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ピンチをアドリブで乗り越える技 54/100(Obstacle)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


一つの場面を演じるにあたって、重要なのはその役の感情ではなく、願望であるという「Objective」の話を前回しました。

しかし、物事にはバランスなり、相反するものが同居していることが重要で、ドラマというのはそこに生まれます。

「Objective」とセットで吟味選定しなくてはいけないのが「Obstacle」です。

障害や妨害という意味ですが、これを意識していないと、ただ欲望に忠実、かつ何の障害もなくそれが達成されてしまう人物となってしまい、台本にはおそらくそぐわないでしょう。

例えば、前回の「Objective」は告白の場面において、
「相手に笑顔で首を縦に振ってもらいたい」
でしたが、これに対する「Obstacle」は何だと思われますか?

〇〇したいけど、〇〇だからそれが達成するのにハードルがある。

という形にしたいです。

相手に笑顔で首を縦に振ってもらいたいけど、、、

恥ずかしい
相手が全く興味を示していないのが明白
嫌われるのではないかという恐れがある
周りに、話す内容が筒抜け
とてつもなく二日酔いである

なんでもいいと思います。でも台本をよく読み込み、相応しいものを探します。

台本といえば、
良い台本には、この登場人物の葛藤にあたる「Objective」と「Obstacle」がすでに書かれています。

そういう時は、それをそのまま演技に活かせば良いし。そうするべきです。

問題なのは、台本が良くない、というか薄っぺらい時にどうするかです。

そんな時は、役者が自分で台本に脚色し、自分の演技をしやすくする必要があります。

願望がスムーズにすぐ叶えられてしまうような台本は、面白くないですし、そっくりそのまま演技すると、台本に引っ張られて薄っぺらい演技になってしまいます。

さて、この時にどれだけの脚色・創作をするか?
というのが、非常に難しいところです。

最も必要なスキルとしては、「台本を読む力」でしょうか?

設定や言葉遣いを注意深く読み込んで、作者が意図する裏の思考を読み取らなくてはいけません。

この時、台本を読み込んで深化させるのと(17/100参照)、必要以上の脚色をしてしまうのとでは、大きな違いがあります。

この線引きは非常に難しいのですが、台本にはだいたい軸となるストーリーがあります。それを逸脱するような創作は、自分勝手で不必要です。

でも、この軸を読み取って、さらに深めることによって差異を大きくしてより面白くする(38/100参照)ような創作ならば、歓迎されるものかと思います。

それぞれの作品によって、その境界線は変わってくるので、断言できないのですが、これはより多くの作品を読んで、作品の意図や軸に対する感度を高めることで、段々と分かってくるものだと思います。

ショートカットは…ないですね。

ピンチに陥った時、あなたの目標・願望であった「Objective」は変化する筈です。

否応なしに、このピンチを脱する、もしくは乗り越えるというのが、あなたの「Objective」に干渉してきます。

でも、じつは「Objective」を変更する必要はないのかもしれません。

「相手に笑顔で首を縦に振ってもらいたい」
に対して、例えばピンチの内容が
「告白するための指輪を持っていない」
だとしましょう。

そうすると、変化してくるのは「Obstacle」の方ですね。

「相手に笑顔で首を縦に振ってもらいたいけど、恥ずかしい。」

「相手に笑顔で首を縦に振ってもらいたいけど、指輪を持っていない」
に変化する。それだけで済みます。

ピンチに陥った時、当初定めていた目標すらも、白紙に戻す必要はないのかもしれません。

目標はそのままで、「Obstacle」が変化しただけであると捉えると、少しは気が楽になるのではないでしょうか?



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