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ファンコミュニティはクリエイターに必要不可欠 / 対談 with 佐渡島庸平 #1

平良 真人( @TylerMasato ) の対談シリーズ。
今回のお相手は株式会社コルクの代表取締役会長である佐渡島庸平さん。

「『作品』とは、『コミュニケーション』そのもの 」と語る佐渡島庸平さん。音楽・演劇・映画・書籍、どれをとっても、クリエイターとは何らかの『作品』の作り手です。インターネットの普及により、クリエイター自身が自分の手でファンコミュニティをつくっていくことが重要になってきている現代。「 インターネット時代のコミュニティのあり方 」への知見に富む、佐渡島庸平さんと深掘りしていきます。

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佐渡島庸平(さどしまようへい)
2002年講談社入社。週刊モーニング編集部にて、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年講談社退社後、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティー形成・運営などを行う。従来の出版流通の形の先にあるインターネット時代のエンターテインメントのモデル構築を目指している。https://corkagency.com

ファンコミュニティはクリエイターの活動を持続可能なものに

平良真人(以下、平良):
fanicon には、ジャンルを問わず、様々なクリエイターの方々がアイコンとして登録してくださっています。ファンとコミュニケーションを行える場なのですが、「 クリエイターが直接ファンとやりとりをする 」行為には、馴れ不慣れが大きく影響する気がします。

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島氏):
どんなジャンルにおいても「作品」とは、「自分が考えたことを誰かに伝えたい 」という思いから生まれています。「 誰かに伝えたい 」と思うことは、「 コミュニケーションをしたい 」と思うことと同義です。つまり、「 作品 」自体がコミュニケーションそのものなんですね。

平良:
発信する作品そのものが、コミュニケーションとは興味深いですね。一方で、「 いいものをつくっていれば、ファンとのコミュニケーションを経ずとも、きちんと届くはずだ 」と思っている方も多くいらっしゃると思います。

佐渡島氏:
メディアがつくられていった中で、出版社やテレビ局が「メディアを通じてファンと繋がるものだから、ファンと個別に繋がる人は一流じゃない」という文化を業界内につくったからだと思います。

僕がクリエイターと接している中で、超一流な方達は、「 作品とは受け手とのコミュニケーションである 」と認識している方が多い気がします。そうした方々は、ファンコミュニティに対してもネガティブではない。

「 受け手とコミュニケーションをしたい 」という思いよりも、「『作品』の型づくりの職人になりたい 」との思いを強く持っている方もいますが、これからの時代に「 型づくりの職人 」だけでやっていこうとするのは難しいと思います。

平良:
佐渡島さんはご著書の中でも、「 クリエイターがファンコミュニティを形成する重要性 」を書かれていますよね。

佐渡島氏:
クリエイターは、自分がつくった作品が大当たりしたら当然嬉しい。ですが、「 1作の大ヒットは出たけれど、次作以降は売れない 」という状況だと、ずっとつくり続けることはできませんよね?

クリエイターにとっての幸せとは、「 つくり続けられること 」、「 受け取ってくれるファンがいること 」ではないかと思っています。ファンコミュニティは、作品づくりを持続可能なものにしてくれる存在ではないでしょうか。

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SNS時代の安全・安心設計

平良:
佐渡島さんは、コミュニティには安全・安心の確保が大切だと仰っていますよね。fanicon も安全・安心が確保された設計にこだわっています。

佐渡島氏:
現在はサービスが終了していますが、CHIPというファンクラブ作成サービスで、アカウントを作成し、自身でもファンの方々と交流してみました。使用してみて、やはりクローズド感があると、プライベートな投稿がしやすいというのを体感しました。クローズド感は、利用者の安全・安心感に繋がると思います。

平良:
fanicon のアイコンの方達も、「 この投稿は Twitter や Instaglam には絶対にあげられないけど、fanicon にならあげられる 」と言って、外では見せない顔をファンに見せてくれる方は多いです。

佐渡島氏:
今だと、インスタのストーリーズもそれに近い感覚で使われていますよね。24 時間で消えるからこそ気軽に投稿できる。僕は、Twitter には自分が食べたものをアップしたりしないのですが、先述した CHIPやストーリーズにならできるなと感じて投稿したりしています(笑)。

SNSの広まりによって、マスメディアを介さずともコンテンツを拡散できるようになりましたが、同時に、文脈を無視して意図しない内容を拡散されるような事態を引き起こしてしまう可能性がある。だから、発信者は投稿に細心の注意を払わなければならず、気軽な投稿ができる場が意外とありません。SNSが広まった時代だからこそ、安全・安心を設計することは重要だと思います。

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ファンは『人』につくのか、『コンテンツ』につくのか

平良:
先日、「 日経エンタテイメント! 」で編集長を務めていた品田英雄さんとお話させていただきました。( 記事はこちら
品田さんと、「 ファンは『人』につくのか? 『コンテンツ』につくのか? 」を考えたのですが、佐渡島さんはどうお考えですか?

