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MCUアヴェンジャーズシリーズで一番面白い「WIND RIVER」



ようこそいらっしゃいました。わたくしは日々大量のテキストを執筆していますが誰にも読ませるつもりはありません。今回貴女がわたくしの言葉から学ばねばならないのは、マーヴェルシネマティックユニヴァース(以下「MCU」)が、好むと好まざるとにかかわらず現代のエンターテイメントの最先端であるという厳然たる事実です。


少しは勉強なさい


こう言われると途端に機嫌を損ねて「勉強なんかしなくてもあたしは自分のセンスでなんとかするし」だの「教養の時代は終わりを告げたのじゃ」などと知ったふうな口をきいてイキって見せる阿呆共やファッション腐女子のあまりの多さにはつい顔を覆いたくなりますが、それでもなお真の女の中の女であるわたくしは、真の女の義務として貴女を教え導くことを決して止めません。観念してわたくしの言葉に耳を傾けなさい。

貴女は何故貴女が勉強を止めてはならないのか一度でも真剣に考えたことがありますか? 貴女が何故知識を必要とするのか、真の女たちが何故貪欲に新たな知識を求めて読書や映画に大枚をはたいているのかを。

もし貴女が、真の女であれば勉強なぞに労力を費やさずとも真の女のセンスでサヴァイヴすることが可能であるなどと思い込んでいるのであれば、残念ながら貴女は自分の能力を過信しているだけのファッション腐女子です。真の女というものは決して自らの能力を過信することなく、常にシビアな自己評価を下すことで極限状況下のサヴァイヴァルに挑むのです。覚えておきなさい。

センスや作家性などというあやふやな代物を課題にもてはやし、知識や教養を軽視するどころか、知識や教養が、個性やセンスといったものの妨げとなるマイナス要素であるかのように扱われる現代の風潮、これこそ、現代社会がウェイランド湯谷の支配下にあることの重大な悪影響です。ウェイランド湯谷が、真の女によってその支配を覆されることを防ぐために、このような風潮を作り出しているのは貴女には言うまでもないことでしょう。

貴女はこの単純な普遍的真理を深く心に刻みなさい。知識や教養を抜きにして真の女となることはできません。絶えざる学習の努力、ただそれだけが真の女へと至る唯一の道なのです。

その理由が貴女にきちんと理解できるかどうかがわたくしには不安でなりません。ですから、わたくしは更に世の中の阿呆共やファッション腐女子が決して指摘しない、極めて単純な真理を指摘しましょう。心して聞きなさい。

知らないことについて思考することは不可能です。だから、思考のためにはまず知識が必要なのです。これが単純であってもどれほど重大な真理であるかを貴女はよくよく考えることです。ダニートレホを知らない者がどうしてダニートレホの危険性について思考することができるでしょう。貴女がメキシコの危険なサボテン地帯に銃を手に単身突入しクリアリングしなければならない時、サボテンや自動車の影からダニートレホが出現する潜在的危険性についての知識がなければ、クリアリング時に銃口を向けるべき場所すら分からぬまま、あっさりとダニートレホに刺されて死ぬほかありません。ダニートレホやサボテンについての知識や教養こそがサヴァイヴァルの鍵なのです。知識がなければ、貴女の思考力は宝の持ち腐れである上に、貴女のサヴァイヴの可能性すら大幅に制限されることでしょう。

貴女は嫌でもこういった真理を受け入れなければなりません。真の女が極限状況下のサヴァイヴァルを達成して真の女として覚醒することができたのは、阿呆共やファッション腐女子に欠けていた知識や教養があったからであり、知識や教養がなければセンスも作家性も発揮することなど叶わぬのです。

だから真の女は、別にコミックに興味がなくてもMCU映画作品を鑑賞して自らのクリエイティブの糧にするのです。


ウェイランド湯谷のマーケティング至上主義に反旗を翻したMCU


そもそもウェイランド湯谷の阿呆共とファッション腐女子が嬉々として自慢げに二言目にはマーケティングマーケティングとほざいていることの愚かしさは、自分たちの行っているマーケティングは売り上げの増大に貢献するどころか実はヒットの可能性を自ら狭めていることにまったく気づいていないことにあります。

本来あるべきマーケティングというのは、目に見えない潜在的顧客層を探り当てて掘り起こし顧客層を拡大することを通じてより大きな売り上げを目指すものです。より多くの顧客に作品を届けてより大きな興行収入を狙う、と、こう言ってみれば当然すぎるほど当然のことですが、世にはびこるウェイランド湯谷はこのような当然のことすら理解もせずに偉そうなツラをしているのです。

阿呆共とファッション腐女子はどうしようもないことに、マーケティングと言いながら、まず最初に顧客層を限定します。それだけで、顧客層を超えた先に作品を届けてより大きな成功を収める可能性を自ら捨てているのですが、彼らはあまりにも知識や教養に欠けているので、そのことにすら思考が及びません。そして彼らは、ビッグデータやらロングテールやらのもっともらしいカタカナ語で(彼らにはカタカナ語を代替するより適切な日本語の知識すらないのでそうするのです)ターゲットにすべき顧客層を設定することで仕事をしたかのように錯覚していますが、実際には彼らのやっていることは、既に見える形でカテゴライズされ限定された顧客層をピックアップする行為に過ぎず、何ら顧客層の拡大ひいては興行収入の増加に貢献していません。

