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JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN

ロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズをお読みになったことはありますか。元プロボクサーの私立探偵:スペンサーが、ボストンの街を舞台に依頼人から持ち込まれる難事件の解決に挑む小説です。主人公のスペンサーは、当然のことながら強く、勇気があり、ユーモアのセンスに富み、鼻につくほどの教養を備え、ハーバードの学位を持つ美人精神科医の恋人がいて、料理が得意なレッドソックスの大ファン。私にないものばかり。 そして、軽妙な会話、恋人との絶妙な距離感、チンピラを蹴散らす爽快感、殺し屋と対

    • Jubilant power / Ted Curson & Company

      ジャズ・ファンなら誰もがご存じ天才リー・モーガンは、恋人に射殺され若くしてこの世を去ってしまいましたが、彼の死後、1970年代の一時期だけ『ポスト リー・モーガン』と騒がれたのがテッド・カーソン。マルチ・トンペット奏者です。脚光を浴びたのがほんの一瞬だったことから、昔も今もジャズ喫茶でもほとんど聴く機会のないミュージシャンですが、ナイスなサウンドです! 演奏の基本的なスタイルはハードバップなんでしょうね。アップテンポな曲、ミドルテンポ、スローなバラードまで、いずれも分厚い音色

      • Four & More / Miles Davis

        私は過去を振り返らない。未来を想像することもしない。大切なのは、今この瞬間だけ。なぁ~んて言えたら、カッコいいですね。 しかし、ここでは過去を振り返り、今この瞬間を思い、未来を考えました。これまで私が聴いた中でもっともカッコいいアルバム。将来、これを超えるようなアルバムが登場するのだろうか?とジャズ界の未来を憂いてしまうほどカッコよすぎるアルバムをご紹介します。 Miles Davis/ Four and More 録音された1964年当時(東京オリンピックが開催された年です

        • A SLICE OF THE TOP/Hank Mobley

          亡くなってから俄に評価が高まる芸術家や学者ってけっこういますよね。BSEが社会問題になったときの吉野家にも似たような現象が起きました。輸入牛肉がたべられなくなり、豚丼がメインメニューになった途端、それまで見向きもしなかった人まで「牛丼アゲイン!」と言いはじめました。世の中、うまくいかないものです。 私のアイドル、テナー・サックス奏者のハンク・モブレーもそんな芸術家の一人です(牛丼に似ているとか、そういうことではありません)。サックスの音色は非常にまろやかで、挑みかかるようなフ

        JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN

          JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN

          ロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズをお読みになったことはありますか。元プロボクサーの私立探偵:スペンサーが、ボストンの街を舞台に依頼人から持ち込まれる難事件の解決に挑む小説です。主人公のスペンサーは、当然のことながら強く、勇気があり、ユーモアのセンスに富み、鼻につくほどの教養を備え、ハーバードの学位を持つ美人精神科医の恋人がいて、料理が得意なレッドソックスの大ファン。私にないものばかり。 そして、軽妙な会話、恋人との絶妙な距離感、チンピラを蹴散らす爽快感、殺し屋と対

          JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN

          BLUES‐ette CURTIS FULLER’S QUINTET featuring Benny Golson

          単身赴任の経験はありますか?  それとも単身赴任中ですか? 私は、40歳をはさむ数年間、仙台と名古屋での単身赴任を経験しています。 ある日、役員に呼び出された私は、転勤の内示を突きつけられしました。その時すでに東京を生活の本拠地と定めておりましたので、即座に単身赴任を決意…そんなわけはありません。妻に「みんなで行こうよ!」などと猫なで声で相談したところ、「一人で行けば!?」とあっさり同行を拒否されたのです。 そのようなわけで、行く手にどんな冒険が待っているのだろうか!?とワク

          BLUES‐ette CURTIS FULLER’S QUINTET featuring Benny Golson

          SOMETHIN’ ELSE / CANNONBALL ADDERLEY

          寂しいですね!夏が終わってしまいました。 「地球温暖化」という言葉が取り沙汰される以前、東北では夏祭りが終わると秋に向かって季節が一気に加速する感じでしたが、近年は状況が変わってきましたね。しかし、そのようなことを心配してもしなくても、間違いなく秋になり、やがて冬に突入します。 そこで今回は季節を先取りして、名曲「枯葉」を聴きましょう。 Somethin’ Else は、名盤の中の名盤です。 Cannonballのアルバムとして発売されていますが、これはレコード会社との契約上

          SOMETHIN’ ELSE / CANNONBALL ADDERLEY

          GETZ/GILBERTO

          東北は祭りのシーズン真っ盛り。幼い頃から馴染んだ仙台七夕まつりですから、3日間の開催期間中に1日は吹流しの下を闊歩したくなる仙台っ子でございます。 日頃は薄化粧、飾り気のない居酒屋のおばちゃんも、この日ばかりはちょっと派手目のワンピース姿、胸には花のブローチ。いつもより格段に色鮮やかな口紅を塗ってお店に立ち、狭く古びた店内は華やいだ雰囲気になります。私は、ビール&枝豆につづいて焼酎をひっかけ、気分がよくなったところで七夕飾りを眺めながら人混みの中を闊歩する。お祭り気分を堪能し

