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モンテッソーリ教育とコーチングの視点から考える、“自ら育つ力”を信じる子育て【前編〜対談編〜】

オンラインコーチングスクール「THE COACH ICP」の受講生のなかには、子育て中のお母さん、お父さんも多く在籍しています。正解を教えるティーチングではなく、相手が自ら気づいていく。そんな過程を共にするのがコーチングです。

しかし、いざ子育てにコーチングを生かそうとしても「つい自分の子ども相手だと口を出してしまう」「疲れているときに泣きわめかれると、カーッと怒ってしまう」など、その難しさを感じているお母さん、お父さんは多いようです。

本当はこんなふうに子どもと関わりたいのに。
本当はこんなお母さん、こんなお父さんでありたいのに...。

今回は、そんな葛藤を抱えるお母さん、お父さんのお悩みが少しでも軽くなりますように!と願いを込めて、モンテッソーリ教師のあきえ先生と子育て奮闘中の松浦瞳が対談を実施。前編記事では2人の対談の様子を、後編記事では事前に募集した子育てに関するお悩みにお答えしていきます。(後編は11月14日公開予定)

子どもの“自ら育つ力”を育むために、周りの大人はどんな姿勢、どんな気持ちで彼らの成長を見守ることが大切なのでしょうか。また、親自身が子育ての悩みにぶつかったときに、どう自分の心に耳を傾けたら良いのか、「モンテッソーリ教育」と「コーチング」の2つの視点から紐解いていきます。

※こちらのnoteは、2023年6月28日(水)に開催されたモンテッソーリ教師のあきえ先生とのコラボイベントの内容の一部を再編集したものです。

〈登壇者プロフィール〉

モンテッソーリ教師あきえ
幼稚園教諭、保育士、小学校教諭 モンテッソーリ教師(国際モンテッソーリ協会ディプロマ)。「子どもが尊重される社会をつくる」を目指して、モンテッソーリ教育に沿った子どもや子育てについての発信をInstagram、Voicy、Twitter、YouTubeなどで行う。オンラインコミュニティ「Park」主宰。著書 『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て(すばる舎)』『 モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック(宝島社)』

松浦 瞳(まつうら ひとみ)
外資メーカーに入社後、コンサルタントに転身。東京・シンガポール両オフィスに所属するコンサルタントとして、マーケティング・ブランド戦略の立案などに従事。その後、日系メーカーの経営戦略部を経て独立。独立後は、戦略コンサルタント兼、ライフコーチとして活動。2021年1月よりTHE COACHに参画。国際コーチング連盟認定コーチ(PCC)。


“自ら育つ力”を信じる。「モンテッソーリ教育」と「コーチング」とは?


——まずは「モンテッソーリ教育」とはどんなものか、あきえ先生から教えていただけますか?

あきえ先生:英才教育のようなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、実はそうではないんです。今から110年ほど前にマリア・モンテッソーリという女性医師によって築き上げられた「生命の援助をする平和教育」のことをいいます。

赤ちゃんたちは、いずれ自立した大人になります。そんな自立した大人たちが集団となったとき、争いではなく、互いに尊重し合い調和のある社会を目指す教育方法です。

マリア・モンテッソーリは、どの時代のどの家庭に生まれた子どももみんな「自ら育つ力」を持っていることを発見しました。「自ら育つ力」を子どもたちが最大限発揮できるようにサポートをする。それこそがモンテッソーリ教育です。

大人から子どもへ一方的に何かを教え込んだり、「これをやりなさい」としつけるようなあり方ではなく、あくまで大人は子どもが自立・自律するまでをサポートする「ガイド役」であるというのが、モンテッソーリ教育の考え方の柱となっています。

——一方、「コーチング」とはどんなものなのでしょうか?

松浦:「ガイド役」という表現は、コーチのあり方にすごく近いものを感じました。コーチングにおいても、コーチはクライアントが自ら答えを出したり、新たな気づきを自分で見つけていけるように伴走する存在だと考えられています。

子育てに置き換えてコーチングのプロセスを紹介させてもらいますね。

例えば、子ども(クライアント)が「こんなことに挑戦してみたいけど勇気がでないんだよね」と相談してくれたとします。そんなとき親(コーチ)は、「そうなんだね」と話を受け止めた上で、「いま、それを言葉にしてみてどんなことを感じてる?」と心の内側に焦点を向けた問いを投げかけます。

すると、子どもは自分自身で内省し答えを探そうとする。自ら気づいて、自ら行動が生まれていく対話のプロセスを「コーチング」と私たちTHE COACHは定義しています。

——「モンテッソーリ教育」と「コーチング」の共通項が見えてきましたが、あえて共通しない部分をあげるとすると、いかがでしょうか?

あきえ先生:0才から6才の乳幼児期は、あくまでもティーチングとコーチングの間のようなものであるということでしょうか。未知の世界にやってきたばかりの子どもにとっては、すべてのことが新鮮なんですよね。

例えば、お茶碗の使い方を知らないからお茶碗を投げてみたりするわけです。だから、時にはお茶碗の使い方を示してあげることも必要になります。

一緒に森を散策しながら、身に危険が起こりそうなときや相手に迷惑がかかってしまうような場合には、しっかりと様子を見てガイドしてあげる必要があります。

モンテッソーリ教育は、「何でもやっていいよ」と野放しにすることではありません。子どもの様子をよく観察しながら、見守るタイミングと手助けをするタイミングを見定めていくことがとても重要になります。


子どもの心に好奇心を向ける「傾聴」のポイント5つ


——自ら育つ力を信じて「観察する」ことの重要性はわかるものの、それを実践することの難しさを感じるお母さん、お父さんは多いかもしれません。まずは、何から始めたら良いのでしょうか?

