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沢田太陽の2019年年間ベスト・アルバム30位〜21位

どうも。

では、沢田太陽の2019年の年間ベスト・アルバム、続いていきましょう。今回は30位から21位ですが、こんな感じです。

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はい。こんな感じですけど、早速30位から行きましょう。

30.Atras/Alem/O Terno

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30位はオ・テルノ。年間ベストをこのブログで発表するようになって3年になりますけど、ブラジルのバンドを入れるのは今回初めてですね。僕の住んでるサンパウロのバンドで3人組。チム・ベルナルデスという、メガネかけたまだ20代のナード青年のバンドですけど、今回のこのアルバムで4枚目ですね。彼らは元々はブラジル版のロックンロール・リバイバルみたいな感じで2010sの初頭にデビューしてたんですけど60s趣味が段々ソウル・ミュージック、さらに「ペットサウンズ」の頃のビーチボーイズをはじめとした、細部に偏執狂的にマニアックに凝り性になったサイケデリック・ポップの方向に走るようになって。今作の2年前にチムがソロ・アルバムを出して、それがストリングス、ホーン、ティンパニーやグロッケンシュピールといったオーケストラ打楽器に至るまで、全部一人で編曲した作品を作り上げてそれで大絶賛されたんですね。今回はテルノに戻っての作品だったんですけど、そのソロでの路線を継承するものになったんですけど、さすがにバンドなんで、リズムのダイナミズムはやはりこちらのほうが上ですね。そして本作は、元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎さんが参加ですよ!これで日本の音楽ファンがどれだけテルノに接しやすくなったことか!ツイッターのTL上で色んな人の年間ベスト見てますけど、このアルバムを上げる人が案外多くて僕も本当にびっくりしてます。うれしいなあ。日本公演が可能なくらいまでに盛り上げたいところですね。

29.thank u, next/Ariana Grande

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29位はアリアナ・グランデ。アリは去年も「Sweetner」でランクインしてます。そのときは25位でした。去年の彼女がすごかったのは、ちょうど年間ベストで前作を紹介してるようなタイミングで、このアルバムのタイトル曲が早速世界中のチャートで1位になっていたことですね。さらに次の「7 Rings」も追い打ちをかける大ヒットになって、プラス、1月にこのアルバムでしょ。もう、夏のフェスでヘッドライナーで回るのも知ってたので「攻めてるなあ」と思って、「おそらく、これが彼女のキャリアの最高傑作として語られるんだろうな」と思ってました。結果は・・・、必ずしもそうではなかったですね(笑)。このアルバム、前作同様、非シングル曲も含め、捨て曲がなく、全体聞いてもすごく安定感はあるんです。ただ、前作が、そうした曲と「No Tears Left To Cry」や「Breathin」みたいなシングル曲が違和感なく溶け合って、それがシングル曲だけ突出して盛り上がる、アイドルのアルバムに勢いありがちな提携パターンを絶妙に避けたトータル勝負のアルバムにしてるんですよね。ところが今作は、中盤までの流れにヒット狙いの媚がない好チューン揃いだったのに、後半に「7 Rings」が入る辺りから、前作になかったトラップを始めとした俗っぽさが目立ってきて、せっかく築き上げてきたムードがサーッと引いちゃうんですよね。僕が本作を最初は飛びついたのに、効かなくなるのも早かったのは。そうした部分が引っかかったからだと思います。そうした経緯もあり、去年より順位はややダウンです。

28.Eve/Rapsody

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28位はラプソディ。ヴァージニア出身の、今年36歳のベテラン女性ラッパーのラプソディは、僕も先日、2010年代のナンバーワン・アルバムに選んだケンドリック・ラマーの名作「To Pimp A Butterfly」にも参加したしたことでも知られる実力派女性ラッパーです。テクニカルなスキル、立派ですよ。スピード、ライミングのキレ、共に。本作はそんな彼女の3枚目のアルバムなんですが、ここで彼女は「尊敬できる黒人女性」の名前ばかりを曲名にして、その人たちから感じるインスピレーションを曲にして集めたコンセプト・アルバムにしています。それは「ミシェル(・オバマ)」「オプラ(・ウィンフリー」といった、今日最大の黒人女性のロールモデルから「ニーナ(・シモン)」「マヤ(・アンジェロウ)」といった歴史的アイコン、さらには「アリーヤ」や「タイラ(・バンクス)」「イマン」といったポップ・アイコンまで、様々なリスペクトできるポイントをレペゼンする女性讃歌集を作り上げています。まだまだ女性ラッパーの地位が低い中で作った意欲作ですけど、僕のハートを一番掴んだのが「アフェニ」。これがトゥパックのお母さんの名前なんですが、今でもなお希少なフェミニスト・ラッパーであるトゥパックを育てたことへの感謝を二重の意味で込めていることは特筆すべき点で、こうしたところにもトゥパックの功績が伺えるのは興味深いです。

