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立場

キュッキュッ
綺麗な手で僕を回す。

右手で握られ
その腕は
胸の高さから
腰の高さくらいまで
下ろされる。

彼女の
いつもの動きだ。

でもアイツは
左手で握られ
胸の高さから
顔の高さまで持っていかれる

そして
アイツは彼女とKissをする。

僕には口がない。

アイツには口があるんだ。
飲み口だってさ。
ずるいよな…。


でもアイツは特に何も思ってない。
それが当たり前であるかのように。
そしてたまに彼女の口紅が付くと
少し嫌そうにする。

なんだよ
ちくしょう

でもある日から
そんなこと考えなくなったんだ。

彼女は
痩せるんだって言い出して
コンビニや
スーパーに売ってる
健康飲料の
ペットボトルを買い始めた。

僕達は使われなくなった。

目の前で
ペットボトルの口と
彼女はKissをする。

僕は見慣れた光景さ。

でもアイツは違った。
きっと辛かったろうに。
自分の当たり前が
当たり前じゃなくなった。

いつか
使ってくれる日が来るまで
僕達は待ってるよ。

僕達は
キュッキュッと音を鳴らして
眠りについた。


出演

☆水筒のフタ

水筒・ペットボトル・彼女

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