          GETZ/GILBERTO

          BLACK BEAUTY / MILES DAVIS AT FILLMORE WEST

          かつて俳優の内藤剛志さんと仕事でご一緒したとき、 休憩時間にマイルスの話で盛り上がりました。 50年代はフレーズ&トーン、60年代はパワーとかなんとか… 次の撮影本番ギリギリまで演奏スタイルの変遷やアルバムが問いかけた意味など、ファンでなければ「何言ってんだい!?こいつら」と言われそうなことを話し込んでおりました。 そして、「どの時代のマイルスも好きだ!」ということで意見が一致した次第です。 しかし、一つ意見が分かれたのは、“マイルスを家族揃って聴くかどうか!?”という問題。

          BLACK BEAUTY / MILES DAVIS AT FILLMORE WEST

          Return to Forever / Chick Corea

          仙台でも夏の足音がかすかに聞こえるようになってまいりました。本日の最高気温は27℃との予報。午後からは雨になるのだとか・・・ ここ STUDIO 080 のオフィスに引っ越したのは冬に向かう11月で、もうとにかくオフィスは寒かった。特に月曜日の朝は、建物自体が完全に冷たくなっていて、エアコンの温度設定を上限いっぱいまで上げても、ガタガタと震えが止まらないような状態であったことを記憶しています。あれから8ヶ月の時が流れ、STUDIO 080 は営業を開始。固定デスク会員の獲得に

          Return to Forever / Chick Corea

          Ballads / John Coltrane

          かつて、これほどまでに神格化されてしまったミュージシャンは、彼の他にいないでしょう。おそらく、それは日本独自の現象であって、米国人の間では間違いなくジャズの巨人の一人ではありますが、one of the best jazz giants としての扱われ方をされていると思われます。 ジョン・コルトレーンは、マイルス・デイビスのグループに参加していた無名の時代「あの下手クソ野郎をやめさせろ!」とファンから散々非難されました。実際、若いころに録音された彼の演奏は、“野暮ったい”とい

          Ballads / John Coltrane

          Toshiko MEETS HER OLD PALS 秋吉敏子

          宮城県の言葉訛りをご紹介しましょう。 例えば、 「殆ど」⇒「ほどんと」と読みます。これは、県民のほどんとの人が正しい日本語と信じて疑うことのないまま使っている言葉です。 「長靴」⇒「ながくづ」、「座布団」⇒「ざふとん」 これらは、濁点の付される部位の違い、あるいは有・無によって生じる発音の変化で、初歩的な訛りということができます。 宮城で生まれ育ち、この地で生きてきた方の言葉は、実際には文字ではとても表現できない音、真似のできないイントネーション、独特のリズムなどに満ち溢れて

          Toshiko MEETS HER OLD PALS 秋吉敏子

          COOL STRUTTIN’ / SONNY CLARK

          いかがです? なかなかでしょ!  このジャケットを見ていると“足元だけじゃなく、もっと上の方も見てみたい”という誘惑にかられる貧しい脳ミソが、妄想の迷宮に迷い込みます。 パンプスを履いて颯爽と街を歩く、気位の高そうな女性… Cool Struttin’ ここは、タイムズスクエアあたりでしょうか? 彼女の場合、ティータイムには必ず紅茶。コーヒーとドーナツなんてあり得ません。お酒は、マティーニと決めています。「とりあえずビール!」なんてとんでもない!一杯のマティーニを、時間を

          COOL STRUTTIN’ / SONNY CLARK

          Into Eternity / 日野皓正

          高校に入学した私は、迷うことなく陸上競技部に所属。偉大なスプリンターになるつもりだったのですが、股関節の故障により僅か6ヶ月で引退。もうちょっと雰囲気のある部位のケガあってほしかったのですが、よりによって股関節とは…ああ、悲しい。 そこから、私のジャズ喫茶通いが始まりました。「通う」といっても高校生のお小遣いですから週に1回、学校帰りの寄り道です。もちろん、制服は上下まっ黒の詰襟。その格好で、Mal(国分町・味よしの上)、Down Beat(中央何丁目だったか?!)、 Cou

          Into Eternity / 日野皓正

          modern art / Art Pepper Quartet

          私は典型的な日本人でありますので、絵画なら印象派が大好き。特に、クロード・モネの絵が好きですねぇ。絵画展があると、仕事をサボってでも美術館に足を運びました(昔の話ですから誤解のないように)。 音楽の世界も絵画のムーブメントと時代が符合するように印象主義(音楽の場合「派」ではなく「主義」という言葉が使われています。どうでもよいことです…)が、19世紀後半に登場します。ラヴェル、ドビュッシーがその代表。そして、どちらも偏屈であったり、変態チックな趣味があったようです。 ここでの話

          modern art / Art Pepper Quartet

          Jazz Bach / Eugen Cicero

          「JAZZは、むずかしい…」という言葉をよく耳にします。それは、評論家の先生方をはじめ、私のようなジャズ・ファンにも問題があるのではないかと思っています。 ジャズに興味のない相手に向かって無理やりジャズを語って得意になったり、ファン同士で小難しい議論に熱中し、他の友人を置き去りにする…まったくおめでたい話です。それらは、人々をジャズから遠ざける行為に他ならないと反省している今日このごろ。 まずは楽しめればいいのです。殺風景な時間や空間に、ほんの少し色がつけばいい。乾燥した心に

          Jazz Bach / Eugen Cicero