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明日からごみ収集車が来なかったら?上勝町「HOTEL WHY」という超田舎でお洒落なところに「反省とその先」を見つけました。

突然ですが、少子高齢化・財政難・ごみ処分場不足の問題が限界に達して、今日以降ごみ回収がされなくなったら、皆さんはどうやって暮らしますか?
私達は「限界」が来るまで動けない、そんな一面を持っていると思うのですが、ゴミを処理できないという問題に既に直面し、新しい歩みを始めた町がありました。
RI-COの視察、2021年3月は徳島県上勝町のゼロウェイストセンターとごみゼロホテル“HOTEL WHY”に訪問しました。

上勝町とは?なぜ行ったのか

このホテルのことは、ウェブメディアなどで、何度か見たことはありましたが、詳しく調べたり、実際に訪れたことはありませんでした。
今回は、エシカル消費の活動をされている方からのすすめで、こちらの施設へ訪問することになりました。

前提情報として知っておかなければならないことは、上勝町はゼロウェイスト宣言した、過疎地域だということ。
 ・四国、徳島県山奥の町 コンビニ・スーパーなし
 ・棚田・山・葉っぱビジネス
 ・人口1500人程度 過疎 
 ・2003年にゼロウェイスト宣言した経緯には、焼却施設を作ることが困難な「限界状態」という切羽詰まった背景があった

その象徴としても、今回訪問したHOTEL WHYを含めた上勝町ゼロウェイストセンターがあります。
HPでも「なぜ私たちはそれを買うのか」というショッキングな世界観が表現されていますので、下記から一度のぞいてみてください。様々なメディアで紹介がされていますが、IDEA FOR GOODさんでは、丁寧な取材記事が公開されていますので、記事もおすすめです。

HOTEL WHYは限界集落に突然オシャレな建物がある


・山、谷、洒落た建築物という、まるで映画なロケーション

HOTEL WHYのある上勝町は、正直、想像していたよりも田舎でした。田舎というよりは山。実際に標高1500m級の四国の山々の麓に位置し、自然の美しい所です。なぜか自然にマッチする不思議な赤い建物。よく見ると、たくさんの廃材を組み合わせて作られています。

・施設見学で「価値」を体感できる満足感


まず、このお洒落で工夫だらけの建築物をじっくり見学することが、訪問の目玉になります。大きな施設ではありませんが、建築、インテリア、備品ひとつひとつに「意味」を感じ、満足感がありました。
木の香り、土の香り、雨の香り(視察日程中は雨でした)。廃材を集めた田舎の建物、なんだろうこの価値というか感覚は。

使い捨て歯ブラシなし、石鹸やお茶は必要量だけ量ってもらう。

事前のHP情報で、近隣で買い物するところもないし、夜間はスタッフが居ないし、夕食は少し離れたレストランからのピザの配達だけだと予習をして行きました。使い捨てアメニティやパック茶のサービスは行っておらず、チェックイン時に、石鹸とコーヒーを量って、必要分だけもらう。まずは、予習通りの体験に満足!

ゴミを持ち込む愚かな私

何もないって聞いてたから実は・・・事前に夜食を調達し、コーヒーのドリップパックも持参。夕食がピザだけなので、サラダは買って行こう!
仕事もあるし、読まなきゃならない書類も持参。体調崩してもいけないから、いつものサプリメントと整腸剤も。水も持っとかないと心配。(結局、水道から出るお水が飲めるもので、ポットで沸かすこともできた。)
何もないところで、快適な一夜を過ごす為の入念な準備で挑んだ私。ところが、この準備は翌朝の反省に繋がることに・・・

一夜の自分のゴミを分別して、「考えて買う」ということを実感しました。

・素敵な朝食で始まる朝
朝食は、使い捨て容器ゼロのモーニングお弁当に始まります。地域のフレッシュな野菜、ソース、茶葉を混ぜ込んだシリアル!しっとりとした雨と霧の山の朝。森の朝のにおい!なんと素敵な朝!

・自分が出した一晩分のごみ
朝食を済ませたら、今回のもう一つの目玉、ごみの分別体験です。ここでは45種程度に分類がされています。資源化ステーションは町民の為のものですが、宿泊体験者も分別に参加できることになっています。
まずは、並べてみましょうか。


私なりに、できるだけ減らそうとしたのに、思ったより多い。コンビニサラダの容器とドレッシング容器(片手でパカットすると、中央から出てくる便利な仕掛けのドレッシング容器)、ペットボトルも目立つ。

リサイクルマークがあっても、実際には資源回収できないものがたくさん。例えば、お菓子の袋(移動中の車の中で食べた)、プラマークがあっても、綺麗に洗って乾かしたものでないと資源化できず(保管中にカビが生えると難しいみたいです)、きれいに洗うのはちょっと難しそう。
紙も、濡れたり油がついてしまったら難しい。うっかり持参してしまったドリップパックも濡らしたら分別できないと思い、慌てて中の粉を出して備え付けのドリッパーで抽出。しかし、不織布と紙が接着剤で張り付いていて、雑紙にも出せず焼却分類へ・・・

コーヒーの抽出がら、レシート、マスク、メイク落としシート、除菌シート、フロス(プラ棒付き)、紙かビニルか不明の付箋。
愚かにも、わざわざ自分が持ち込んだゴミを見て「なぜ私はそれを買ったのか?本当に必要だったのか?」さすがに向き合うことになりました。
減らしたつもりだったのに、もっと考えれば良かった。

「分別することは想定されていない」商品たち。「分別=資源化」でもない。

全部を分別しようとして、初めてわかったことは、できないという現実。
分別マークがあるものの、分別することを想定されていないモノがたくさんあるということ。2種以上の素材がくっついてると、それだけで分別できないことも、あらためて実感しました。そして、それらは、分別できない焼却ゴミというカゴに入りました。