27.On The Line/Jenny Lewis

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27位はジェニー・ルイス。インディの女性アーティストの台頭があまりに顕著なこの2年ほどですけど、「すごいなあ」と思うのは、そんな中で、いきおい「過去の存在」としてはじき出されかねない、以前からシーンに君臨するジェニー・ルイスのような人が、5年ぶりのアルバムを出しても一切色褪せることなく、逆に若い俊英たちに対して貫禄を示すことができていることですね。僕も例外ではないというか、やっぱりメディアがニューカマーを紹介するとまずはそっちが気になりがちでジェニーもリリース当時、必ずしも最優先で扱ってはいなかったんですけど、やっぱり聞いた曲は耳にずっと残ってて、「やっぱりギリギリ50位くらいで入れようかな」と思ったら、思いのほか内容が良く、評価見直しでここまで順位を上げました。そうなった秘訣は、やはり彼女による名人級のソングライティングですね。彼女は2000sに自身のバンド、ライロ・カイリーを率いていて、その頃からインディ・ギター・ロックに、どこか胸がキュンとするようなフォーク、カントリー系の郷愁や滋味を感じさせるエッセンスを加えるのがうまい人でしたけど、今回はそれが本当に強く生きている。その理由は、彼女自身のほかに、かのライアン・アダムスが共作者として関わっていることです。彼もジェニーと同じ時代にオルタナ・カントリーの代表選手としてインディをわかせましたけど、残念ながら、本作の出る直前に複数のセクハラ疑惑が判明する事態に。ジェニー、一度は本作のお蔵入りも考えたそうですが、思いとどまってのリリースとなりました。ライアンの件は本当に悲しいですが、ジェニーの判断は正しかったと思います。作品に罪はないですからね。

26.Everuthing Not Saved Will Be Lost 2/Foals

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25.Everuthing Not Saved Will Be Lost 1/Foals

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26位と25位はまとめて行きましょう。毎年、順位の折り返し地点となるここの順位はユーモア利かせるんですけど、今年はフォールズの2作「Everything Not saved Will Be Lost」2部作で。今年のUKロック界でフォールズはこの2作で立派に存在を示していたと思います。それは25位にランクした1で全英2位、26位の2で初の全英1位を記録したチャート実績でもそれは明らかだし、リリースされたときの批評もすごく良かったわけですからね。今回のフォールズは、サード・アルバムのときからの「脱マスロック」の路線を押し進め、彼らの楽曲路線のひとつの完成形を築き上げた感じでしたよね。よりグルーヴィーな1.よりどっしりとしたスケール感の2。イギリスのロックにおける彼らの地位はこれで完全に確立されたと思います。それにもかかわらず、今年の年間ベストで、この2枚、不思議なくらいに見かけないんですよね。僕、それは絶対おかしいと思っていて。少なくともイギリスの批評メディアはもっと推すべきでは?なんか年間ベストにも、ある種の「トレンド」みたいのが出来ていて、女性アーティストと、そんなに強くなかったにもかかわらずヒップホップをあまり候補がない中、かき集めて上位に置こうとしてロックを上位に置こうとしませんよね。こういうのを「やりすぎ」っていうんです。僕も、そうした傾向に自然と沿ったベストにはしていますけど、なんでもかんでも入れりゃいいってものでもなくて、ある程度、厳選して絞ってるつもりなんですけど、そういうことやらずにトレンドに乗って偏ったものばかりを並べるっていうのはどうなんでしょうね。せっかく2枚もアルバム作れる創作エネルギーもあったというのに。見逃しちゃいかんと思います。

24.Fine Line/Harry Styles

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24位はハリー・スタイルズ。これ、12/13にリリースされたばかりですけど、これ、本当にいいアルバムなんですよ!このアルバムが出せたことによって、彼の今後のアーティスト活動が保証されたような、そんな充実感のあるアルバムです。1Dって、そのコッテコテのアイドル感ゆえに音楽的に軽視される傾向にありますけど、ハリーはその中でかねてからロック志向が強く、一昨年に出たファースト・ソロはそれが空回りしすぎて、70s初頭のシンガーソングライター寄りのクラシック・ロックのアルバム作って、ちょっと彼の身の丈に合わないし、これをいきなり聞かされる彼のコア・ファンもつらいだろうなとは思ったんですが、今作はその反省をいかし、1Dでアイドルやってたときのアイドルとしての軽妙さを活かしつつ、その上でロックにトライした、非常に考えられたアルバムになっています。その意図は「Adore You」など、シングル曲になった前半の曲に早速現れていて、「ダンス・ミュージックの太いベースラインを活かしたロック」という、最近のバンドがやってない試みをやってて、その時点でも十分技ありなんですけど、これ、後半まで聞き進めていけば行くほど面白いんですよ。特に「She」って曲に関しては、「ハリーなりのブルーズ」というか、ディストーションのかかった長いギター・ソロがきける大作という、およそアイドル・ポップの範疇からかけ離れた曲だったりして。その前後も、アコースティック・ナンバーの中にひねりを利かせるものもあって。あと、アイドル的な側面で彼を追ってる人にとっても、失恋ベースのアルバムなので、いろいろと内面詮索させるものもあったりと、聞き所の多い作品です。騙されたと思って一度聴くことをおすすめします。

