女子の私おばさん発言

女の子は言う。
「私もうおばさんだから…」

いや。そんなことないから。

僕は女子の私おばさん発言を目の当たりにするたびに「なに言ってんだ。そんなことねぇよ。」と心の中で優しく呟く。
貴女たちはいつまでも輝いているのだから嘘でも冗談でもそんなこと言わないでほしい。そっちのきみのほうが美しいよ。

と、これは僕のロマンチスト且つフェミニストな部分が盛大に表れた主張なのだが、今日の主題はこれじゃない。

きっと彼女たちも僕にこう思って(言って)ほしくてこの発言をしたわけではないはずだ。
ではこの言葉の真意って何なのだろう。
女子たちは「私もうおばさんだから…」というたった3文節の短い言葉に複雑な意味を込めていると僕は推測している。
これを今日は探っていきたい。

まず一つに、シンプルな自虐の意味を含めて使っている可能性はある。
自分は若くないと本当に思っているパターンだ。
20代前半にしろアラサーにしろ、若さの尺度は人それぞれであるだろうから、思う分には否定はできない。
20代そこそこなんて世間からしたら十分に若いから、その年代でその類いの発言をしたら本当のおばさんから反感を買うだろう。
しかし、当事者からしたらそんな世間の常識なんて関係ない。
例えば21歳の子が私もうおばさん発言をしたとしたら、その子はきっと未成年だった頃の自分に価値を見出だしていて、それと比較したときに「私もうおばさんだから…」と言うのだ。
アラサーの人はもしかしたら入社当時の自分を思い描いているのかもしれない。
この場合はもうとにかく優しくにこやかに「そんなことないよ。」と言ってあげたい。
なぜなら、本当に「そんなことない」からだ。
たしかに、あなたからすれば歳を重ねて少しばかりお肌のハリに変化も見えてきただろうが、それでもあなたは美しいのだ。
女性のその時その瞬間の色気や美しさを大事にさせてもらっております、こちとら。
なんならそうやって年齢に恥じらいを持つその感じもご馳走さまといったところもある。
だから僕は優しく「そんなことないよ」と言ってやりたいわけだ。

次に、牽制の意味合いも込められているのではないだろうか。
私もうおばさん発言をすることによって、僕との距離感を測っているパターンだ。
僕の出方を窺って、その後の外交姿勢を決定する。
なんともいけ好かない姿勢だが、自身の身を守るという意味ではとても頭がいい策ではある。
そうなると、こちらとしては返答次第で後のコミュニケーションが難しくなる可能性が出てくる。
冗談っぽく「そんなことないでしょ~!」と言うのかボケっぽく「まぁそうだねっ!」と言うのか。
ちなみに面白いかどうかはさて置いている。コミュニケーションに練られた面白さは必要ないので。
いずれにせよ、このタイプは言葉を真に受けて真摯に返答しようとするとよくない気がする。
もしかしたら男側はこのとき、気の利いた言葉をかけることができるかコミュニケーション能力を査定されているのかもしれない。だとしたらゾッとする。
そういうことは辞めてくれ、マジで。他で査定してください。

さらにもう一つ、「そんなことないよ」という慰めをもらって優越感に浸ろうとしている可能性も捨てきれない。
これは厄介だ。
自分がおばさんだと思ってもないし、相手も絶対に思ってないだろうと踏んだうえで、「そんなことないよ」と言うだろうと計算ずくで私もうおばさん発言をかましているパターンだ。
これが色濃く出ているのがかまってちゃんとかぶりっ子と言われたりするのだろう。
こいつの思う壺にハマって言う「そんなことないよ」ほど声帯の無駄遣いなことはない。
こいつのために発せられる「そんなことないよ」で空気を振動させてたまるか。
こういう奴は「私もうおばさんだから…」の「…」の部分を楽しまない。あの余韻を楽しまない。
上の2パターンは、こちらがその余韻を楽しんだり相手の出方を窺う駆け引き的な楽しみ方をしている。
だけどもこいつらは「…」をすることなく「え、そう~?ありがと~」と言う準備をしている。
猛者はさらに「でもお肌が云々」「目元が云々」と畳み掛けてくるが、このとき奴らは褒めてもらえる部分をあえて卑下して言ってくるから本当にうるさい。
そんなとき僕は何と言ったらこいつの鼻を明かせるのだろうと考えるが、これがなかなか難しくて、まぁでもそんな成敗するほどのことでもないかと溜飲を下げるのだ。
まぁ僕自身、この手の奴に出くわした経験はそれほど多くはないが。
でも居酒屋の隣の席にいる奴とかで見かけることはある。
そんなつまらない奴の酒代を奢ろうとしている男はどんなだろうと顔を覗くと大概そいつも面白くなさそうだったりするから、人のカップリングって不思議だよなぁと思う。

大きく分けて3パターンの想像ができたが、こう考えてみると、僕の少ないながらの経験上、一つ目の意味合いを強く持って発言している子が多いような気がする。
リアクション側の男としては、それぞれの意味合いを含めながらどれを割合的に多く含めて発言しているかを見極めることが大事なのだろうか。
それによって臨機応変に受け答えを変えてコミュニケーションを取ることができるとかなりスマートな男になれるかもしれないぞ。
僕からのかなり説得力の薄いアドバイスだぜ。

まぁそもそも、コミュニケーションの際、男性は会話の内容に重点を置き、女性は内容よりも会話するというコミュニケーション自体に重きを置いているというのを聞いたことがあるから、深く考えずに相槌を打つくらいで済む話なのかもしれない。
元も子もないことを言ってしまったぜ。

あと、余談になるが、本当のおばさんが「私もうおばさんだから」と言ってきたら「いやもう!そんな!お若いですよ~!」と美しすぎるお世辞を言えるから逆に楽だったりするよね。

それでも僕はあまり女性には「私もうおばさんだから…」と言ってもらいたくない。

返答に困るしそんなことに知恵を振り絞りたくないから。

と、これは僕の人とのコミュニケーションを面倒臭がる悪い部分が盛大に表れた主張だ。

まったく、面倒臭がるんじゃないよ。頭を使えって話だ。
でも仕方ない。疲れることはしたくないのだ。
だって俺もうおじさんだから…。

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