佐渡島氏:
人起点、コンテンツ起点の両方がありえると思います。SNSが広まる前までは、コンテンツ起点でファンになる人のほうが圧倒的に多かったけれど、SNSの広まりにより、人起点でファンになる人が増えました。

平良:
人起点の場合はコミュニティがつくりやすいのですが、コンテンツ起点だとコミュニティ形成は難しいのではないでしょうか?

佐渡島氏:
コンテンツ起点でも、コミュニティ形成は可能だと思いますが、コンテンツをファンがシェアできないと難しいかもしれませんね。コンテンツ起点でも、コンテンツは一度人を媒介して広まっていきます。

今、僕が携わっている新人漫画家や主宰するコミュニティ「 コルクラボ 」では、書籍をつくるときには書店を介さずに、最初はクラウドファンディングとメンバーの手売りで広めていくんですね。なぜそうしているかというと、広めるときに自然と会話が発生するからです。

売り手の思いをダイレクトに聞くと、買った人もそれに対する感想を、つい広めたくなります。ファンが他のファンに売ったり、シェアすることを行って成功したグレイトフル・デッド(米ロックバンド)のマーケティング法は非常に参考になります。

平良:
今のお話を聞いて、BTS のことが頭に浮かびました。彼らは「 ARMY 」と呼ばれる熱狂的なファンコミュニティを持っていて、ARMYの方達は、BTS がビルボードで一位を取るための指南書をつくっているそうなんですね。

指南書には、Youtube での目標再生回数や、Twitter での投稿内容などが細かく書かれているそうです。それが Twitter でシェアされて、どんどん拡散されていく。ファンがファンを呼ぶ構造設計を意識することが大切なのかもしれませんね。

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『居場所』を感じるためには、役割や貢献感が必要

佐渡島氏:
ファンコミュニティにおいて、「 コミュニティが自分の居場所である 」と感じられるかどうかは非常に重要です。「 ファン 」は、自分がその対象を好きな状態。「 ファンコミュニティ 」は、その対象を好きなファン同士で集まる場。

ファンの方がその場を自分の人生における居場所の一つだと認識できるか。その認識の有無で、ファンコミュニティの活性度や持続性は大きく変わってくると思います。

平良:居場所感を感じられるかどうかには何が関係するのですか?

佐渡島氏:
コミュニティにおいて、「 何らかの役割が果たせている感覚 」があるかどうかが居場所感に大きく関わっていると思います。会社のSlackで、発言してもシーンとなってしまうことってあるじゃないですか。

平良:僕自身もよくあります(笑)。

佐渡島氏:
代表という立場だと、より「 会社は自分の居場所 」感が強いと思うのですが、自分の発言に対して反応がなかったりすると、ここは自分の居場所じゃなかったのか……。と淋しくなりますよね(笑)。

膨大な情報に接するようになった今、そうしたことは誰にでも平気で起きます。その中で、スタンプ一つでもフィードバックやアクションが必ずあるとなったら、「 自分の居場所がある 」と感じやすい。

コルクでは、『 宇宙兄弟 』の作家である小山宙哉さんのマネージメントをしているんですが、小山さんにはコヤチュー部というファンコミュニティがあります。コヤチュー部のメンバーで、Twitter で『 宇宙兄弟 』に関してツイートしてくれた人全員に「 いいね 」を押していく実験をしたんですね。そのことによってどれくらい繋がれるのか試そうと。

そしたら、「 いいね 」を押し続けていた人のフォロワーが 3000 人を超えたそうです。「『宇宙兄弟』についてつぶやくと、この人が見ていてくれる 」という感覚があると、投稿のハードルが低くなり、つぶやく人が自然と増えていくんですよね。

フィードバックをもらえることで、つぶやく人にも「 貢献できたな 」という感覚が生じるし、「 いいね 」を押している人にも貢献感が生まれます。その貢献感や、役割がある感覚が、「 ここは自分の居場所の一つだ 」と感じられることに繋がるのだと思います。

(つづく)


構成・文:代 麻理子   

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