じつは拙書、コミカライズされております……。一般的にコミカライズというと、原作に人気が出てから漫画化される流れです。ところが拙書は出版と同時にコミカライズが決定していた！　なんで！？　どうやら編集長さまが以前にちゃおコミの編集長をなさっていたそうで、そのつながりからちゃおコミでコミカライズが実現したのですけれど「そのつながり」ってなんなん？？　そんなんで気軽にコミカライズできるの？？　いまだに謎です。

　編集長さまから「原作者としてコミカライズの監修をお願いします♪」そう言われて、ラフや完成原稿に目を通していました。これがもう、わたしの書いたお話とはまったく別物！！　わたしは文章でサラリと「城の庭園には観客がひしめいていた」と書いているだけです。それなのに漫画ではちゃんと大坂城が描いてあって、当時に実際あった庭木が描いてあって、安土桃山時代の着物を着た群衆がひしめいている！！　すみません！　作者ですがそこまでちゃんと考えていませんでした！　文章で「書く」のとイラストで「描く」のは大違いでした！！　どれだけたくさん調べて描いてくださったか、想像しただけで土下座でお礼を申し上げたい！！

　そして小説と漫画のちがいは、キャラの動きにもあらわれます！　小説は動いているキャラにだけスポットライトが当たります。他のキャラはいないも同然なので、文章に書かれない。ところが漫画はちがいます！　動いてなくても画面にいる！　いるからには描かねばならない！　そのシーンに合った表情でちゃんと存在している！！　すごい！　

　もともとキャラデザインはイラストレーターの七海喜（なみき）つゆりさんがしてくださいました。ピュアで可愛い双子のお姫さまを考えてくださった。そして七海喜さんのデザインをもとに、くろだまめたさんがコミカライズしてくださった。プロはすげぇと感動したのが、ピュアで可愛い七海喜さんの描いた姫さまたちなのに、くろだまめたさんが描くとコミカルで色っぽいキャラに変化したのです！　まったく同じ見た目なのに、描く人がちがうと印象まで変わる！　やっぱプロはすげぇな！！

　わたしが考えてもいなかった姫さまたちの動きやちょっとしたセリフが漫画で描かれるのを見るうちに、「これはわたしの書いたお話じゃないな」そう思うようになりました。種を植えたのはわたしかもしれないけれど、漫画として花を咲かせたのはくろだまめたさんです。わたしが考えてもいなかったことまで考えて調べて描いてくださっている。

　回が進むにつれて、くろだまめたさんの面白さが画面に出てくるようになりました。大筋から逸脱しない範囲で、くろださん解釈のキャラたちが活躍している！　面白い！！　　この頃からわたしは作者としてではなく、一読者としてお話を楽しむようになりました。わたしの書いたお話は面白いけれど、くろださんはさらに面白くしてくださる！！　これって原作に関係なく、くろださんが自由に描いたほうが作品として面白い！！

　そういう想いを担当さまと相談して、編集長さまへあるお願いをしました。そのお願いとは「ソウ　マチを原作者から原案者に変えてほしい」です。原作者である以上は、オリジナルから逸脱しないようコミカライズを監修する必要があります。でもお話がもっと面白くなるなら、別なお話として描いてもらっていい。それで読者さまが喜んでくださるなら、独立したお話を描いてもらいたい！！　それならわたしは「原案者」になります！

　大人の事情の話になりますけれど、原作者と原案者はギャラがちがいます（苦笑）。原作者のほうがギャラが高い。ｗｗ　ゆえにわたしは自分で自分のクビを締める決定を下したのですけれど、後悔はござらん！　自分のギャラも大事だが、読者さまが楽しんでもらえる作品のほうがもっと大事だ！！　　今後のお話は好きに描いてください！　文句は言いません！！

　そして願いは通じて、無事に原作者から原案者になった矢先、連載がストップしてしまいました（苦笑）。いま思えば「あなたの好きに描いてください！」と言われたくろださんのプレッシャーが限界を超えたのかもしれません。良かれと思って言ったことが、くろださんのストレスになったのかもしれない。もしそうだったら、ごめんなさい……。

　もしもコミカライズされたお話がつまらなかったら、ガン詰めしたと思います。でもわたしが考えたお話をもっと面白くしてくださった！　だから好きに変えてもらっていいと思った！　くろださんなら間違いない！！　そう思っていましたけれど、ストップしてしまいました。いつか連載は再開されるのだろうか？？　せめて一応の結末まで描いてほしい……。ずっとお待ちしております☆