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A SLICE OF THE TOP/Hank Mobley

亡くなってから俄に評価が高まる芸術家や学者ってけっこういますよね。BSEが社会問題になったときの吉野家にも似たような現象が起きました。輸入牛肉がたべられなくなり、豚丼がメインメニューになった途端、それまで見向きもしなかった人まで「牛丼アゲイン!」と言いはじめました。世の中、うまくいかないものです。
私のアイドル、テナー・サックス奏者のハンク・モブレーもそんな芸術家の一人です(牛丼に似ているとか、そういうことではありません)。サックスの音色は非常にまろやかで、挑みかかるようなフレーズこそありませんが、サウンドのかっこ良さでは他のミュージシャンを寄せ付けません(そう思っているのは私だけかなぁ…)。
しかし、現役時代は同じテナーを演奏するジョン・コルトレーンやソニー・ロリンズといった大スターの影に隠れてしまって、脚光を浴びる機会の少ない存在でした。そして、B級的評価を背負ったまま86年に没するわけですが、亡くなってから「ハンクは、すばらしいプレイヤーだった。彼のアルバムはもっと積極的に聴くべきだ!」なんて評論家に評されました。そんなのちっともうれしくないですよね。
今回は、現役時代、評価に恵まれなかったハンク・モブレーの異色の作品A SLICE OF THE TOPをご紹介します。何が異色かといいますと、ホーン・セクションが、テナー・サックス、アルト・サックス、トランペット、ユーホニウム、チューバという大がかりな編成。デューク・ピアソンのアレンジが冴えていて、非常に重厚なサウンドに仕上がっている点です。ハンク・モブレーは、ブルーノートというジャズの名門レーベルに大量の録音を残していますが、ほとんどが簡単なヘッドアレンジだけで「それぃ!」とばかりに演奏されたもの(さっさと仕事を終わらせて、一刻も早くギャラを手にしたかったのです)。その中にあって非常に丁寧に制作された1枚ではないかと思います。
ところで昨年、丸山運送ではCM「HERE WE GO篇」をリリースし、現在は東日本放送でオンエアしています。この制作でクリエイティブ・ディレクターを務めた私は、自分の思った通り好き勝手に撮影する一方で、予算を徹底的に抑えました。いや、予算を最大限有効に使ったといった方が正しいでしょう。そして、日頃からCMにとって音楽はとても大切な要素であると考えていますので、人々が元気になる曲「HERE WE GO」をこのCMのために制作しました。そして今、そのCM出来栄えに大変満足しています。
特にローカルの、そしてノンタレで制作したCMの場合、5年先、10年先まで人々の記憶に残る要素はほぼゼロです。しかし、今回オリジナル曲をフル尺で制作したおかげで、楽曲が独り歩きをはじめました。ダンスが付き、CMソングが収録されたアルバム「HERE WE GO」が発売され、それがテレビ番組で取り上げられ、ラジオでもオンエアされました。しかし、私は楽曲の全国的なヒットなど望んでおりません。ジワジワと地元に浸透していくことが願いです。やがて、地元の小学校の運動会で流されることを夢見ています。
何故そうなのかというと、丸山運送はご存じの通り運送業者です。この仕事はPCがあれば場所に縛られることのないIT系と違って、その地域に根差し、その地域に愛され、その地域に貢献していかなければ成り立たない事業です。そのような理由から、当社では安全であることを最優先に、マナーにおいても手本となるよう社員教育を徹底してきました。そして、CMでも当社の企業姿勢をシンプルに表現すると共に、地域の人々が元気になるようにという願いを込めました。
そのことと、亡くなってから評価されたハンク・モブレーに何のつながりがあるのか、書いてる本人も分からなくなってしまいましたが、時代が移り変わってもHERE WE GOという楽曲が地域の人々に愛され、人々を元気にしてくれれば、クリエイティブ・ディレクターとして最高の幸せ。私がこの世からいなくなっても楽曲は残るはずです。まあ、そんな結びにしたかったというわけです。
Hank MobleyのA SLICE OF THE TOP、アサノタケフミのHERE WE GO、どちらも聴いていただきたいアルバムです。

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