23.All My Heroes Are Gone/JPEGMAFIA

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23位はJPEGMAFIA。僕は昔からですね、「エクスペリメンタルなものを、僕の口から期待するな」という主義者です。もともとチャートマニアの出身なので楽曲至上主義的なんです。なので、たとえばノイ!聴いたときも「これをポップに応用できるジョイ・ディヴィジョン聴いたほうが何倍も良い」と思ったし、オウテカ聴いたときとかも「それだったらレディオヘッド」って反射的にそう感じたくらいなので。そういうタイプなので、基本エクスペリメンタルなものは触れずに行くタイプなんですが、JPEGMAFIAのこのアルバムは、このアルバム自体が作品としてすごく完成された感じがあって聴きやすいので好きです。そういうタイプのもので稀に気にいるのがあるんですけど、これがまさにそうです。これ、1曲1曲のエディットのぶつ切り感がいびつでエッジがあってカッコいいし、その間から漏れてくる70sのソウル・テイストが、「これ元にして、トラディショナルなソングライティング方法で楽曲作っても十分行けるんじゃない?」と思えるほど、すごくメロディックだし、そこをあえてそうせずに、このまま完成させたほうが個性的で面白いものができるよという意図みたいなものも感じさせるしね。去年、ソフィーのアルバムを聴いたときもサウンドスタイルこそぜんぜん違うものも似たような感触感じて好きだったんですけど、今年はそれで言うならコレでしたね。

22.Desginer/Aldous Harding

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22位はアルダス・ハーディング。女性アーティスト、今年は割と絞って入れてるとさっき言いましたけど、この人の存在はそういう状態でも欠かすわけには行きません。非常に優れたソングライターです。今までレーベルだけで彼女を見てたので気が付かなかったんですけど、この人、出身、ニュージーランドなんですね。Lordeといい、彼女といい、小さな島なのに才人、輩出してますね。このアルバムは彼女のサード・アルバムなんですが、どこかスペイシーな浮遊感のあるスペイシーでサイケデリックな感触がありつつ、同時にそういうアレンジがなくとも十分、アコースティックなヴァージョンだけでも通用しそうな芯の強さも感じさせて。聴いてて、初期のデヴィッド・ボウイ思い出させる曲の作り方するんですよね、この人。いろんな女性SSW、最近いますけど、一番渋いタイプの、骨太な楽曲作らせたら、この人、かなりトップから数えた方が早そうな、それくらいの実力を感じさせる人でもあります。年齢を気にするような音楽性でも全くないんですが、1990年生まれでまだギリギリ20代と、この音楽性にしてはすごく若いし。今後がすごく楽しみな人です。

21.Legacy ! Legacy !/Jamila Woods

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そして21位はジャミーラ・ウッズ。今のシカゴの、トラディショナルなソウルの伝統を受け継いだ上で、新しいもの作ろうとしているR&B、ヒップホップの一群の人たちの中でも抜群の才能誇る人ですね。ソランジュやフランク・オーシャン、SZAでR&Bが新しい時代に入ったわけですけど、時代を変えた優れた才能はもちろん認めつつも、まだ、こと「ライブ」というところでのアイデアがいまひとつ見えないところがあるんですけど、ジャミーラの場合、楽曲的には「Zora」みたいな名曲はありつつも、まだ彼らに追いついてこそない感じはあるんですけど、こと「ライブ」ということに関してはかなり想定は出来ていて、このアルバムもかなりパフォーマンス即対応の感じが聴いていてしっかり伝わるのが好感持てます。MVでも擬似ライブやってたくらいですからね。プリンスがもしまだ生きてたら、確実にペイズリー・パークにお呼びがかかってセッションしてただろう姿は容易に想像できます。あとは所属のジャグジャグウォーにもう少し頑張ってもらうか、移籍するかなりして、もう少しコマーシャル・アピールしてほしいですけどね。



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