そして最悪なことに、阿呆共とファッション腐女子は顧客層の設定を理由として作品の内容にまで制限をかけるのです。そんなことのために制作現場への口出しがまかり通るような状況で作品のクオリティが上がるはずもなく、あらかじめ期待された要素が期待されたとおりに用意され提示されるだけの、どこにも光るものがない凡作ができあがるだけです。観客は無意識のうちにであっても、作品に対して意外性と驚きをこそ常に求めています。この、観客が作品に対して最も求める要素を理解しないまま横行しているのが現代のマーケティングなのです。

このような無意味なマーケティングは、いかにして作品を失敗させるでしょうか。最近大きな話題になった失敗作として、某スターウォーズのスピンオフ作品がありますが、あれなど、マーケティング主導がどのように作品を失敗に導いたのか、その経過がまるで透けて見えるかのようです。

阿呆のマーケティング戦略担当者は嬉々としてプレゼンしたことでしょう……フランチャイズの未来のために、コメディの要素もある作品で若年層を取り込んで行く……若年層にウケたコメディ要素映画の制作者といえば近年活躍しているのはフィル・ロードとクリス・ミラーのコンビ……! マーケティングとして大成功ですよ!……作品主導を重んじる真の女からすれば、あきれて物も言えなくなるほどの愚かな決断というほかありません。フィル・ロード&クリス・ミラーが監督した21ジャンプストリートをチェックしたことがある者にとっては、マーケティングなるものから正解と言われても、作風が完全にミスマッチであることは明白です。それでもフィル・ロード&クリス・ミラーに完全に任せて好き勝手にさせれば観客の期待を良い意味で裏切る面白い作品になる可能性もあったのに、ウェイランド湯谷は、作品の制作が相当に進んでから現場に介入して監督を交代させるなどして、結果として上層部主導の赤字凡作ができあがったという始末です。

そして貴女には、MCUの大成功が、先に述べたようなマーケティング主導を完全に否定していることが分かるでしょう。10年単位のスパンにわたって制作される多数の映画によって構成されるユニヴァース……コミック読者といった従来の目に見える顧客層をいちいちターゲットにしていては到底実現不可能な企画の実行と成功が、完全にクリエイティブ主導で達成されたことを貴女は真正面から受け入れねばなりません。真の女の中の女であるケヴィン・ファイギの統括のもと、信頼して任せた監督に好き勝手にやらせた作品を通じて観客に意外性と驚きを届けることで、それまで存在しなかった顧客層が、それも巨大な顧客層が生まれたのです。全人類をターゲットに作品のクオリティを高めることこそが最上のマーケティングであり成功の鍵であることをMCUは証明したのです……とはいえ、MCUでもたまに監督交代などがあったようですが、そのような些細な失敗ではなく全体としての大きな成功のほうが重要であるといえるでしょう。

貴女も少しはクリエイティブに興味があるのなら、MCUの成功に学ばねばなりません。コミックに興味のない観客でもMCUの映画なら観に行くという現状は、コミック原作映画に対する観客の先入観を裏切り続けることで成立しているのです。無論、MCUの映画なら何でもかんでも面白いとは限りません。たとえば、真の女の中の女であるこのわたくしに言わせれば、アイアンマンやキャプテンアメリカが主役になるメジャー指向作品ほど、ストーリー上の都合のために無理に争いごとを持ち込んでいる無理矢理感があり、正直大して面白いものではなく、監督が好き勝手にクリエイト出来たブラックパンサーやガーディアンズオブギャラクシーやアントマンやラグナロクといった作品のほうが客観的には優れていると思えてなりません。アヴェンジャーズも第4作まで公開されていますが、はっきり言って、第3作までは見た目が派手なだけで観ていて全然エキサイトしませんでした。

ですが第4作になって、アヴェンジャーズも遂に真の女がエキサイトする真の映画を生み出しました。それが今回紹介する「WIND RIVER」です。



アヴェンジャーズがアッセンブルします


予告編

アヴェンジャーズシリーズで数少ない真の女が好む名場面の一つといえば、第2作エイジ・オブ・ウルトロンで、ホークアイとの会話を通じてスカーレットウィッチが真の女に覚醒するシーンであることは衆目の一致するところです。今作「WIND RIVER」では、この二人の活躍にスポットを当てた上で、更に他作品との意外なクロスオーバーを実現する離れ業を実現し、これまでにない作品クオリティの達成に成功しました。

前作で指ぱっちん死したためキャプテンアメリカもアイアンマンも今作には登場しませんが、先程述べたとおりこの二人がメインの作品は大して面白くありませんので今作を鑑賞する上で心配する必要は全くありません。