分別の先の資源化もめちゃくちゃハードルが高い。
ここの分別場では、そのゴミが有料で資源化できているのか、もしくはお金を払って引き取って貰っているのかについて、kgあたり金額を表示されていいます。鉄やダンボールは何円で買い取ってもらう、プラ容器は燃料化するが費用を支払っている、という具合。


資源化と言いつつも、結局サーマルリサイクル(プラを焼却燃料として焼く)も多かったり、再生するにしても、お金を払って引き取ってもらうものも多い。本当の資源として喜んで引き取ってもらえるものばかりではないという、厳しい現実を見つめることになりました。

若手の責任者さんとの会話の中で、次世代の人々の中に答えを感じた。

すっかり、個人的な感情に浸ってしまいましたが、今回の訪問は、視察とそれを踏まえての今後の取材申し入れ。環境責任者(CEO=chief environmental officer)さんへ軽いヒアリングです。都内の大学新卒でここへ就職、たくさんの取材に対応しているとのことですが、思っていたよりも若そうな方でした。これだけの分別を行い、世界にメッセージを発信しているにもかかわらず、まだ解決していないと真剣な口調で、問題意識をお話してくれました。
(※写真の右側は一般のお客様です、許可をいただき掲載しています)

ーーーごみゼロは循環ではない。私たちには現実の問題。
「ゴミ」の名目から「資源」変わることと、循環型社会が同じではないということについてお話をしてくれました。
“ゴミを分別することの先に、循環させ生み出す力が必要。いま私たちは分別しているだけで、ここからプロダクトにするとか、そういう知恵もつけていく必要があるんです。できれば地域とか近場で再生循環したい。”とおっしゃいました。

筆者にも子供がいますが、目の前に立っているわが子に近い世代が、環境問題について一生懸命に向き合って話をしている姿に、またも個人的な感情が動きました。

ーーー次世代は、もっと自分の問題として、環境問題に向き合っている。
ごみゼロは循環ではないと語っているのは、とても若い人だってこと。都内の大学を卒業し、ゴミ問題と真剣に向き合う仕事を選んだこと。彼らは、私の親世代より、私の世代より、もっともっと背負っている。
明るく話をしてくれたのですが、このインタビューは、私が簡単なヒアリングで書くようなものじゃなくて、あらためて訪問し、もっとしっかりインタビューをしてちゃんと伝えよう、と心に決めました。

過疎や高齢化「全然解決していない」その中で、「生きていく」というリアル。

上勝町はとても美しいけれど、田舎だし、間もなく人口が増加するとも、コンビニができるとも思えなかった。1つ言えるのは、この町は下降線という感じではなくて、すでにある程度の底を経験していることを感じたこと。


私たちは、人口減少をどうするのか、経済の停滞をどうするのか?そんなテーマで色々議論するが多くある中で、この町で肌で感じた「何か」を帰宅して半月以上毎日考えることになりました。
限界だったというこの町の取り組みは、「改善させる」ではなく「現状の中で生きる方法を見つける」というのが相応しいし、それが未来を生きて行かねばならない私も含めた人々のリアルだと感じました。
どうやって人口を増加させるのか?どうやって経済規模を維持するのか?常識ともいえる指標ですが、今回ここで感じたのは「この現状を皆で生きようとすること」にちゃんと向き合ってこそ、その答えが出るんじゃないかというおぼろげな出口の感覚でした。

重たい問題だけど、何か未来感。「答え」を見つけ始めているのかも知れない。

町全体は、かなり重たい問題に向き合っているのですが、その中で意外にもオシャレで未来感のある空気を作っていることが、この町の不思議なところでもありました。それは、モノやお店のデザインからだけではなく、与えられた環境の中で道を選んでいくライフスタイル全体から感じられるような感覚でした。なんだろうこの魅力的な感覚。

・地域のカフェ・ポールスターに寄る
2日目は、カフェ・ポールスターさんにて、ランチをいただきました。この町にある、月ヶ谷温泉という渓谷の温泉施設のすぐ近くにあり、とってもオシャレな雰囲気です。フードもスウィーツも、地域の素材を活かした工夫と創作性が高く、若者客も多い。外国人の方への英語対応もスタッフの方がバッチリされていて、東京近郊の一大避暑地のカフェという雰囲気を出していて、驚いてしまいました。

この町には、こんな素敵なお店がいくつか出来始めているみたいです。どのお店も、環境に配慮した生き方を体現しているということで、次回は丁寧に周囲のお店も取材したいと思います。

次の展開は

今回は、下見でしたが、次回の意見交換会でのテーマも見つかり、価値を体感するという実りある時間となりました。
次回は、RI-COのメンバーとゼロウェイストホテルの皆さんと、正式な形で意見交換会を開催する予定です。テーマは「循環」になりそうですね。

さいごに

今回は、感銘とともに反省の多い視察にもなりました。
中でも、超高齢化社会に伴う財政問題やゴミの限界の問題に対して、自分もまだどこか他人ごとだということ。わが家のエリアには、まだゴミ収集車が来るし、自治体が何とかしてくれているから、ゴミ箱に捨てた物のことは頭から消えてしまう。
完璧は難しい、でも、最近やめていたコンポストを復活したり、買い物をするとき考えることを今日から始めようと思うことができました。
もしまた、自分が麻痺してきたら、ここにきてリセットしようと思います。

ゴミや未来も問題が気になっている人だけでなく、自分をリセットしたり、自分の中にある大切なことを見つけたいと感じている人にも、HOTEL WHYは、答えのさがし方を教えてくれるかも知れません。


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