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取り戻せない熱のはなし part1 発表会

play roomというWSに参加していました。
7月末の最終日は、観客を入れての発表会。
私が演じたのは『アルカディア』という戯曲の第一幕第一場、トマシナという役です。

終わった後からずっとこの時のことを考えつづけていて、どこから手をつけたらいいかわからなくなっちゃってたんだけど、ふくれあがった言葉たちがようやく落ち着いて形を帯びてきたので、まとまってなくてもとりあえず書いてみようと思います!

やってみた実感と、動画で自分の組の発表を見返して改めて思ったことについて。 
箇条書きですがどうぞ。 


よかったと思うところ


・ゲネの時は自分の心が落ち着きすぎていて物足りない感じがしていたのだけど、本番が始まる頃には身体が明らかに変化していた。nervousなんじゃなくて、excitedなかんじ。全身の血の巡りが早くてほっぺも熱くなって、蒸気みたいなのが出そうだった。
懸念していた「落ち着きすぎてトマシナの持つ勢いが失われる」ことにはならず、そこはよかった。

・キャラクターとしてシーンに存在できるよう関わり続けてくれた相手役に感謝。
今回「役の関係性を具体的に作る」ことにかなり力を入れて取り組むことができた。「私と相手、立って向かい合ったらもうトマシナとセプティマスだよね」ってことを信じられたことが大きかった。トマ&セプの普段の会話を自主稽古で即興でやってみたり(実はエチュード苦手なんだけどね!)、過去と生活のディテールを詰めることで、勉強のシーンを"いつものこと"にすることができたと思う。
アイデアマンで、創造的なトライ&エラーができる相手役。もし読んでいたら、あなたのことだよ!ありがとう。

・ゲネも本番も一発目のトマシナのセリフ「ねぇセプティマス、「肉欲的な抱擁」って何?」で笑いが起きてた。他の俳優たちは最初のセリフが何かもちろんわかっているし、私たちの組は11組中7組目だったので、観客ももう何回も見て知っている状態だった。にもかかわらずウケていたのは素直に嬉しい。なんで笑ってたのかはよくわからんけど。トマシナとセプティマスの居方がなんかおもしろかったんだろうね。

・映像で見返してわかったことだけど、シーンとして必要な要素、戯曲の成立に必要な行動は、思ったよりできていたと思う。
役者の生理と繋がらないところは、割り切ってやる。それも演劇。
それに、以前にやったものから全然変化していないわけではなかった。


うまくいかなかったところ


・何ヶ所か私が早すぎる部分がある。そんなにスピード出さなくてもおもしろくなれそうな部分があるのにもったいないことをした。じゃないと後半が引き立たんやんか!あーー。

・ある人から「もっと爆発できそうだった」という感想をもらった。私もそれに同意している。
どうすればそうなれたか、まだ完全にはわかっていない。
フィードバックなどをヒントに考えてみる。
「自分と役をもう少し分けた方がより自由になれる」というのは本当にその通りで、「トマシナの身体とえりかの身体は似ている」と言われた時のことを思い出した。
たぶん、自分が思っている以上にそうなんだと思う。トマシナが動いていると思っていたけど、実は私のままやって動いてしまっているところがあり、その精査が甘かったかもしれない。
トマシナがしたがっていることを私の身体のままではできない。私は何回もやっていることでも、トマシナにとっては初めて経験することなのだから。
私でなく、私が見せたいトマシナをやるために、役からもっと下がること。
そうすれば、普段ならしない動き、言い方、止まり方に手が届くと思う。

・「弱さとお芝居する」という言葉を聞いてハッとした。私も、自分の弱さをもっと相手に委ねてしまえばよかったと思う。
私がシーンの中で到達したいと思っていた目標は「生きている実感が持てる」ことだった。私が定義する"生きている実感"とは「今この場で、役が選択している」状態のこと。書かれた言葉に沿うんじゃなくて、この身体から生まれたものを出す。そういう状態になりたかったし、なれるんじゃないかと思えた。
でも、リピとキャラと戯曲と目標、あらゆるものを統合するのはやっぱり難しかったな。
「戯曲と相手役にちゃんと貢献したい」という思いが強すぎると、かえって自分の内側を向いてしまうようになると実感した。
今までは、失敗が怖いからそうできないんだと思っていた。
が、それよりかは「自分が足りてないかもしれないからもっと頑張らなくちゃ」という責任感みたいなものが、自分をコントロールしたがることに繋がっているんじゃないか?という仮説を今は立てている。

・相手の変化にもっと繊細になりたかった。すごくおもしろい反応をしてくれてるとこがたくさんあるのに、自分の役のことでいっぱいいっぱいになってしまっている。さっき書いたことに通ずるけど「私の役割を精一杯頑張る!」から「私の役がどうなるかは、あなたに任せま〜す」ってくらい手放すことにシフトして次はやってみたい。



色々書いて長くなっちゃったけど、まだ書き足りない気もする。きっと後からまた別の言葉を思いつくんだろうな。
悔しい思いもあるけどそれ以上に、今までやったどの舞台よりもいい取り組み方をできたと思う。そこは自信を持って言える。どんな時間も楽しかった。悩んでいる時すらも。
プロセスが楽しいことは、俳優をやる上でかなり重要だと思う。だって、演劇そのものが「プロセスを鑑賞する芸術」だから。
その取り戻せない熱、戻れない一方通行を美しいと感じた発表会だった。
他のどの組も最高だった。お世辞でなく、ほんとうに。

そして、終わってしまってものすごくさびしい。
play roomのみんなに定期的には会えなくなる。自主稽古ももう毎日しなくていい。
ついこの前までそこにいたトマシナが、庭に飛び出したままどっか行っちゃった。
しばらくはなくならなそうだな、このさびしさ。

でも、落ち込んだり焦ったりする必要はない。
求めるものがクリアになったし、課題もわかった。
新しい目標もできた。
それまでは、自分の生活と挑戦を丁寧にやっていこうっと。

ではまた、part 2『アルカディア』編で。

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