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落語『宿屋の富』台本

割引あり

(まくら)

えぇ〜、今と昔、じゃ〜
物の値段って〜のが、だいぶ違うようで
江戸時分には四貫相場に米八斗なんて言いまして
40銭で米が八斗買えたそうで
1斗、約15キロなんで、その8倍、120キロですよ!
泥棒の話ですが
10両盗むと首をはねられた!
だから、気の利いた泥棒になるってーと
9両3分2朱だけ盗んで2朱残して
首をつなげた、
なんて話がございまして、
その位に、
お金の価値というものがあったんだ、そーで

💰『宿屋の富』💰

ただいまの日本橋の馬喰町、
上方落語の高津の富では、大川町ですが、
宿屋さんが沢山ありまして、
日の暮方になるてーと、
客引きが随分出て賑わったもんだ、そうですが
その中でも寂れた宿屋からこの物語は始まります。
👴🏻っど〜も、ありがとうございます〜
えー今晩はこんな粗末な宿に泊まって頂きまして
本当ぃ、どうも、ありがとっ
👨🏻いやいやいや、いーだ、いんだよ〜
あのねー、あんまり、頭下げなさんな
いやいや、アタシもね、
ほかに馴染みの宿がいくらもあるんだ〜
所がねー、そういう所に行くってーと
ウチの番頭が金を使っているせーかねー
下えも置かない、もてなしをするんだぁ
それが、アタシが、やでね
今日はお前さん所に、いきなり、すっと、
入って来たっと、こーゆー訳なんでね〝
構っちゃ、いけませんよ
👴🏻えぇ、貧乏宿でございますんで
人手が足りませんのでね
お構いをする何て訳にはまいりませんですが、
えー、どーぞひとつごゆっくり、
ごとうりを願いたいもんで
👨🏻いや、その方がいーよ、
とにかくアタシはねー、
人に構われると言うのが嫌いでね
小さい時分から構われて育ってるでしょ!
そーするとねー、
これは、うるさくなってくるね、うん
とにかくいまだにねー、
ウチにはアタシの身の回りの用を
しよーと言う人間だけでも、
んー、60人からいてねー え〝ー
この人達が回りを、ウロウロウロウロして
アタシがアレを取ろうとすると、
皆んなでもって、ダァーーって取りに来るんだよ ね〝
これはオレがやるんだ、いや私です
なんてんでね、しまいには喧嘩なるんだ〜
もー本当にうるさくてね〜
もうこれには、
ほとほとアタシもねー愛想が尽きてね
たまには自分1人きりになって自分の事は自分でして
粗末なモンでも食べて、ぼんやりしてたいなー
っと思って1番番頭に相談したら
「わたくしの言う通り旅をなすって下さい」
「まず荷物を持たない、
そして、なりを粗末にして
宿に泊まっても宿銭だけ払って
茶代なんて余計なものは置かなければ
旦那様の望みが叶えられますよ」
っと、こー言われたんでね
言われた通り旅をして来た
どこへ行っても粗末な扱いを受けてね
もーアタシは清々としている所なんだー
お〝 
ここでもって構われるってーとねー
せっかくの苦労が水の泡になっちまうから
いいかい!
くれぐれも言っておきますよ!
構っちゃいけませんよ!
👴🏻えぇー、そりゃーもー
先ほども申しました通り
お構いは出来ませんで、ございますが

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