらを作るというのは、本当に難しく奥深いマスタリング技術の一つだと私は思っています。これを軽々とこなせるようになったのなら、あるいはこれをもう既にある程度こなせるというのなら……貴方は立派過ぎて神々しいくらいのGMです。皆さんも頑張ってください。私も精進します。

□ おまけ:何も浮かばなくなったとき

 何回かシナリオを作っていると、突然アイディアが尽きたり、「ここら辺面白くないかもな……」とか思ったりすることもあります。ここではそんな状態に陥った時の対処法を軽く語ってみます。

 まず貴方が深夜に作業している場合……それは寝た方が良いです。寝ましょう。寝ろ!

 深夜に最高なものを作れると脳内麻薬がドバドバしてウハウハしますが、逆にうんうんと唸っている状態になった時はその深夜を費やしてもほとんど何も浮かばないと思った方が良いです。次の日の朝とかに突然アイディアが湧いてきたりすることもあります。とはいえこれは個人差ですから、是非自分がアイディアを出しやすい時間やマインドセットの方法などを探してみてください。なおこんなことを言っている私も、深夜にうんうん唸ったりすることも多いです。とりあえず寝ようね。

 そして特別疲れているとか、深夜に何も浮かばず作業しているとかではない場合……その時は、もしかするとインプットが不足している場合があります。他の創作的活動でもそうですが、脳内のアイディアは弾切れするものです。そうした時は小説や漫画、映画を見ましょう。個人的には映画がオススメです。連作ドラマなどを見る手もあります。今の時代は様々なサービスが充実していますから、そういったもので軽く映画を見てみると良いです。するとテンションは上がりますし、テンションが上がるとアイディアも出てきます。楽しいは更なる楽しいを生み出すのです。いろんなものを見ましょう!

 また、アイディアはあるけど詰まった……という場合、前述した「サンプルシナリオ魔改造という手」にあった「構造」を理解する、ということをやってみたりすると良いです。解剖し再構成することで、そのシナリオがどんな意図をもって作られたのか、どんなところが”ウリ”なのか、そういったことを学ぶことができます。そして何もこれはサンプルシナリオや既存のシナリオだけに限りません。小説や漫画、映画だってそうです。特に映画は基本的に2時間以内に「起承転結」があり……ハリウッド映画であればもっというと「三幕構成」に沿って作られています。良質なエンターテイメントである映画を解剖し、再構成できるようになると、貴方は映画のような極上の体験を生み出すGMへの一歩を踏み出すことができるでしょう。

 アイディア出しの方法はビジネスであれ創作であれ、ネットにも様々な方法が転がっているのでそれを参考にしてみてください。また、制限時間を決めることも有効です。時間を決めずにやると人は怠けてしまったりするものです(私だけかもしれませんが)。

 そして何よりアイディアを出したりする段階では、楽しむことが重要です。イラストなどでもラフ(線画などの本番前に描く下書きの下書き)は細かいことは置いておいて楽しく描けと言われたりもしています。TRPGのシナリオだって同じです。まずはシナリオのラフを楽しく書きましょう。エンジョイ!

■ あとがき

 TRPGのGM(ゲームマスター)は難しい奉仕業務だとか思われていることもあるかもしれません。ですが私はそうは思いません(少なくとも今は、そう強く思わなくはなくなりました)。

 GMだって楽しいのです! 

 何故なら、貴方がGMをやらなければPLやPCは楽しく遊べる場すらなかったことになるのです。貴方の卓あってこそ全ては輝く! 自分がやらなければ他のGMのところに行くだけ、自分はやらなくても別に良いや、と思ってしまうこともあるかもしれませんが、ようはそれだけPLは卓に飢えているのです(GMをする私だって飢えています)。なので貴方の卓だって当然歓迎されます。そして卓をする時は

「フハハ、私が初心者GMだと知りながらここに入ってくるとはさては物好きだな」

 とか図太いことを考えながら、PLを楽しませることを重点してやってみてください(ドンと構えることは本当に大事です)。「どうすれば自分も皆も楽しめる卓ができるの?」で述べた通り、GMが真の楽しさを実感できるのは吟遊マスタリングと呼ばれるような自分の物語をただ語ることではなく、相手から喜びの悲鳴を浴びることです。喜びの悲鳴が最強の栄養素です。PLから良い悲鳴を搾り取っていきましょう。

 そんなわけで、今回は「GMって楽しいものだよ!」ということを重点に語っていきました。最後の方は結構難しい話もしてしまったので、ちょっと難しそうだな……と思う方もいるかもしれませんが、大丈夫! 「まずは簡単なものから」です。無理にハードルを上げることはありません。まずはやってみましょう! そして楽しんでね!

 そして最初からチョーおもしれえ卓をやりてえんだ! という方は……最後まで書かれたことをじっくり咀嚼しながら(そしてペッと吐き出したりしながら)やってみてください。質を重視すると、結果的に超質の良い卓を開けるようになると思います。

 皆さんもGMを楽しんでね!
 参考になれば幸いです。応援しています(そして是非その卓に参加させてください。お願いします……へへへ)


我流マスタリング講座Ver2.0「GMって楽しい!」 終わり


□ 余談
Ver2.0があるからにはVer1.0もあるのですが、こちらは2.0よりも文章が乱雑な上ストレス削減の話(面白い話を面白いまま届ける技術という名目)しかしてなかったので今も筆者のクローズドなDiscordサーバーで眠ってもらっています。

履歴

20220928:公開


踊って喜びます。ドネートは私の生活や他のクリエイター様のサポートなどに使わさせて頂きます。