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急増している犯罪(sextortion)へのイギリスの対策

イギリスでは、sextortion(セクストーション)と呼ばれる犯罪が急激に増えていて、注意が呼びかけられています。

イギリスの独立新聞ガーディアン紙のポッドキャストでも、最近セクストーションの被害者となり、命をたってしまった少年の家族が、
セクストーションの被害者となる(性的な画像がでまわる)ことは、恥ずかしいことでもないし、あなたは全く悪くありません。
あなたは、犯罪の被害者
なのです。
これが人生・世界の終わりではありません。
被害にあったことは、あなたという人間を定義するものではありません。
多くの子供たち、若者たちが被害にあっています。
あなたは一人ではありません。
一人で悩まず、家族や学校に相談、警察に相談・通報してほしい

といったメッセージを伝えていました。

イギリスのセクストーションの定義は、日本とは違う可能性があるのですが、イギリスのNational Crime Agency(ナショナル・クライム・エィジェンシー/国家犯罪対策庁)の定義は「金銭的な動機による性的脅迫・恐喝」です。
被害者の90パーセント以上は男性で、特に子供と若い年代(14歳~17歳の男子、18歳から30歳くらいの若い男性)がターゲットとなっています。
脅迫で求められる金額は数十ポンド(数千円程度)だったり、アマゾン・ヴァウチャーだったりと、さまざまなようですが、高い金額ではないそうです。
多くの組織的な国際犯罪グループがこの犯罪を行っているのは、被害者の人数がとても多く、一人一人から恐喝した金額は少なくても、合計すると犯罪組織にとっては、利益の出る犯罪だから行っているとみられています。
このセクストーションでは、イギリスを含む欧米諸国の場合、女子や女性がターゲットになることは、とても少ないのですが、グルーミング等で性的搾取の対象となるのは、女子・女性が圧倒的に多く、加害者は男性が圧倒的に多いそうです。

国家犯罪対策庁からのメッセージは、以下です。
悪いのは100パーセント加害者で、あなたは、100パーセント悪くありません。
あなたは、(巧妙な手口で)だまされたのです。
(被害にあったのは)あなたのせいではありません。
一番大事なことは、助けを求めることです。
※上記の国家犯罪対策庁のサイトにもありますが、既に子供(18歳以下)の性的なイメージを掲載するサイトを運営していたひとが、懲役16年となりました。
法律は設定されるだけでなく、きちんと施行されることが重要です。イギリスではきちんと法律が適用され、犯罪者が犯罪に対しての責任を取るようになっています。
国際的な組織だと難しい部分もあるものの、警察はきちんと調査・追跡を行い、実際にほかの大陸で犯罪を行っていた人々が逮捕されたケースもあります。

ガーディアン紙のポッドキャストでも言っていましたが、加害者は、被害者に対して「恥ずかしい。自分のせい。これで自分の人生や行きたい大学に行くチャンスや仕事につく機会はなくなる」と思いこませるるよう、巧妙な心理操作を行うのが通常の手口だそうです。
どんなに気を付けていても、手口はとても巧妙で、誰がだまされてもおかしくありません
往々にして、加害者はゲーミングやソーシャル・メディアの友達の友達のアカウントのようだったりして、大人がだまされたとしても不思議はありません。
人生経験が少ない子供や若い人たちだったら、なおさらです。

また、国営放送のBBCニュースでも、実際に被害にあった若い男性、Nathan(ネィサン)さんの話がありました。
ネィサンのケースでは、性的な画像を送るように心理操作を行うやりかたは、とても巧妙で、だまされてしまう人がたくさんいることも理解できます。
自分だけは、だまされない、自分の子供はだまされない、と思っている人もいるかもしれませんが、多くは、国際的な犯罪組織が関わっていて、実際に存在する女子や女性のアカウントにハックしていることもあれば、数週間かけて、自分のことをよく分かってくれている友達だと思い込ませ、だまして、性的な画像を送るようプレッシャーをかけるやり方も狡猾です。
ネィサンのケースでは、金銭の脅迫というブラックメールを無視していると、自分のInstagramのアカウントに友達として登録していた友人や家族に自分の性的な画像を送りはじめたのをみて、Instagramに連絡しメッセージを削除してもらい、かつ、そのグループにいた友人たちには、何が起こったかを説明し、ファイルを開かず削除してほしいと頼んだそうです。何人かはファイルを開いたようですが、友達からからかわれたりすることはなく、真実を話したことで、友達からは大きな励まし・賞賛を受けたそうです。
今は、ネィサンさんは、多くの人々に「セクストーションで自分の性的な画像がでまわるのは、決して人生の終わりじゃない。これは、一時的な問題で、永遠の問題ではありません。自分の命をこれ(セクストーションの被害者となる)で終わらせようとは思わないで。」と呼びかけています。
また、国家犯罪対策庁のアドバイスも、基本は脅迫には応じず、脅迫者のアカウントはブロックし、できればやり取りはスクリーン・ショット等で残しておき、警察へすぐ通報です。
既に払ってしまったとしても、心配しないで、次の脅迫にはお金を払わないようにすることと、たとえ次の脅迫がなかったとしても、警察へは通報してほしい、ということです。

国家犯罪対策庁のこのページでは、被害にあったときに、どうすればよいか、ということが簡潔に分かりやすく書かれています。
子供(18歳以下)は、日本と比べると、はるかに厳格に守られているので、匿名で、さまざまな場所から画像を取り除くことをリクエストできたり、多くのサポートが記載されています。
もちろん、どのサポートも無料です。
また、学校の先生も、生徒たちが被害にあったときにどうするか、被害にあうことは被害者のせいじゃないということも含めて教えるよう指導がすでに行きわたっています。
もろん、犯罪なので、警察への通報(親が通報してもいい)等の詳細も記載されています。
大人(18歳以上)の場合も、サポートをしてくれる機関が記載されています。もちろん、犯罪の被害者なので、警察へ通報し、正義を求めることもサポートしてくれます。

上記のガーディアン紙のポッドキャストで、子供を亡くした父親が言っていたことは、心に残りました。
大事なのは、子供に対して何をするべきか、ということを教えること、何をするべきではないというのではなく。」
どんなに被害にあわないように気をつけていても、加害者は非常に巧妙で、だまされてしまうことは、誰にでも起こりえます。
そのために、被害にあったときに、何をするべきか、ということを知っておくことはとても重要です。
子供や若い人々だけでなく、大人も、被害にあった人たちをどうサポートできるかを知っておく必要があります。

テクノロジーの発展は、良いこともつくりだすし、犯罪者が新たな犯罪を生み出す機会をつくりだすことでもあります。
往々にして、法律や社会が対応できる前に、こういった新犯罪は広まります。
でも、少なくともイギリスでは、子供たちを守るために、新たな法律が素早く作られ、メッセージも多くの学校や家庭に届けられています
犯罪の被害者になることは全く恥ずかしいことではなく、一生の消えない染みになるわけでもなく、一時的な問題で、解決法はあることを子供たちに、よく話しておく必要があります。
それには、オープンに対等に、安心して話し合える環境が大切です。

また、性的なことに関する被害者を責めるようなノーム(風潮)ー例えば、画像を送った被害者が悪い等ーは、確実に消えなければなりません。
強盗や盗みにあった被害者を責める人はまずいないのに、性的なことになると、被害者を責める人が増えるという矛盾に気づき、一人一人が考えを変えていく必要があります。

一人一人が変わっていけば、確実に社会は変わります。

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