不器用だから

noteを更新すると、その内容から「お前病んでるのか?」と言われたりすることがときどきあるのだけれど、僕としては全くそんなことはなくて、ただ赤裸々に綴っているだけだったりするのでそんなに心配かけるくらいなら更新しないほうがいいのではと思ってしまって、最近筆を取るのが億劫になりつつある。
もちろん、みんながハッピーになるような文章が書ければいいのだけど僕はどうやらそれが苦手なようで、そうやって書いた記事がいくつかあるが、それらは読んでみるとどうも(僕からしたら)違和感と心地悪さを覚えてしまう。
だから今日も、みんなから心配されそうな匂いが文字から漂う文章を、強い筆圧で書くと思う。まぁ実際はキーボードをカタカタ打っているから「"筆"を取る」も「"筆"圧」も間違いなのだろうが、その言葉にとって代わる言葉は未だ文語表現には見当たらなそうだから仕方なく使った。




こんなnoteしか書けないことからも滲み出ているが僕は不器用な男だ。
格好つけているように見えるかもしれないが、これはとてもダサいことである。
「なにをまたカッコつけちゃって」と思った人は高倉健を想像しすぎ。あんな渋さがある話ではないのだ、今日は。

もちろん、そういう高倉健的な不器用さは格好いい。
それはきっと職人気質であり、実直であり、それゆえ事を滑らかに進めることができないということで、でもこれはもしかしたら昭和的な美学なのかもしれない。
人種も性も生き方も多様化した今の時代では、その不器用さはもう格好良くなくて、むしろ「器用に」自分の居場所や生き方を見つけ、「今」と「目的」がフィットした人のほうが断然格好いい。
というのが最近の僕の考えである。

なぜこんなことを考え始めたのかというと、それはもちろんお笑いの話になってくるわけだが、芸人なる者は売れるまでバイトをしてそれが何年であろうと我慢して下積みをするものだ、という今まで存在していた固定観念が徐々に、現在進行形で古い考えになってきている気がしているからだ。と同時に、古い考えにしてしまってもいいとも思うからである。

ディープなお笑い好きならもう現状が分かるだろう。
最近は、社会人として働きながら芸人としても活動しているハイブリッドな人たちが現れ始めている。
しかも彼らはしっかり面白いときたものだからこっちとしてはお手上げである。
今までは二足のわらじなんて「中途半端な奴だ」とか「覚悟がない」とか言われていただろうが、僕はもう「ハイブリッド」、この言葉しか見当たらない。

多くの芸人を悩ませているものは言うまでもなく金銭面で、そこから来るストレスというものは相当なものである。
彼らはまずその諸悪の根源を元から絶つことができていて、本当に羨ましい。ただただ羨ましい。
それはつまり愛する人と結婚もできるということだから、結婚願望の強い僕からしたら兎にも角にも羨ましい限りである。

じゃあてめぇもどこか就職しろよと思うわけだけど、就職難という社会問題はさて置いて、僕は就職したら絶対に面白いものを考えられなくなるし面白くなくなるからそんなことはできないのだ。
なぜなら不器用だから。
僕は不器用だから、さらに言えば秀でた才能もないから、空き時間のほとんどを喫茶店に費やすし、しかもその時間が膨大でなければ今の面白さを超えることも、もしかしたら維持することもままならない可能性がある。
だから週5日フルタイムで働いて週末ライブに出て…という生活をしていては面白くなれないだろう。
これが不器用な男の悲しい現実だ。

次に、芸人でいることの「目的」なのだが、これはまぁそれぞれ考えがあるとして、僕の場合の話をすれば、「面白いことをするため」というのが最もシンプルに考えたときの目的である。
そのための手段が僕にとってはコントであり単独ライブであるわけだ。
そう考えると芸人一本である必要とは?と考えさせられる。
冷静に考えると面白いことをするためにコントを手段として選んでいるなら、そんな必要は「一般的には」ないのだ。
器用に片手間で面白いことを作って表現することができれば何も芸人一本でやっていく必要なんてない。
でも僕は不器用である。
その一般論が通用しないほど不器用だから、目的を達成するためにはどんなに苦しくても時間を極力削るライフスタイルを貫くしかないのだ。
ちなみに芸人の中には「働きたくないから」芸人でいることを選んでいる人もいるので、彼らの場合はどんなにお金が安定しようともハイブリッドな芸人になる考えなど1ミリもないだろう。なんとも潔い。


まぁ要はもっと要領よく生きれたらよかったのになという話である。
そういう生き方をしている芸人のほうが僕らより結果を残していたりライブのチケットが売れていたりしている現状を目の当たりにする度に不器用に生きるだけ損をしている気になってしまうのだ。というか、損している。言い切れる。
でも僕はこの生き方を選んでしまったわけだから不器用なりに戦わなくちゃいけないし頑張るしかない。
不器用だからネタ以外の売り込み方も分からないし、何か他のアプローチを思い付いたとしてもネタを作りながらそれもやって…となるとキャパを超えてしまうから現状はマジでただ愚直にネタを作るしか道はない。
どうしてわざわざ自ら狭い道へと向かっていくのかと自分でも呆れてしまう。蛇じゃないんだから。もはや蛇だったらよかったのに。笑蛇(ショウジャ)。

もちろん芸人一本で下積みを経て売れるということに浪漫も感じるけど、でもやっぱりこういう多様な生き方ができる時代になったのであれば、その浪漫すら昭和・平成の遺産なのかなと思ってしまうのだ。
浪漫を求めた古い生き方を自らに強いてしまった僕は苦労しているから偉いわけでもないし、だから応援してくれというわけでもないのだけど、そう思うからなのか、なんて言うかもう、自分に幸あれ、頑張っていこうな、となぜだか最近他人へ鼓舞をする感じで自分を奮い立たせていて、売れなさすぎて励ましが何周か回ってんなぁとようやくここで気付くのだった。


最後に。
「苦労しているのが偉いわけではない。」
これなのだ。今年、僕はこれに気付いてしまって、少しだけ僕の中の何かが崩れる音を聞いてしまった。
これが良いほうに働くのかどうかは今まったく分からない。
でも、考え方とか色々なものが徐々に変わってきているのは明白だったり。

でもやっぱり僕は不器用だから、いくら何かを頭でこねくり回したところで出てくる結論は「ネタを作るしかない」だけで、それでまぁ「面白いことをやる」という目的も達成されるし、どのみち「売れる」とか「自分たちがやりたい面白いことを好きなだけやる」という目標に近付くために必要なプロセスでもあるから、不器用は不器用なりの道を辿っていくしかないのかもと思えているから本当に心配しないでください。


そしてそのプロセスがまさにこれだったりするわけだ。



12/17(火)『第三次SAMIちゃんvsカミちゃん』
@新宿バッシュ
開場18:45/開演19:00
前売り1500円/当日1800円
【ゲスト】
シティホテル3号車
竹内ズ
モンローズ

【MC】
オッパショ石(ネタあり)

キズマシーンの新ネタ6本とゲストによるネタのライブ。
僕も頑張るし、それ以上に相方が頑張ってくれるライブです。
これを2019年最後のジャンプ台だと思って思いっきり助走を始めています。

予約はこちらで。
https://tiget.net/events/73794



自然な流れで告知がバシッと決まったから予約が増えることを祈ろう。

私は不器用な男好きだけどなっていうレディやガールたち。
俺も不器用だから分かるぜっていう男たち。
待ってるぜ。

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