ホークアイ

第2作でスカーレットウィッチ覚醒のきっかけを作ったアヴェンジャーズの花形が遂に主人公として名乗りをあげました。阿呆共に加えて恐るべき凶暴ライオンすらも無慈悲に狩る、真の女が好む真のハンターです。


スカーレットウィッチ

このキャラクターの定番演出として、最初に登場するシーンではいかにもファッション腐女子のように振る舞って観客を油断させるというものがありますが、本作でも相変わらず同じ演出の発想から抜け出せていないのが気がかりなところです。ストーリーが本格的に動き始めた途端に、彼女はファッション腐女子の偽装を脱ぎ捨てて、真の女にしかなし得ぬプロのクリアリングを実行し阿呆共を血祭りに上げます。


パニッシャー

今ひとつ盛り上がりに欠けていたNetflixのデアデビルですが、シーズン2になってこの者が登場するに至り俄然面白くなった結果、この者の単独主役シリーズもすぐさま制作され、見事な出来映えとなったのは記憶に新しいところです。本作でも愛する者を守るため、容赦のない暴力でファッション腐女子に立ち向かう役どころです。登場シーンの尺こそ短いものの、貴女に強烈な印象を刻みつけることでしょう。


予習は、必要ではなくとも有益です


映画配給がウェイランド湯谷に掌握されている結果、公式サイトやポスター等では「なぜ、この土地では少女ばかりが殺されるのか」などという、観客が誤解するだけの作品を無視するどころかストーリーと作品の最大のテーマを否定するかのごときキャッチコピーがつけられており、口では作家性作家性と監督らの作家性を尊重しているかのように振る舞いながら実際には作品とクリエイターの作家性を冒涜する宣伝が相変わらず行われていますが、貴女はそのような現実に挫けることなく、劇場に足を運ぶべきでしょう。今作は阿呆好みの、少女連続殺人鬼が登場するスリラーのようなものではありませんし、そもそも作品の中で少女ばかりが殺されるという事実自体が存在しないので少女ばかりが殺される理由も当然明らかになりません。安心なさい。

気温零下30度……呼吸をするだけで短時間で肺が凍結・破裂、肺出血の果てに窒息死に至るほどの極限の荒野を舞台に、真の女のサヴァイヴァルとハントが展開する骨太の作品が今作「WIND RIVER」です。マーケティングの要求に屈してアクションシーンの尺のために格闘をだらだら続けるような戦闘シーンは本作には全く存在せず、映画史上稀にみる規模のメキシカン・スタンドオフに貴女は震え上がり、死した少女も又、真の女であったことが判明した時、貴女はまた一つ、真の女とは何なのかを学ぶことでしょう。

特に、緊張感の凝縮の限界に挑んだメキシカン・スタンドオフや第二幕クライマックス決戦に、真の女であれば誰もがメキシコの香りを感じ取ったことでしょう。それもそのはずで、調べてみたところ、今作の監督・脚本は、テイラー・シェリダンという者でした。真の女の中の映画「シカリオ」の脚本担当者です。

コレクターことベニチオ・デル・トロ様とサノスがチームアップしてとにかくメキシコ麻薬カルテルのシカリオを皆殺しにして回るのでエミリー・ブラントが右往左往し最終的にはファッション腐女子よろしくトロ様の前から尻尾を巻いて逃げ帰るという映画で、唯一エミリー・ブラントの存在が大変惜しいことになっていたのですが、テイラー・シェリダンも自らの失敗を自覚しているようで、今作ではきちんと反省し学習した上で、作品からファッション腐女子をリストラし、真の女を主人公に据えています。

貴女は最後にこのことを学びなさい。貴女が自ら学び、新たな知識を身につけた時、それは自ずと次の新しい学びへと続くのです。ある知識を学ぶためにそれに先立つ予習を常に要求するのはナンセンスですが、自ら学び続けることは自然と貴女を新しい知識へと導くからこそ、決して無駄にならぬ予習となるのです。ですから、次に示す作品の予習のために今作「WIND RIVER」を鑑賞するというのは全く不要ですが、「WIND RIVER」を学ぶことで次に示す作品に備えることができるというのは、まさに一石二鳥であるとも言えるのです。

エミリー・ブラントがリストラされ、トロ様とサノスがさらにシカリオ共を処刑して回る続編が間もなく公開です。脚本は引き続きテイラー・シェリダンとのことですので、貴女も真の女なら、この作品を鑑賞するのは貴女の神聖な義務であるといえるでしょう。

かくして、貴女もわたくしの言葉を通じて真の女が好む真の学習について知ることとなりました。貴女はこの先も、学習の連鎖をたどっていくことでしょう……MCUの作品主導のマーケティングを知った以上、貴女はもうマーケティングに従属するクリエイトに満足することはできず、ウェイランド湯谷への抵抗を止めることはできません。それは貴女の運命であり、貴女はこの戦いをサヴァイヴするために、進んで上ってゆくでしょう……真の女の遙か高みへと続く学習坂を……



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