ほんとうの地方創生とは?

<倉吉ブギーバック ~ うたうように、生きる。>

こんにちは、6年前に鳥取県倉吉市にUターンした麻田ゆういちです。東京大学時代は音楽・美術史に没頭し、社会に出てからはインテリア関係の会社役員、株式投資情報を扱うベンチャーIT企業を経験しました。今月から「潮流*」にて読者のみなさまと対話ができること、嬉しく思っております。

わたしは、昨年10月より倉吉市中心市街地活性化協議会のタウンマネージャーを務めており、この地域に住んでいるわたしたちが、そしてわたしたちの次の時代に生きる人々が、将来にわたって「うたうように、生きる」ことができるような、持続可能な仕組みをこの地に創れたら最高だなと思っています。

具体的には、仕事・教育・くらしの3つの分野が良くなることが必要だと考えています。それぞれが、今の世の中そしてこれからの世の中にとって最適なカタチになっているのか、これを明らかにしないといけません。

戦後すぐにつくられた保険制度、年金制度、労働制度、教育制度等は、復興の時代を生き抜くためのある意味で支え合いの制度、あるいは右肩上がりの経済成長を前提とした制度、そして親2人と子どもの核家族をモデル世帯として前提とした制度なのではないでしょうか。現代社会は、これら諸制度の前提とされているような時代の社会像とあまりにかけ離れてしまったにもかかわらず、制度や、考え方が追いついていないような気がします。

まずは仕事についてですが、最近よく言われるのは、今のわたしたち日本の生活の多くは、海外のお金で成り立っているということです。たとえば、上場企業の売上高を見ると、およそその3割を海外での売上が占めていることを直視しなければなりません。また、先日ある食品輸入会社の方とお話ししたのですが、日本の食品価格がおおむね値上がりしている背景には、円安による影響もあるのですが、実は中国などアジアの経済成長著しい国々に日本が買い負けて(競り負けて)いる事実があるようです。そのような現在の競争環境のなかで、また将来の競争環境を考えると、遅かれ早かれ海外も大きく視野に入れたビジネスを展開しないといけないでしょう。

国境を問わない(ボーダーレスな)仕事をするには、当然そのような人材が必要です。教育改革が将来の日本のために必要だと言えないでしょうか。海外でビジネスを展開し、海外のお客様からお金をいただくためには、それ相応の種類の人材(グローバル人材)を育てなければなりません。その視点で考えると、現在の教科書など教育制度、また子育て/教育支援制度等の仕組みが、グローバル人材の育成に対応していると言えるでしょうか。そもそも、教員の方々はグローバル人材なのか、あるいは少なくともグローバル人材を育てられるという自信を持って教育を行っていると言えるでしょうか。

くらしについては、まず人間は歴史的に見て、きわめて自然な欲求に基づいて住所を定めてきたということが、重要な視点だと考えます。稲作がはじまると収穫量の多い土地に定住したり、山城等を見ると戦争における安全性を元に定住地を決めたり、さらには新大陸への移民、ゴールドラッシュなど非常にわかりやすい理由で移動が起こってきました。日本でも、民俗学者の宮本常一によると、村八分やさまざまな事情で今までの村に住めなくなった人々が、自分たちが生きられる場所を求めて川上へと山あいに移動したとされていますし、比較的最近の事例で言うと、北海道への入植、鳥取大山の香取村の事例、都市にあふれる出稼ぎ労働者など、新天地を求める強い欲求のもとで思い切った移動を行っています。まとめると人間は、生きるための仕事がしやすい、そのための勉強がしやすい、また生活インフラが整っている等の「より自由で快適で持続可能なくらし」を求めて、闘争してきたのです。ですから本質的には、ある地域が存続していくためには、そこに満足して住んでいる人々がいるということ、が必須条件なのではないでしょうか。住民の満足感を高めることが第一であり、あるいは、その土地に住みたい!という人が集まり、将来にわたって楽しい仲間とかけがえのない時間を過ごしていけるという状態が、希望と確信が、地域に必要なのです。

いまのくらしに満足しているひとは、現在の世界を創造し引き渡してくれた先人たちに感謝しつつ、その素晴らしいくらしが次の子孫の時代にも受け継がれるように、必要な+1(プラスワン)を投資しましょう。満足していないひとは、人に頼ったり人から何かを分け与えてもらうのを待つのではなく、まずは自分がカイゼンの行動を起こし、いまの世の中をよくするための+1を。

開拓者たちが大地に打ち込んだひとくわのように、ひとりひとりが、どんな些細なことでもいいから、1日1つは世の中に新しい+1を生み出していきましょう。受け身ではなく、自らが自分の住んでいる地域の将来のために、一歩行動を起こすこと。それが本当の地方創生のすがた/ゴールイメージだと思います。

今後このコーナーでは、この地域の人々が、どうしたらこの先も「うたうように、生きる」ことができるのかについて検討を深めていきます。

次回は、世界中で生まれている新しいサービスやビジネスをいくつか紹介します。わたしたちのくらしにも、大きなヒントになる目からウロコの事例ですので、お楽しみに。あわせて、この地域をよくするための具体的な提言も行っていきます!

 (*平成27年2月『日本海新聞 潮流』掲載)

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