見出し画像

2021年、ロックは救われた・・よね? (根拠その2) 商業的にも成功した、サウス・ロンドンの4大ポストロック/パンク・バンド

どうも。

では、昨日に引き続いて、「ロック定点観測」企画、「2021年、ロックは救われた・・よね」の第2弾、いきましょう。

昨日はオリヴィア・ロドリゴを中心としたミレニアム世代の女の子のロックについて話しましたけど、今日はその華やかな感じからは一転、かなり硬派な感じでいこうと思ってます。

ズバリ、こういう話題です!

画像1

はい。イギリスはサウス・ロンドンのシーンを沸かせているバンドたち。ここ、今、バンドが本当にたくさんいて、本当は全部追うべきなのかもしれないんですけど、今回は、以前に紹介したかなりロックンロールっぽいシェイムなどを外して、今年、揃いも揃ってアルバムを発表した、シーンの中でもきわめてポストロック/ポストパンク色の強い、かなり濃厚に”四天王”の雰囲気を醸し出している4つのバンドについて話したいと思います。

UKロックが去年の夏くらいからずっと調子がいいことは、このブログを以前からお読みの方ならご存知のことかと思われます。ただ、これがなかなか信じてもらえなくてね。まだ反応的に半信半疑のところがあったりして。

 ただですね、さすがに今年は信じてもらえそうです。なぜなら

キーワードになるシーン、サウンドがかなり明確に出た年になったから!

それがサウス・ロンドンであり、ポスト・ロック/パンクのサウンドですね。こういう言い回しにしてるのはバンドによってポストロック色が濃く、別なのはポストパンク色が濃いから。まあ、要は「難しそうなことやってる」、一筋縄ではいかないタイプのバンドのことです。

 勘違いしてほしくないのは、こういう人たちが必ずしも今のUKロックの顔、というわけではないということです。もっと売れるアーティストならそれこそアイドルズとかフォンテーンズDCみたいなロックンロール・タイプのバンドもいるし、華のあるデクラン・マッケンナとか、目立ちたがり屋のスポーツチームとか、いろいろいます。ただ、それでも、ことインディのファンって、「シーンの有無」、決め手となるサウンドがあると活気がある実感が湧く方が非常に多いんですね。しかもそれがちょっと難しめで、堅苦しい言葉で評論したくなるような感じだったらカッコよく思えるというか。

 皮肉っぽく聞こえてしまったら申し訳ないですけど(笑)、僕も音楽的にそういうものは決して嫌いじゃないですから。ただ、それが行き過ぎると逃避したくなるだけで、基本は今回紹介するバンド、全部好きですよ。それに今回は

一見難しいものを、大衆レベルのアプローチにまで持っていけてるバンドばかり

そこも僕は評価してます。ただマニアックなだけでない。効果的なフックやメロディがあってなにかしらキャッチーな部分がある。そうしないとチャート入ったりしないし、狭いサブ・ジャンル内でのブームにしかならないんですけど、今回の4組は全英チャートでいずれも高い位置を記録した、これまでだったらヒットがあまり考えられないようなマニアックな音楽で奇跡的なことを起こしてるからこそ、注目に値するものだと思ってます。

では、まずはこの人たちから。

画像2

はい。ブラック・カントリー・ニュー・ロード、BCNRという呼び方されてますけどね。この人たちはデビュー・アルバム「For The First Time」がいきなり4位を記録したんですけど、この人たち、僕はまず何が好きかというと

顔!

これ、冗談じゃなく真面目な話、そうです。だって、サウンドが

こういう風に暗くて不協和音使ってるタイプの音楽なのに、「どこの大学の音楽サークル?」ってくらい見た目がさわやかじゃないですか。しかも、可愛い女の子が多めで。この、アイドル性というか、それが言い過ぎだとしても、デビュー当時のスーパーカーに同世代のサブカル少年少女が憧れたような親近感。それがこのバンドにはすごくあると思ってます。その意味ですごく期待したいんですよね。

続いては

画像3

このドライ・クリーニングというバンド。この人たちも4月にデビュー・アルバム「New Long Leg」がいきなり全英4位を記録しました。

この人たちはもう、真正面なポストパンクの趣のサウンドです。もう、かなり「これぞ」なポストパンクではあるんですけど、同じ聞き馴染みのある音楽でも腕の立つミュージシャンが弾くとやっぱりキレが全然違うなということをすごく強く感じさせるバンドですね。特に僕はギターのトム・ダウズのエッジの効いたギタープレイが好きですね。ベースの人のピーター・フック直系のベースラインもかっこいいですけど。あと、それぞれの楽器の空間位置を保ったかのような音の分離の感じも好きですね。テレヴィジョンみたいで。

