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夢が叶うか叶わないかは、ずっと先のことなのだ。

先日、日向坂メンバーの出演していたドラマ「声春っ!」が最終回を迎えた。

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実は今まで見たことがなかったのだが、最終話を迎えたとのことで、思い切って1話から一気見することにした。う~ん、無謀。

今、ちょうど見終わって、新鮮な気持ちが残ったままこの文章を書いている。外が明るい…

無事に全話見終えたわけだが、色々と考えたり、自己に投影する部分があったので、そんな感想なんかを書いていこうと思う。

※この先、ネタバレ含みます!

・青春の光と影、そのリアルさ

前回日向坂がメインとして出演していたドラマ「DASADA」と同じく、今回も学園物ストーリーだった。

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そして今回も、目標に向けて仲間たちと共にひたむきに走る、青春ストーリーが軸だった。

笑いあり、シリアスあり、感動ありで、両作品とも単純に作品として見応えがあった。日向坂が出ているということを抜きにしても、だ。

ただ、「声春っ」のほうが、より生々しいというか、感情移入しやすい構成がされていたと個人的に思う。

後々に述べる人間関係だったり、理想と現実、そして葛藤。学生時代には誰しもが味わうであろう「青春」と、その裏にある気持ちの揺れ動き。見ていて思わず共感してしまうシーンがいくつもあった。

・距離の近さは、時に自分を苦しめる

今作の主人公は、佐々木美玲演じる「日ノ輪めいこ」と、丹生明里演じる「天道まな」。

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2人は同級生だが、引っ込み思案のめいことは対照的に、天真爛漫、コミュ力抜群のまな。そんなまなにめいこは引け目を感じてしまう。

そしてそれは、普段から仲が良いからこそ、余計に意識してしまい、コンプレックスを感じてしまう。

7話で、あれほど期待されていためいこではなく、めいが選ばれるシーンでは、その思いの丈をぶつけて飛び出して行ってしまう。

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仲が良いとはいっても、声優を目指すうえではライバルだ。慰めの言葉をかけても、それが素直に受け入れられるほど人間は強くない。わかっていても複雑な感情は生まれる。それが顕著に表れた場面だった。

そしてもう一組。金村美玖演じる「月川雪菜」と河田陽菜が演じる「本田多恵」。

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多恵は雪菜を尊敬しており、雪ネェと呼びどこまでもついていく。そんな多恵だが、雪菜と一緒に受けたオーディションで彼女が合格を果たし、アイドルとしてデビューを果たす。

諦めずに何度もオーディションに挑戦し続ける雪菜と、そんない自分をいつも尊敬してくれていた存在の多恵。雪菜は自暴自棄になり、こう疑う。

「今では自分のことを見下しているのではないか?」

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仲の良い友人と、ふとした出来事がきっかけで「格差」ができてしまい、お互いに気まずい雰囲気になる。自分にも似たような経験があり、少しぞっとした。

しかしそれは結局、自分の思い込みに過ぎない。そういう仲の友人は、これしきのことで自分を見捨てるほど薄情ではないのだ。

まあ最も、そう気づくのは後になってからだが。

めいことまな、雪菜と多恵も、そうしていつの間にか関係を修復させていった。

・理想と現実には、たいていギャップがある

前述の通り、めいこは引っ込み思案で声も小さい。それでも、憧れの作品に出演するため、声優学校に入学し力をつけようとする。

しかし、周りにいるのは、一癖も二癖もあるが実力派のライバルたち。

ドラマではよく出てくる「主人公の幼馴染で、優秀だが嫌な奴」尼崎あまね(渡邉美穂)

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めいこに「ライバル宣言」を堂々と突きつける、明るいもう一人の主人公まな

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作中屈指の美人(設定)で、モデルと声優の両立を目指す草間愛理(上村ひなの)

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多恵や雪菜も、もちろんそうだ。そんな仲間たちと出会い、めいこは自信をなくしてしまう。

世の中の人間全員が、自分の思い描いた理想通りに生きているとすれば、世界はもっと平和なはずだ。

しょうもない争いや不満が絶えないのは、世の中の大体の人間は理想とのギャップに苦しみながらも、なんとか現実に生きている人たちがいるからだと思う。

僕も、なんども「理想」というものに心を折られてきたし、痛い目を見させられてきた。

理想を諦めるのは簡単だが、理想を叶えるために努力することは誰にでもできる。

そんな人間に「なるか、ならないか」だ。

めいこは苦しみながらも、理想を最後まで追うことができた。そこに、かつて自信がなくオドオドしていた姿は、どこにもなかった。

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・諦めなければと人は言うが、諦めてしまう一歩手前が一番苦しい

ドラマや漫画の登場人物たちは、壁にぶつかったとき、それでも自らの力、あるいは仲間の力を借りて困難を突破する。「努力は裏切らない」「諦めなければ道は開ける」とはよく言ったものだ。

が、実際に壁にぶつかった時を想像してほしい。

あなたにはそれでも諦めず、乗り切る自信はあるか?

もちろん、最初から諦めるという人ばかりではなく、頑張り続けることができる人もいるだろう。

が、「もうこれ以上は無理だ」と挫折するラインと、「ここを超えれば上手くいく」というラインは案外紙一重ではないかと思う。

そのラインを超える「精神力」を持っている人が、現実にどれくらいいるのだろうか。

作中でも、何人もの登場人物たちが挫折を経験し、不遇に泣いた。

尼崎あまねもその一人だ。

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地元で有名な旅館の1人娘で、学業優秀、容姿端麗、学校ではヒエラルキーの頂点。めいことは幼馴染だがまさに正反対の存在である。

声優学校でも優秀ぶりを存分に発揮し、上手くいかないめいこをあざ笑うシーンがいくつもあった。

しかし、自らも声優である学校長や周りの人たちはそんなあまねではなく、めいこに注目し、評価していくようになる。

「自分の方が圧倒的に優秀なはずなのに、なぜあいつが」

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そんな彼女も、めいこの可能性を認めるようになる。そして、自ら身を引こうとするのだ。

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いつも気丈にふるまっていた彼女が涙を流すシーンは、非常に印象深かった。しかし、そんな彼女を引き留めたのは、あれほど自分がいじめてきためいこだった。

・最後に

「ドラマだから」ハッピーエンドになった、という斜に構えた見方はあまり好きではないが、最終話でのめいこを見て本当に安堵した自分がいた。

いつもめいこが持ち歩いているハンカチには、「ルーナ」というキャラクターがプリントされている。

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物語では狂言回しの役割を担い、どんな時でもめいこを見守り続けた、縁の下の力持ちだった。

そんなルーナの声を演じていた潮紗理奈が、最終話に声優として登場。めいこと出会いを果たすのだ。

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最終話にはいくつも見どころがあったが、僕はこのシーンで思わず目頭が熱くなってしまった。

いつもどんな時もめいこを応援し続けていたルーナ。その声にこたえるかのように、めいこは夢だった声優になることができた。

「声が届いた」のだ。

夢を追いかけ続けることの困難さ、自らの才能に限界を感じてしまう挫折、周りに置いて行かれる焦燥感。誰しもが経験したことのあるものではないだろうか。

僕はあまりにもめいこに感情移入してしまい、辛さのあまり何度見るのをやめようと思ってしまったか…

やりたいことを叶えるのに、一人で走るのはあまりにも過酷すぎる。

切磋琢磨する仲間、支え合う友人、背中を押してくれるたくさんの声。

いつその「声が届く」かはわからないが、それが届く日を信じたい。

その時まで走り続けるしかない。未来はまだ誰にもわからないのだから。

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そう決意させる作品だった。



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