あきえ先生:まずは、子どもの表層的な行動や態度で判断するのではなく、「子どもは本当はどうしたいのか」に好奇心を向けることから始めてみてください。その際に鍵となるのが「傾聴」です。今回は、傾聴するためのポイントとして以下の5つをあげてみました。

まずは、「身体の向き」「あいづちやアイコンタクト」です。忙しい毎日を過ごしていると、ついスマホをいじったり、料理をしたりしながら話を聞いてしまいがちですが、身体を子どもの方向に向けて目を見て話を聞くだけでも、「自分の話は聞いてもらえるに値するんだ」と子どもの存在肯定につながるはずです。

次に「最後まで聴ききる」です。特に0歳から6歳の乳幼児期は、当たり前ですが私たち大人のようなスピードで話すことはできません。語彙数や脳の処理スピードも発達段階のため、言葉にするのに時間がかかります。「こういうことを言いたいのね」とつい先取りしたくなりますが、できる限り待ってあげましょう。

また、「直さずに補う」は、例えば「とうもろこし」のことを「とうころもし、おいしいね」と子どもが言い間違えたとします。「とうころもしじゃなくて、とうもろこしだよ!」と間違いを指摘するのではなく、「そうだね。とうもろこし、おいしいね」と、応答する形で補ってあげると良いでしょう。

そして最後に「問いかける」です。大人もそうですが、相手に興味を持ってもらえることは、自分の存在を認められたような感覚がしてうれしいものです。年齢によって答えられる質問は変わってきますから、最初はyes、noで答えられるような簡単な問いかけから始めてみても良いかと思います。

松浦:傾聴の5つのポイント、とても勉強になりますしコーチが大切にしていることと重なる部分が多くて驚きました!毎回、全部達成するのは難しかったとしても、10回に1回くらいのペースで、親自身も少しずつ成功体験を積み重ねていけると良さそうですね。いつもはできなかったとしても、その努力や姿勢は子どもにも伝わるのではないかなと思います。


親も子どもと一緒に育っていく


——いざ自分の子どもになると「こうしなさい」「ああしなさい」と指示したくなってしまうこともあるかと思います。コーチングの観点からはいかがですか?

松浦:あきえ先生が紹介してくれたように、傾聴などの子どもへの関わり方の他に、もう1つ今日お話ししたいなと思っていたことがあります。

それは、子育て期に親自身が自分の気持ちに向き合うことです。つい「子どもをどうするか」に必死になってしまう時期ですが、「自分自身はどうありたいのか」に耳を傾けてもらいたい。そういった意味でも、コーチングを学ぶことは子育てするお母さん、お父さんの力になれるのではないかと感じているんです。

私と息子の実体験を例にすると、最近友人一家と公園に遊びに行ったときに、息子がイヤイヤを発動して身動きが取れなくなる出来事がありました。友人を待たせてしまっている状況をどうにかしなくちゃと、肩に力が入っていたり、息子の手をいつもよりも少し強い力で握っている自分がいました。

そんなとき、子どもをどうにかしようとするのではなくて「自分はいまなぜ焦ってるんだろう」と自分の心に関心を向けてみてもらいたいんです。

私の場合は「周りと同じようにできないことが恥ずかしい」という気持ちがあって、それがイライラや焦りという感情や行動につながっていました。でも、その正直な気持ちを言葉にしてみると、私が恥ずかしいと思っていることはそんなに重要なことではなかったと気がついたんです。自分の恥ずかしさを優先するのではなくて、ちゃんと子どものペースを見守ってあげたいというのが、本当の私の願いでした。

そう気づいてからは、友人家族には「先に行ってて」と伝えて、子どもが落ち着くまで待てるようになってきたと実感しています。

あきえ先生:素敵な気づきですね。自ら育つ力というのは、子どもだけではなくて、私たち大人も持っているものなんです。常に完璧でいることはできませんが、「自分はどうしたいんだろう」と自らに問いかけ、子どもと共に成長していこうとする心持ちがすごく大切だと思います。

松浦:私自身、いざ子育てが始まると「いいお母さんでいなくちゃ」と肩に力が入ってしまった経験があります。人生で1回きりの子育てですから、つい頑張ろうとし過ぎてしまって、自分のできない部分ばかりを見つめて自信をなくすことも多かったです。

そんなときにあきえ先生の「親も一緒に育っていくもの」という考えに、すごくホッとして気が楽になったのを覚えています。忙しい毎日を送るなかで、今回紹介したすべてを完ぺきにこなすことは難しいかもしれませんが、子どものことも自分自身のことも、長い目線で「観察しよう」「見守ろう」とする心持ちが、いましかない子育てをより楽しいものにしてくれるのかもしれません。

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後編記事では、あきえ先生と共に、事前に募集した子育てに関するお悩みにお答えしていきます。11月11日公開予定ですので、お楽しみに。

(執筆:佐藤伶)

あきえ先生が運営する、モンテッソーリ教育についての理解が進むオンラインコミュニティやオンラインスクールはこちら。

▼オンラインコミュニティ「Park」

▼オンラインスクール「モンテッソーリペアレンツ」

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