それからやはりフロントウーマンのフローレンス・ショウの、低い声でつぶやくポエトリー・リーディングもすごくセクシーです。

唯一の難と言えば、アルバムの8曲目くらいに差し掛かったときに、「もうすこしバリエーションあれば100点なんだけどな」と思う瞬間がくることですけど、それ以外はいうことないです。

続いては

画像4

スキッドです。彼らは5人組の、ちょっとマス・ロック的なバンドなんですけど

彼らの場合、マス・ロック的な「手法」は使いますけど、それ以前にもっとパンクというかロックンロールというか、そういう熱さを感じさせて、僕はそこが好きです。フォールズとアット・ザ・ドライヴ・インを足して二で割った感じみたいというかですね。より、前に前に訴えかけてくる分、今回の4つのバンドの中では僕には一番合うかもしれません。

そうじゃなくても、僕はシェイムとかアイドルズみたいなロックンロールなバンドがそもそもはすごく好きなので、この中でやっぱりそれに比較的近いタイプを好むところがあるのは否めないかな。この人たちもデビュー・アルバム「Bright Green Field」が初登場で全英4位でした。

そしてラストが

画像5

Black Midiです。彼らだけアルバム・デビューが2019年だったんですけど、サウス・ロンドンのシーンの先陣を切った感覚はありましたね。

そんな彼らは5月にセカンド・アルバム「Cavalcade」を出したばかりですが

この曲は一部でZAZEN BOYSとも呼ばれていますが(笑)、まさにそんな感じですよね。

そうかと思えば

これらの曲を聴くとよりアヴァンギャルドというか、キング・クリムゾンやフリー・ジャズのイメージを感じさせます。特にベーシスト、激ウマですよね。

そうかと思えば、あいまに「聖歌?」みたいな歌ものが入ってね。ヴォーカリストのちょっとエキセントリックな唄い方がそうしたイメージ強めてるところがありますが。

 パーツのひとつひとつをとれば他のバンドの方が好きではあるんですけど、かなりの多様性ゆえ、アルバム通してだと彼らのアルバムが個人的には一番楽しめます。いい意味で一番、変なバンドです。何をやってくるかわからない尽きないポテンシャルを感じさせる意味で。

 これが今、チャートの結果待ちです。なぜかここのアーティストのきなみ4位なので彼らも・・と思っていたら中間発表で8位。ということは、運が良ければトップ10だけど、どうかな。10位台の後半くらいかなと思ってますけど、それでも十分なアピールだと思います。

いずれにせよ、ひとつのシーンに似た傾向で語られながらも、各々が強い独自性とマニアックな音楽性を発揮して切磋琢磨する姿、これは非常に美しいものがあるし、シーンを活性化させる原動力には間違いなくなっていると思います。

こうしたことがあるから、チャート上でのサクセスも付いてきたんだと思いますしね。

あとロックって、ここ数10年、「シンプルなフォームこそ美しい」と尊ばれてきたところ、ありましたよね。でも、そうしてしまうことでガレージ・ロックにせよ、四つ打ち的なリズムのポップに踊れるポストパンクとか、定型化してしまっていたところがあったと思います。ロウファイ・ギターバンドとかでもそうですよね。

 そうした「よかれ」と思われていたロール・モデルがいきすぎてロック自身の成長が止まってしまうのであれば、ここで紹介したバンドがやってるみたいなプログレみたいな手法をいまいちど使うのは僕はアリだと思います。そういう意味でもこのムーヴメント、面白いと思います。

 いきおい”オタク白人男性”のイメージもこの手のサウンド、ちょっとありがちではあったんですけど、今の時代らしく、女性、さらにBlack Midiだと黒人メンバーもいます。そこのところでも、前より開けた感じがあって良いと思います。

 昨日のオリヴィアやビリーみたいな感じと比べると商業規模こそ大きなものではありませんが、長期間にわたって熱心なリスペクトを集めやすいのもこうしたマニアックなムーヴメントの持つ強みでもあります。こういうものが現れてきた。これも今のロックの盛り返しを裏付けるまぎれもない現象だと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?